おみょうにち劇場 -6ページ目

レポート3)SPAMALOT

おみょうにち劇場-SPAM2
 ( 12/27 19:00 @ SAM S. SHUBERT THEATRE )

劇場エンターテイメントの最高域!
見終わっても、またすぐに見たくなる、
どうしようもなくニクい奴。


 これも2005年からのロングラン作品ですが、今回は
 モンティ・パイソンマニアのホヤ子さんがMUST SEE
 演目として推してくれました。今年1月11日のクローズの前に、
 ぎりぎりで間に合って本当に良かったです。

 SPAMALOTは、中世イギリスのアーサー王伝説のパロディ映画「モンティ・パイソンと
 ホーリーグレイル」のミュージカル版です。見ながら気づいたのですが
 SPAM - a lot = SPAMがたくさん、つまり、「食えねえコントがいっぱい」みたいな
 タイトルなわけですね。
 モンティ・パイソンといえばシュールな笑いを思い浮かべますが、
 この劇場版には「いかにもミュージカル」というテイストの音楽とダンスがふんだんに盛り込まれ、
 芝居の展開を牽引していきます。これが、ブロードウェイへのオマージュでもあり、大仕掛けの上
 げ足取りでもあり(笑)。

 手練手管のおじさん俳優たちと、美貌のセクシー女優たちが、膨大なお金と人手のかかる
 最高にばかばかしいコントを盛りだくさんに用意して、全身全霊をかけて私たちを笑いの渦
 に巻き込んでくれる、これを至福の時と言わずしてなんとしましょう。
 好きなシーンを上げればきりがありません。
 「ENGLAND」の前振りを受けて「FINLAND」のダンスチームが延々踊っていたり(後に   
 「ENGLANDって言ったろ!」とつっ込まれて、一同ぶーぶー言いながら退場)、湖の乙女
 の取り巻きがLAKERSというチアリーダーで主人公のアーサー王にはちゃめちゃな声援を
 送ったり、ランスロットが「Dance a lot」しちゃったり、二幕で出番がない湖の乙女が
 その不満を熱唱するのは場転の時間稼ぎだったり・・・。
 CDを聞きながらこれを書いていると、SPAMALOTにまた会いたい~、という切実な気持ち
 が募ります。

 総じて、劇場で経験できるエンターテイメントの最高域でした!そのサービス精神、探究心、
 軽々と楽しそうに演じて見せる役者たちの余裕(経験とテクニックあってこそですが)。
 勝手ながら、これから永遠の目標とさせていただこうと思います。

 そしてきっとホヤ子さんは、私以上に言いたいことがいろいろあると思いますよ。
 コメント、どうぞ。
 (kate)

おみょうにち劇場-SPAM1

※写真は、開演前の舞台。

レポート2)BILLY ELLIOT

おみょうにち劇場-Billy
 (12/30 14:00 @ IMPERIAL THEATRE )
これは絶対に、見てほしい!!
子供のミュージカルではありません。
真のターゲットは、
夢から遠のいてしまった大人です。
 

 ロンドンでは2005年5月から始まっていましたが、
 NYでは08年11月にオープンしたばかりで超人気作
 品でした。映画の「リトル・ダンサー」(邦題)の
 ミュージカルです。映画で見たしな、子供が主人公
 だしな、という理由でこれまで優先順位を下げてい
 たこと大いに反省です。映画とは全く別もの、そし
 てレミゼ級の大作の感動が!!
 これはまだまだ続くロングランですから、これから
 ロンドンかNYへ行く機会のある方にはMUST SEE !
 の傑作です。

 物語の舞台は、イギリス北部の炭坑の町で、激しい労働争議の渦中にある。主人公の少年ビリー
 は父も兄も炭坑夫、旧体然とした価値観のもとで育てられているが、ひょんなことからバレエの
 レッスンに通うようになり、間もなく先生に才能を見いだされて、ロイヤルバレエスクールの
 受験を目指して特訓を始める。
 最初は、男のバレイなど大反対だった父と兄だが、自分たちの仕事の将来が暗いことを理解する
 と同時に、ビリーの選択を理解しようとする。主力産業の転換期に直面した町の混乱、ビリー少
 年の自我の芽生えと成長、ストレスを抱える家族との摩擦、の3要素が盛りだくさんに詰め込ま
 れており、パワーが渦巻く作品です。

