ナラ枯れ程度で、この森は「壊滅」などしない(生田緑地) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

6月の講座「首都圏生きものめぐり」

下見で訪れた生田緑地の記録です。

例年同様、本命はミドリシジミでしたが

残念ながらこの日は見ることができず……。

ただ、他に色々と収穫がありましたので

久々のロング記事にてお送りします。

(写真は、ミズキで吸蜜するナミアゲハ

 

 

 

 

 

 

メタセコイア並木(左)や花菖蒲園(右)など

生田緑地ならではの美景観もチェック。

この辺りは先日開催した講座でも

しっかりと案内させていただきました。

 

 

 

 

 

アジサイもちょうど見頃に入っていました。

人の観賞用としてはもちろんのこと

蜜や花粉は昆虫たちの糧にもなりますので

環境面への貢献度が高い点も見逃せません。

 

 

 

 

 

カシワバアジサイに潜り込むコアオハナムグリ

あまりに食事に熱中し過ぎてしまったためか

身体中が花粉まみれになっています(汗)

 

 

 

 

 

枡形山(ますがたやま)の展望台より。

天気が良ければスカイツリーも見えます。

 

 

 

 

 

その展望台で見つけた、

やや大型の黒いコガネムシ。

光沢がなく、カブトムシの類とは違います。↓

 

 

 

 

 

床においてクローズアップ。

オオクロコガネといい、名前通りの外見と

光沢のない翅の質感が特徴です。

 

遭遇率・・・2(結構珍しい模様)

インパクト・・・3 (手に乗せるとわかるが大きい)

美しさ・・・2 (見ての通りの地味な色)

俊敏性・・・3 (活発に歩き回っていました)

知名度・・・1 (昆虫エクスプローラには掲載されています)

 

雑木林の住人であり、自然度の高い生田緑地なら

まあどこにいても不思議はない甲虫です。

「クロコガネ」という近似種が存在しますが

翅に光沢がないことで識別できるそうです。

 

 

 

 

 

 

そんな多くの昆虫の棲み処となる雑木林ですが

実は現在、ナラ枯れが大分進んでいるらしく

園路沿いでも倒木の恐れがあることから

生田緑地では一部通行止めの措置が取られていました。

 

ナラ枯れは主にコナラやクヌギなどの

立ち枯れ(左)を引き起こす樹木の感染症ですが

これの影響によってミドリシジミの出やすい

ハンノキ林でも一部立ち入りが制限されてしまいました。

 

一応、立入禁止は来年3月末までとのこと。

仕方のない措置であることは間違いないので

あとは復旧することを願うばかりです。

 

 

 

 

 

ゼフィルスについては、

上記の通りミドリシジミは見かけなかったものの

アカシジミについては何度かエンカウントしました。

葉の裏で休んでいる個体もいましたので

近距離で撮影させていただきました。

 

 

 

 

 

おっと、これはウラゴマダラシジミです。

2020年の初撮影時以来の再会ですね。

本種はイボタノキを植樹としており

やや地味ながらもゼフィルスの仲間となっています。

 

 

 

 

 

手摺にぶら下がるナナフシモドキ

ほとんど擬態になっていないのはご愛敬。

 

 

 

 

 

クロナガタマムシ。こちらは4月以来です。

(もし違う種でしたらそっと教えてください)

イマイチ地味な感は拭えませんが

こうして正面からのアングルで撮ると

ちゃんとタマムシの頭をしていることがわかります。

 

 

 

 

 

日に日に大きくなってくる

カマキリの幼虫

 

 

 

 

 

オオスズメバチも樹液場で

見かけるようになってきました。

 

まだ、この時期は殺気立っていないので

エンカウントしたとしてもさして慌てる必要はなく

落ち着いてその場を離れれば問題ありません。

ある程度距離があるなら、こういう撮影も可能です。

 

 

 

 

 

初めて撮影した、ヤツメカミキリの交尾シーン。

上に乗っている方がオスなのはわかりますが

背中(翅)に結構な傷を負っています。

メスを巡って他のオスと争ったのか

それとも外敵に襲われたのか……

いずれにせよ、繁殖機会を得られてよかったです。

 

 

 

 

 

需要があるかどうかは微妙ですが

横からのアングルも1枚どうぞ。

 

せっかく地面に這いつくばって撮ったので

ぜひご覧いただきたい1枚です。

 

 

 

 

 

こちらの湿地帯はコナラやクヌギが少ないためか

問題なく通行することができます。

 

 

 

 

 

ホソミイトトンボ(だよね?)に遭遇しました。

同じ場所で何匹か見かけましたので

ここで繁殖しているものと思われます。

 

この日見たウラゴマダラシジミクロナガタマムシ

そしてホソミイトトンボは、いずれも毎年恒例の

キバネツノトンボ撮影ゾーンで新顔登録した生きものです。

「それが?」と言われても仕方ないのですが

埼玉県東部指折りの自然度の高い公園であるあちらに

生田緑地が比肩している……という見方もできます。

 

 

 

 

 

最後に、本ブログでは歴代最高画質で

撮影できたヒバカリです。

最近、行く先々で出合うヘビが

アオダイショウばかりだったのでちと新鮮。

ヤマカガシが大量出現したこともありますが)

場所は、立入禁止エリアのすぐ近くです。

 

近年、急激に拡大したナラ枯れによって

関東各地の自然公園は対策に追われていますが

元々自然現象だということもあり

人以外の生きものたちへの影響は

少なくとも見た限りでは然程感じません。

今回の生田緑地も、ミドリシジミに会えなかった以外は

十分過ぎるほどに成果があり、生きものの数・種類も

例年同様に豊富だったように感じます。

 

むしろ、立ち枯れによって日が当たりやすくなり

雑木林の環境が改善される効果も期待できるので

立入禁止などで不便さは感じるものの

悲観的にはならず、様子を見守りたいところです。

 

そして、安全のために必死に対策を講じてくださっている

公園管理者の皆様に、改めて心から感謝申し上げます。

 

 

 

 

 

【6/4 生田緑地で撮影した生きもの】

鳥類・・・カルガモ、ハクセキレイ、ヒヨドリ、ムクドリ、ヤマガラ

昆虫類・・・アカサシガメ、アカシジミ、イオウイロハシリグモ、ウラゴマダラシジミ、ウリハムシ、エグリグンバイ、エサキモンキツノカメムシ、オオクロコガネ、オオシオカラトンボ、オオスズメバチ、オオヒラタシデムシ、オバホタル、カマキリの幼虫、キマダラセセリ、クマバチ、クロウリハムシ、クロナガタマムシ、クロハナムグリ、コアオハナムグリ、ササグモ、サトキマダラヒカゲ、シオカラトンボ、シマアメンボ、ジョウカイボン、シロホシテントウ、スジグロシロチョウ、ツチイナゴ、ツマグロオオヨコバイ、トホシテントウ、ナナフシモドキ、ナミアゲハ、ハナグモ、ヒカゲチョウ、ヒメギス、ヒメトラハナムグリ、ベニシジミ、ホソハリカメムシ、ホソミイトトンボ、マメコガネ、ムシヒキアブ、モンキチョウ、モンシロチョウ、ヤツメカミキリ、ヤマサナエ、ヤマトシジミ、ヤマトシリアゲ、ヨツスジハナカミキリ、ルリシジミ、ルリタテハ

その他・・・ニホンカナヘビ、ヒバカリ、ミスジマイマイ、ミミズ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2023年7月15日(土)および16日(日)に開催いたします。

 行先は「光が丘公園周辺(東京都練馬区)」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。