銭湯再生請負人が銭湯から地域活性化 -2ページ目

ガス代VS銭湯経営モチベーションの戦い

映画「湯道」でもテーマになっておりましたが、

銭湯は昭和の遺物?

憩いの場?

休みなく働き続けても経営は厳しく・・・・子供に継がせたくない店主の遺言。

 

最低賃金が1,072円、タバコが580円、入浴料金が500円である。

 

いまだに薪で沸かす墨田区の松の湯は一見、経営が成り立っているが

15時のキックオフに向けて昼過ぎにはカマに火を入れる。

廃材を切断する作業は営業中も続き、23時半まで廃材をくべる。

廃材が集まらない時は、トラックで木場まで回収に走る。

これを最低賃金で算出すれば1日2万円弱の人件費がかかる。

賃金の発生しない私とカマジイがいなければ成り立っていない。

 

一方、ガスで沸かす鶴見の「いやさか湯」

漏水の影響で190万円まで跳ね上がったガス代が、落ちつくことに期待していたが

100万円は切らなかった・・・・。。

家賃、人件費等を含み経費は月500万円に近くまで上昇。

小さな故障個所の修繕も費用面で厳しい状況。

 

経営的に最も簡単な解決策は廃業。

持続可能のコンセプトを外せば家族経営。

光熱費上昇を上回る客数増加(これには大胆な設備投資は必要)

 

設備投資をすれば、当然のことながら損益分岐が上がる。

 

お客さんからたくさんの「ありがとう」の言葉をいただき

お客さんの笑顔に触れることができ

一定のお客さんの居場所、憩いの場になっていることは事実である。

 

大田区の「美奈見の湯」「入船湯」を閉店するときは悲しかった。

(賃貸での設備劣化が閉店の理由)

 

 

春近し、水温が上がれば!

エアコン不要まで気温が上がれば!

光熱費対策には最も有効なのは気温の上昇。

 

新築であれば、いくらでも設備的に打ち手はあるが、

3億~4億をかけて20万円/日の売り上げを取りに行くのはお金が余っている人。

(セブンイレブンは50万円/日超えていて開業費用は数千万でOKでしょ)

 

ごちゃごちゃ言っているのならば廃業すればよい!

というようにはならないのが浴場経営。

 

壁絵の写真は、いやさか湯です。

地元の小学6年生が卒業記念の取り組みで描いてくれた壁絵です。

 

これから中学生になり、受験組と別れ

高校生になれば地元の友達との交流は減り、

大学生になると交友関係は全国、全世界となり

社会人になれば仕事関係の人間関係が中心の生活になっていきます。

 

それでも、地元は地元で愛おしく

利害関係なく心許せる友は地元に多いはず。

 

じゃぁ風呂屋でね。

と自分の手で描いた壁絵がある風呂屋。

が存続しており集まれたら!

 

ガス代が高いから廃業しちゃったってよ。

俺たちが壁絵を描いた風呂屋。

では悲し過ぎる。

 

強いモチベーションを与えてくれた

馬場小学校6年2組の子供達!

ありがとう!

 

いやさか湯の社長は今年54歳になるので、

君たちがおっさん、おばちゃんになった時は、

この世にはいないけれど・・・・・

 

大人になった君たちが

いやさか湯で湯上りビールで楽しそうにしている姿を

あの世から見るのが楽しみです!

(できれば天国からね・・・・)

 

 

 

 

■いやさか湯閉店回避?