 そして魅力的な役者たち!特に子供たちのプロ意識と技術の高さは、一体どうやって育てるのだ
 ろう??(ちなみにメインの子供のビリーはトリプル、マイケルはダブルキャストでルーチンを
 組んでいるようです。)
 この回のBilly役はDavid Alvarez君。生真面目で、繊細で、バレエの世界にいる時だけは自由に
 なれるという役所を見事に体現していました。父と兄からバレエ学校の受験を反対されて一人
 部屋に籠った時に踏みならす怒りのステップ、大人になった自分と空想の中で思い切りバレエを
 踊るシーンの伸びやかなステップなど、涙なしには見られませんでした。そして、ビリーの親友
 で少しホモっけのあるマイケル役には、Frank Dolce君。小さくて愛嬌たっぷり、女装したり、
 チュチュを着たりの変装が大好きで、その姿で卓越したタップを踏んでくれる、私のハートは
 奪われました。

 もちろん大人の役者さんも。バレエの先生役のHaydn Gwyneと、父役のGregory Jbaraが渋い。
 この二人はビリーの進路について真っ向から争うものの、後半で父が自分から先生の自宅を訪ね
 てビリーには本当に才能があるかを確認するという下り。すでに自分の夢はあきらめた不器用な
 中年の二人が、若い世代の未来に掛ける切なる思いが交錯します。他にもこの二人には見せ場が
 たくさんあって、泣かせてくれます。

 群舞のダイナミズムも面白く、炭坑夫と警察の拮抗など荒々しいシーンかと思えば、チュチュを
 着たバレエ教室の女の子たちの群舞もそこにかぶさって来たりと、一筋縄ではいかない展開です。
 物語の筋は映画と同じなのですが、それをミュージカルとして新たな作品に仕立てるプロの仕事
 を見た!という喜びも感じました。最初に言ったとおり、ここまで来ると別物なのです。

 舞台セットの仕掛けも興味深いものでしたが、言葉での説明が難しいのでこれは実物を見る方は
 楽しみにとっておいてください。

 幕後の私とホヤ子さんは号泣で、後ろの席のマダムが「あら、涙?素晴らしかったわね。私、
 怒りから生まれるダンスというのは、初めて見ましたわ」と穏やかに言ってくださったのは
 印象的でした。

 あ・・・、また泣けてきました。
 (kate)

レポート1)SPRING AWAKENING

おみょうにち劇場-SPRING1

おみょうにち劇場-Spring Awakening2
(12/28 20:00 @ EUGENE O'NEILL THEATRE )

 驚くべき新鮮さに、圧倒されっぱなし! 

 今回の旅行の第一目的は、SPRING AWAKENING
 でした。前回2006年の夏にNYに出かけた時、
 このミュージカルはオフ・ブロードウェイでの公演が
 始まった頃で、新聞に衝撃的な劇評が載っていました。
 が、その時はメリル・ストリープ主演の野外劇「肝っ玉
 母さん~」のチケット獲得を最優先にしたため、予定が
 合わず行けなかったのです。その後、ブロードウェイに
 上がってきたな、続いているな、と気になっていたので
 すが、1月18日でクローズという情報を見て、行くな
 ら今しかない、と。


 SPRING AWAKENINGはFrank Wedekindによる1891年の戯曲が原作で、
 ドイツのとある町が舞台です。短く紹介されると「10代の若者たちの性の
 目覚めを描く作品」となりますが、実際にはそれどころではない。彼らの自分
 の体の変化への戸惑い、抑制できない異性への関心は、権威主義的な教師や親
 に押しつぶされ、それぞれに行きずまって、自殺する者、妊娠して親に中絶を
 強いられるが失敗して死んでしまう者、それらの死の責任を背負う者、等があり、
 重苦しい展開です。それを、叙情的なロックにのせて、若いキャストが歌い、
 跳んで、叫んでーーーー、見せる、魅せる。作曲のSheik氏は、ミュージカル
 で会話が急に歌に展開するのが嫌だったそうで、この作品では登場人物が内面
 を吐露する部分だけが歌になっています。現実には抑圧されて言葉にならない分、
 歌のシーンは時空を超えた展開にもなります。

