大火災後のヨシ原で鳥を探す(渡良瀬遊水地) | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

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雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

雑誌が入稿間際ということもあって

1ヶ月も遅れての報告になってしまいましたが

昨年末に続き、今冬2回目の渡良瀬遊水地訪問です。

ご存知の方も多いかと思われますが、

今年の1月末に遊水地内で大火災が発生し

約120haのヨシ原が焼けるという事件がありました。

新聞社によっては300haとも言われていますが

まあ、その辺はちょっとよくわかりません。

(参考までに、新宿御苑の面積が約58.3haです)

 

火災の原因はまだわかっていないようですが

様子が気になったため、2月上旬に足を運んで

現地の様子を確認してまいりました。

 

今回は古河駅側から向かいましたが

谷中湖の南側までは火が来なかったらしく

上の写真を見る限りでは特に影響は見られません。

焼けたのは湖の北側と聞いております。

 

 

 

 

 

谷中湖そのものにも特に影響は見られず

カモの仲間をあちこちで見かけました。

 

 

 

 

 

 

ツグミがあちこちを歩き回るようになっていたほか

カケス(左)やジョウビタキ(右)なども出現。

残念ながら人気のベニマシコなどは

この日は出てきてくれませんでしたが

定点観察もせず適当に歩き回った割には

そこそこ小鳥にも会えたように感じます。

 

 

 

 

 

ミサゴも何度か上空を舞いました。

割と低い位置を飛んでくれた上に

見ての通り快晴だったので

何気に、歴代トップ級の良い写りになったかも?

 

そんなこんなで谷中湖の南半分周辺を歩いている分には

何も影響を受けているように見えませんでしたが

やはり焼けた面積があれだけ広いとあっては

まったくの「無傷」というわけにはいかず……。↓

 

 

 

 

 

谷中湖の北側です。前回の訪問時には

一面ヨシ原で見通しが利かないエリアでしたが

見ての通り広範囲が焼失してしまっていました。

所々からまだ焦げ臭さのようなものが立ち上っており

火災のすさまじさを物語っておりました。

 

無論、春になる前に毎年火入れをするので

どうせ遅かれ早かれこうなる運命ではありましたが

このような不慮の火災で焼けることなど

誰も想定しておらず、火入れまでヨシ原で過ごす

チュウヒなどの鳥にとってはたまったものではありません。

もしかしたら、焼け死んでしまった個体も

多少はいたかもしれません。

 

 

 

 

 

しかしながら、焼けたヨシ原をチェックしてみると

結構な数のタヒバリツグミなどが歩き回っており

何やら啄んでいるのも見かけました。

水の中には、平時(?)のヨシ原と同じく

火災後でも小さな虫などが多数いるのでしょう。

 

例年の火入れの後にも見られる光景が

火災によって「前倒し」になったのかもしれません。


 

 

 

 

焼けて折れたヨシに掴まるハクセキレイ

オオジュリンやシジュウカラと違って

横向きに茎に掴まるのは苦手なので

彼らにとってはちょっとした「助け」に

なっている気がしないでもない……。

 

 

 

 

 

遊歩道の上にも、焦げた跡が残っていました。

この上を「火」が通過したことが一目でわかります。

 

 

 

 

 

 

展望台から。上記のハクセキレイのいたエリアは

ほんの序の口であり、より北側の方に目を向けてみれば

まさに「一面焼け野原」という有り様でした。

 

よりにもよって、例年最もバードウォッチャーが

スタンバイする「チュウヒのねぐら入りスポット」周辺が

ピンポイントかつ広範囲に焼けてしまっており

さすがにこれを見た時は唖然としました。

前回の訪問時にハイイロチュウヒを撮影した場所も

一面真っ黒で見る影もありません。

 

 

 

 

 

しかし、これは奇跡的にというべきか

消防隊の皆さんが是が非でもと死守してくれたためか

なんとコウノトリの巣台のちょっと手前で

焼け跡は止まっていました。

 

そして、この日は初めて巣台を使う

コウノトリの姿を確認・撮影することができました。

繁殖活動中だったので近づくことはできず

超遠方からの撮影になってしまいましたが

それでも大きな収穫です。

 

 

 

 

 

空を舞うコウノトリ

この日は複数が同時に飛ぶ姿も見かけました。

 

 

 

 

 

巣台にて。後から聞いた話ですと

例年同様に今年も繁殖に成功したとか。

あれだけの大火災に見舞われてもなお

ちゃんと「使われた」というのは

渡良瀬遊水地にとっても一つの大きな収穫かも。

 

ちなみにコウノトリは他のサギやツルと違い

鳴き声を上げることはありません。

頭を大きく反らしてカタカタカタカタ

奇怪な音(?)を出します。

この音は結構よく響き、離れた場所にいても聞こえます。

 

 

 

 

 

コウノトリのいる風景

 

