日が差すまで「がまん」する者たち(埼玉県内某所) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

毎年恒例キバネツノトンボ撮影に向かったこの日。

例年よりも気温が早く上がっていたので

1週間ほど前倒しに発生ポイントへ足を運んだのですが

予想に反してこの日は朝から曇天低温強風という

昆虫撮影には最も適さないコンディションでした。

一応、午後からは晴れてくるという予報だったので

期待半分、不安半分で出かけましたが、果たしてどうなるか?

 

 

 

 

 

 

気温が低い中でも、鳥は朝から動いています。

この時点ではまだツグミ(左)やアオジ(右)など

冬鳥が確認できました。また、道中の荒川の中州では

コガモの集団がまだ残っていました。

 

サクラやバラの開花期なんかと違い

冬鳥の旅立ちは例年ほど早まっていないようです。

 

 

 

 

 

この寒空では、まだキバネツノトンボ

出ていないかも?と思っていたのですが

出現ポイントに到着すると見たことない光景が。

すでに羽化した個体が、大勢で枝に掴まり

ジッと風に耐えていました。

 

上の写真、3匹いるのがわかりますでしょうか?

 

 

 

 

 

枝に掴まるキバネツノトンボ

翅の付け根に白い部分があることから

まだ羽化してそれほど時間が経っていないようです。

 

これはあくまで私の想像ですが

4月、例年より早く気温が上がったことで

羽化の時期自体は前倒しになったものの

直後に急に気温が下がったので、

一旦動きを止めてやり過ごしているようでした。

 

幸いというべきか、最近の気候は乱高下するので

荒天が何日も続くということはまずありません。

天気予報に傘マークがついていようが

1日の中で陽光が差し気温が上がるタイミングが

高確率で訪れるので、それを待っているものと思われます。

(これはキバネryに限らず他の昆虫も共通でしょう)

 

 

 

 

 

動きの鈍い内に、翅に触れないようにして

そっと手に乗せてみました。

やはりこのフォルムは美しく、芸術的。

先日ご報告した石砂山のギフチョウと並んで

毎年会いに行くことをルール付けている昆虫です。

 

 

 

 

 

一通り観察・撮影したら元の枝に戻してやります。

この間、翅を掴むことはもちろん

身体を摘まんだりもしていません。

顔の前に手を差し出し、後ろから軽く突いてやると

自分から手のひらに乗っかってきてくれました(マジ)

 

無論これは、寒さで身体が動かしにくいとか

羽化して時間が経っていないことなどが

要員として挙げられるでしょう。

晴天下で成熟した個体に同じことをやっても

まず飛んで逃げられます。<(_ _)>

 

 

 

 

 

 

ご存知、アシナガオトシブミ

ゆりかごづくりの最中の個体もいました。

 

 

 

 

 

11時過ぎたあたりで、ようやく雲が捌け始めて

日が差してきました。体感的にも一気に気温が上がり

それに伴って一気に昆虫の動きが活発化。

さあ、ここからが本番です。

(写真は、晴れた草原を歩き回るヒバリ

 

 

 

 

 

新顔の昆虫も現れました。

一見するとホタルのような配色の

全長2cmにも満たない小さな甲虫。

実はこう見えてクロナガタマムシという

れっきとしたタマムシの仲間だったりします。

 

遭遇率・・・2(クヌギやコナラなどメジャーな木を食べる)

インパクト・・・2 (本家のタマムシと比べると……)

美しさ・・・3 (本家のタマムシとry)

俊敏性・・・4 (身体が小さい分飛ぶのはやや速いかも)

知名度・・・2 (手持ちの図鑑には掲載されています)

 

 

頭や複眼の形は確かにタマムシのそれで

写真に撮ってじっくり観察するとわかります。

植樹も比較的どこにでもある広葉樹なので

しっかりと探せばそれなりに見つかるかも?