 そしてなんといっても、10代の性の繊細で残酷な世界を、若い役者たちが
 内面と身体をさらして生々しく表現する大胆さに、観客は度肝を抜かれます。
 映画ならばともかく、生の舞台でその領域に挑戦したということが、作品が高く
 評価された要因でしょう。ヒロインWendla役に12、3歳にしか見えない未発達な
 体つきのAlexandra Socha、少しませた主人公のMelchior役にニキビ面(メイ
 クか?)のHunter Parrish、惨めに自殺を選ぶもう一人の主人公Moritz役にず
 んぐりむっくりのGerard Canonico、恵まれない境遇の少女Ilse役にむっちり
 としたEmma Huston(歌唱力抜群)、等リアリティのあるキャスティング
 も新鮮で、しかも若い役者につきものの堅さや力みが、物語の設定とかみ
 合ってかえって効果が上がっています。しつこいですが、本人たちにとっても
 リアルタイムで、たいへんにセンシティブな行為を、人前で演じてみせるわけ
 ですから、「あの子たち、度胸あるなー」というのが我々3人の共通した感想
 でした。

 ブロードウェイの公演は終わってしまいますが、09年は世界の各地で
 上演が予定されているのと、日本でも劇団四季が上演するそうですね。
 他のプロダクションの制作で、この絶妙なバランスを生み出すことが
 できるのか疑問がわかないではありませんが、その難易度を想像できる
 からこそ、作り手にとっては挑戦意欲の湧く作品とも言えるでしょう。
  (kate)

 ※写真の下の方は、終演後の舞台。舞台の両袖にも客席があり、緊張感は伴う
  と思うが料金は$40と安価。そこで見たかったが、もちろんすでに一杯。

NY観劇レポート6連発、書きます宣言。

おみょうにち劇場-タイムズスクエア
 新年あけましておめでとうございます!
 昨年9月の東京公演終了後、久しぶりに新企画で更新します。
 去る12月27日~1月1日まで私(山路けいと)は、
 三陸ホヤ子さん(※1)とNY観劇旅行
 出かけました。パリから飛んで来たマギー(※2)も
 現地で合流しました。
 
 これまでも1週間ほどの休暇がとれると、ロンドンかNYの
 劇場に身を静めにでかけたことが何度かありましたが、
 今回はこだわりの2名を誘ったこともあって、出発前から念入りに吟味を重ね、チケット予約も万端
 に準備して出かけました。
 
 結果、非常に収穫の多い旅行となりまして、この興奮を少しでもお伝えしたいということで、
 ブログでレポートさせていただきます。
 各劇評が準備出来次第、順次アップしますので、どうぞお楽しみください !
 (kate)

<同行者の紹介>
※1)三陸ホヤ子さん;私とシェイクスピア・カンパニーを引き合わせてくれた仕事上の先輩で、長年に渡るカンパニーの強力なサポーター。昨年の東京公演カウントダウン企画にも何度か投稿していただきました。ミュージカルと歌舞伎の熱狂的な通です。

※2)マギー(西間木恵);パリ在住のフローリスト。カンパニーの立ち上げメンバーで、01年の旧「お気に召すまま」までは役者、兼衣装デザイナーとして参加。フラワーデザインを本業として、3年前からパリへ移住し世界のセレブを相手に活躍中。

寅さんに出会いました


  大雨で中央線が完全に止まり、
  迂回した渋谷駅のホームで
  寅さん
を見かけました。

  「アイ・ラブ・ユー。できるか、青年」




私の回りには、素敵なシングル女性がたくさんいます。結婚したいし子供もほしい、と言いながら、「よく考えるとそのためのアクションは起こしてないのよね~」と、あっけらかんと笑う友人たちです。お金も時間も美しさも全部自由に使える彼女たちは、何もパートナー選びに焦る必要ははないのであります。

でも。その何人かは、新・温泉旅館のお気に召すままを見た後に、「初恋の気分に舞い戻った」「恋がしたいな、心から」と、こっそり感想をくれました。

私は嬉しかった。

彼女たちの心の扉をノックしたのは、恋する青年を演じる2人の新人だったかな。
社長令嬢にひと目惚れした新入社員、王蘭土(おうらんど)役の長谷川景と、
ストリッパーに熱を上げる警察官、駐在守(ちゅうざいまもる)役の加藤翼。

舞台で相手役を必死に口説く彼らは、うまい下手を飛び越えた高温多湿のエネルギーを放ちます。
その一途さに口説き落とされてしまう先輩女優たちに、自分を重ねたお客さんもいたかもしれない。

いいのだ、かっこ悪くても。
好きなものは、好きなんだ。
そういう素直な気持ちを、この作品は思い出させてくれます。

そしてそれは、私の大好きな「フーテンの寅さん」からのメッセージにも似ています。
寅さんのメッセージ、「首都圏のJR東日本34駅、東京メトロ20駅に、全60パターンの異なる絵柄で展開!!」だそうです。味な企画だなあ。
(kate)

シェイクスピア・カンパニー東京公演
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