人の手により野生復帰を目指している鳥なので

コミミズクやハイイロチュウヒなどと比べると

ぶっちゃけ、バードウォッチャーからの人気は

あまり高くなかったりするコウノトリ。

ただ、自然度の高い場でなければ野生復帰もままならず

指標動物としての役割は担っているはずですので

コンスタントに確認できるようになったというのは

素直に喜ばしいことのように感じます。

 

 

 

 

 

一通りコウノトリを撮影した後は

焼けたヨシ原周辺をぐるりと一周。

写真のカラスは、わかりにくいですがミヤマガラスです。

ツグミやタヒバリと同じく、焼け跡で食事をしていました。

 

 

 

 

 

ミコアイサを探しているらしいバードウォッチャーの間を

一瞬、タヌキが横切っていきました(矢印参照)。

残念ながら(?)皆さん鳥目当てだったためか

ほとんど注目されることはありませんでした。

(人によっては気づいてすらいなかった模様)

 

 

 

 

 

一度だけですが、チュウヒも上空を通過しました。

何気に昨年末は撮影できなかったので、ここでは久しぶり。

 

今年は渡良瀬のチュウヒが少ないという話も聞きますが

何分広いので、全域を歩いていない以上ハッキリとは言えません。

ただ、ねぐら入り中に焼け死んだ個体がいないことを

今はとにかく願うばかりです。<(_ _)>

 

 

 

 

 

 

ヨシガモは、前回とは違う水場に

大多数が移動していました。

 

 

 

 

 

夕暮れ時の谷中湖。非常に距離がありましたが

かなりの数のミコアイサが飛来していました。

ここまでの集団で来ているのを見たのは

これが初めてかもしれません。

 

 

 

 

 

帰りも古河駅に向かいましたが

道中、こんな感じで見送りのノスリが。

 

 

 

 

 

そ~っと回り込んで、前から撮影。

ちなみにノスリもミサゴと同様、

この日何度か遭遇しております。

 

 

 

 

 

チョウゲンボウも出てきましたし……。

 

 

 

 

 

最後に、光が足りず遠方ではありましたが

飛んでいるコミミズクの姿も撮ることができました。

 

広範囲が焼ける大火災であったことは間違いないですが

予想に反し、猛禽類を始めとしてそれなりに多くの鳥を

観察・撮影できました。元々渡良瀬遊水地そのものが

数千haというとてつもなく広い自然地であり

焼けたのはあくまで一部のみではあるのですが

今回歩いたのは、まさに焼けた中心部分といえるエリア。

それでもこれだけの成果が得られたのですから

渡良瀬遊水地の偉大さを実感させられます。

 

でも何より、夜中の大火災という中で

鎮火のために尽力してくださった地元の消防隊の皆様に

この場を借りて、心より御礼申し上げます。<(_ _)>

 

 

 

 

 

【2/5 渡良瀬遊水地で撮影した生きもの】

鳥類・・・アカハラ、オオバン、オカヨシガモ、カケス、カシラダカ、カルガモ、カワウ、カワラヒワ、カンムリカイツブリ、キジバト、コウノトリ、コガモ、コミミズク、シメ、ジョウビタキ、シロハラ、セグロカモメ、ダイサギ、タヒバリ、チュウヒ、チョウゲンボウ、ツグミ、トビ、ノスリ、ヒドリガモ、ハクセキレイ、ホオジロ、マガモ、ミコアイサ、ミサゴ、ミヤマガラス、ムクドリ、メジロ、モズ、ヨシガモ

その他・・・ホンドタヌキ

 

 

 

 

★次回、生きもの探索ツアー「首都圏生きものめぐり」は

 2023年3月19日(日)に開催いたします。

 行先は「泉の森&ふれあいの森(神奈川県大和市)」でございます。

 現在お申込を受付中です。ご興味のある方はこちらよりお申込ください。

 (講座の概要につきましてはこちらをご参照ください)

 

 

【小学校6年生までのお子さんのご参加につきまして】

小学校6年生までの方は、初回500円でご参加いただけます。

ただし、御父兄の同行をお願いいたします。

 

 

【お終いに】

当方が現在主宰しております自然散策講座「首都圏生きものめぐり」ならびに更新中のブログ「首都圏生きものめぐり」は、当方の現在の勤務先(雇用形態は業務委託です)の発行物、店舗での営業内容、Instagram等でのSNSでの発信内容、および各種活動とは一切関係しておりません。また、当方の自然感や政治・文化的な主義主張もまた必ずしも勤務先のそれと一致するものではありません。

当方勤務先のあらゆる事業・活動内容につきまして、「首都圏生きものめぐり」主宰者としては一切お答えしかねますので、あらかじめご了承ください。また、特定の政治的・文化的な価値観の押しつけやそれに関連する各種活動への勧誘等は、従来どおり、本講座におきましては一切いたしませんことを、ここに明記させていただきます。

今後とも「首都圏生きものめぐり」を何卒よろしくお願いいたします。