浴場の経営者を悩ますもの・・・・設備劣化と光熱費。

 

最低賃金の上昇も大きな悩みではあるが、

経営者誰しも、儲かっていれば・・・・もっと払ってあげたい。

というのが本音でしょう。

 

鶴見のいやさか湯では、最大浴槽の漏水が経営課題。

 

だんだん浴槽の水位が低下する。

自動で加水されるので、お客さんにはわかりません。

気温が下がると、加水される水温も下がります。

常に新しい水が加わるのでガスボイラはフル稼働。

 

墨汁調査もやったし、怪しい箇所はパテで埋め、

施工業者にも相談し・・・・原因判明に至らなかった。

 

残りは循環する配管。

床下の配管であれば床を壊して調査しなければならない。

営業は休まなければならないし、修理費も大きくなる。

 

配管調査に手をつけないまま、ガス代は130万を超えてきた。

このままだと1月、2月の寒い時期は確実に150万を超え

水道代と併せて200万+電気代となり閉店が忍び寄っておりました。

 

漏水していたのは、

浴槽の中にヒノキの浴槽があるという珍しいタイプの白湯です。

系統が同一のため、漏水が疑われるヒノキだけ止めることが出来ずにいました。

 

それなりに人気のヒノキですが、

メカニカルプラグを使えば、無理やり止められることが判明。

 

早速、実行してみると・・・・減水が止まりました。

 

カラの浴槽があるというカッコ悪い状況ですが、

背に腹は代えられません。

 

カラの浴槽は、何かのスペースに変え

冬場のガス代を100万以下に抑えられれば・・・・経営を続けることが可能!

 

今までは、ガスの請求書を見ることが恐ろしかったが、

これからは楽しみである。

 

最近、気が滅入ることばかりだったので、嬉しい!

 

■松の湯再生

11月7日~11月9日 本店にしている墨田区「松の湯」でカマの入替

錆びた旧カマを搬出すると

場所的に目視不可能な調整箱の配管に腐食による穴があることが発覚。

これを交換したので、3日の作業では終わらずに4日間の店休となってしまいました。

 

ここ数か月、カマが水漏れしていたので湯温が上がらず、ストレスフルな営業でしたが、

ようやく適正湯温での営業を再開することができました。

 

二か月近くになりますが、

松の湯を切り盛りしていた女将さんが不在となり

裏方専門のカマ爺とスタッフさんだけでの営業を余儀なくされました。

 

松の湯を立ち上げた(引き継いだ)のは、私ですので私が松の湯業務全てをやることは不可能ではありません。実務は全てわかっております。

しかしながら、松の湯の売上げは会社全体の売上では小さい。

銭湯は営業時間が長く、当社の場合は原則定休日なしであるため

松の湯を残すと会社が立ちいかなくなります。(私が松の湯専属になると)

 

基本的に前向きな性格の私でも「閉店」が正しい選択ではないだろうか・・・・

という状況に追い込まれました。

 

現状のスタッフさんは、他に仕事があり

空いている時間に勤務シフトで働いてくれている現状です。

 

松の湯で社員になってくれ!

とは言えません。(売上規模が小さいので適正な処遇が難しい)

 

そんな苦悩の中、男湯の掃除がとてもキレイな日がありました。

清掃した人を特定し、コンタクトを取りました。

なんとなく知っているけど、ほぼ初対面のスタッフさんでした。

掃除がキレイな人は信頼できるのでマネージメントを依頼してみたのです。

 

彼女から指摘されたのは、

「前歯が見えるくらい笑顔を無理やりでも作りなさい!」

そういえば、しばらく私の顔から笑顔が消えておりました。

 

全スタッフは松の湯が大好きだから、何としても残したい。

できる範囲で協力します!

処遇条件の提示なしに全面協力宣言を得たのです。

 

なんと松の湯全体の「改善項目」が私に示され、

私ができる範囲で承認することとなり

設備はそのままなのに、大きく松の湯は生まれ変わりました。

 

そもそも私は物事を強制・命令されるがとても嫌いです。

でも強制・命令に従うことで自身が成長していくことも事実です。

(苦手な事、やりたくない事もやるわけですから)

 

試合が始まったら監督の指示が聞こえないラグビーだからこそ

野球をやめて続けてこれたのでしょう。

 

今まで聞こえてこなかった、様々な意見が都度発せられ

問題共有とそれに対する改善がなされております。

 

設備劣化と後継者問題で閉店していくのが銭湯ですが、

松の湯は私が死んでも松の湯愛で続いていく可能性を感じております。

 

持続可能な銭湯経営は「銭湯愛」なのでしょう。