 

本家のヤマトタマムシ

どちらが会いやすいかは微妙なところです。

会って嬉しいのはやはり圧倒的に本家でしょうが

 

 

 

 

 

ヨツボシトンボも例年通り撮影。

今年もいつものところに出現しました。

 

 

 

 

 

これはビロウドサシガメという新顔。

黒い胸部に光沢をもつサシガメです。

 

遭遇率・・・2(希少種ではない)

インパクト・・・2 (それなりに大きく目立ちやすい)

美しさ・・・2 (まあ、サシガメだし……)

俊敏性・・・3 (歩き回るのはそこそこ速い)

知名度・・・2 (こちらも図鑑に載っています)

 

サシガメの仲間は結構種類が多く

アカサシガメなどの一目で識別できる種以外は

微々たる差しかない種も多いため

図鑑やネットでの確認は不可欠です。

 

 

 

 

 

昼食は、昨年まで通っていた洋食屋が

残念ながら今年の冬で閉店してしまいましたため

すぐ近くにある刀削麺のお店でとりました。

 

角切り牛肉の入ったこの刀削麺

かなり美味ですし、食べ出もあって大満足でした。

 

 

 

 

 

 

腹ごしらえを済ませて、午後の撮影へ。

やはり狙い通り、多くの昆虫が一斉に動き出しました。

アオスジアゲハ(左)やナガメ(右)などの

メジャー所の昆虫たちはもちろんのこと……↓

 

 

 

 

 

ミヤマチャバネセセリも確認できました。

非常に地味な保護色なので、一度飛んでくれないと

見つけるのは相当難しい昆虫です。

(キバネryは翅が目立つため、見つけるのは非常に簡単な部類)

 

 

 

 

 

ツマキチョウのメスにも遭遇。

やはり今年はエンカウント率が高いようです。

 

 

 

 

 

カラスノエンドウについたアブラムシ

捕食しに来たナナホシテントウ……という

1つの植物で食物連鎖が成り立つ事例です。

 

なお、アブラムシが徒党を組んで

テントウムシに抵抗するということは

残念ながら(?)できない模様。

そういうのはアリ任せみたいです。

 

 

 

 

 

そして青空の下、キバネツノトンボも動き出しました。

すでにご開帳シーンの撮影などは済ませていたものの

やはり力強く飛び回るシーンを見ないと

何となく安心(?)できなかったので

これでようやく満足できました。

 

 

 

 

 

帰る前に、改めて1匹指に乗せてみました。

この個体もまだ羽化して時間が経っていないので

翅に触らないよう注意を払いました。

 

新顔2種追加に多数のキバネツノトンボと

十分過ぎるほどに観察・撮影を満喫しましたので

来年にまた期待しつつ、当該スポットを後にしました。

 

 

 

 

 

なお、最寄り駅ではこれまた例年同様

チョウゲンボウに遭遇しました。

同じ個体なんでしょうかね?

ここ数年、江の島のハヤブサと同レベルの常連さんです。

 

 

 

 

 

【4/22 埼玉県内某所で撮影した生きもの】

鳥類・・・アオジ、オオバン、カワウ、カワラヒワ、コガモ、コサギ、ダイサギ、チョウゲンボウ、ツグミ、ツバメ、トビ、ハクセキレイ、ヒバリ、ホオジロ、ムクドリ

昆虫類・・・アオスジアゲハ、アシナガオトシブミ、ウロコアシナガグモ、キタキチョウ、キタテハ、キバネツノトンボ、キリギリスの幼虫、クロナガタマムシ、クロボシツツハムシ、コアシナガバチ、コチャバネセセリ、コミスジ、シオカラトンボ、ジャコウアゲハ、スジコガネ、セイヨウミツバチ、ツマキチョウ、ナガメ、ナナホシテントウ、ニッポンヒゲナガハナバチ、ハグロケバエ、バラルリツツハムシ、ヒメウラナミジャノメ、ヒメマルカツオブシムシ、ビロウドサシガメ、ベニシジミ、ホソオビヒゲナガ、ホソメヒラタアブ、ミヤマチャバネセセリ、モンキチョウ、モンシロチョウ、ヤマトシジミ、ヤマトシリアゲ、ヨツボシトンボ

 

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2023年5月21日(日)に開催いたします。

 行先は「横浜みなとみらい(神奈川県横浜市)」でございます。

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 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。