レポート2)BILLY ELLIOT | おみょうにち劇場

レポート2)BILLY ELLIOT

おみょうにち劇場-Billy
 (12/30 14:00 @ IMPERIAL THEATRE )
これは絶対に、見てほしい!!
子供のミュージカルではありません。
真のターゲットは、
夢から遠のいてしまった大人です。
 

 ロンドンでは2005年5月から始まっていましたが、
 NYでは08年11月にオープンしたばかりで超人気作
 品でした。映画の「リトル・ダンサー」(邦題)の
 ミュージカルです。映画で見たしな、子供が主人公
 だしな、という理由でこれまで優先順位を下げてい
 たこと大いに反省です。映画とは全く別もの、そし
 てレミゼ級の大作の感動が!!
 これはまだまだ続くロングランですから、これから
 ロンドンかNYへ行く機会のある方にはMUST SEE !
 の傑作です。

 物語の舞台は、イギリス北部の炭坑の町で、激しい労働争議の渦中にある。主人公の少年ビリー
 は父も兄も炭坑夫、旧体然とした価値観のもとで育てられているが、ひょんなことからバレエの
 レッスンに通うようになり、間もなく先生に才能を見いだされて、ロイヤルバレエスクールの
 受験を目指して特訓を始める。
 最初は、男のバレイなど大反対だった父と兄だが、自分たちの仕事の将来が暗いことを理解する
 と同時に、ビリーの選択を理解しようとする。主力産業の転換期に直面した町の混乱、ビリー少
 年の自我の芽生えと成長、ストレスを抱える家族との摩擦、の3要素が盛りだくさんに詰め込ま
 れており、パワーが渦巻く作品です。

 そして魅力的な役者たち!特に子供たちのプロ意識と技術の高さは、一体どうやって育てるのだ
 ろう??(ちなみにメインの子供のビリーはトリプル、マイケルはダブルキャストでルーチンを
 組んでいるようです。)
 この回のBilly役はDavid Alvarez君。生真面目で、繊細で、バレエの世界にいる時だけは自由に
 なれるという役所を見事に体現していました。父と兄からバレエ学校の受験を反対されて一人
 部屋に籠った時に踏みならす怒りのステップ、大人になった自分と空想の中で思い切りバレエを
 踊るシーンの伸びやかなステップなど、涙なしには見られませんでした。そして、ビリーの親友
 で少しホモっけのあるマイケル役には、Frank Dolce君。小さくて愛嬌たっぷり、女装したり、
 チュチュを着たりの変装が大好きで、その姿で卓越したタップを踏んでくれる、私のハートは
 奪われました。

 もちろん大人の役者さんも。バレエの先生役のHaydn Gwyneと、父役のGregory Jbaraが渋い。
 この二人はビリーの進路について真っ向から争うものの、後半で父が自分から先生の自宅を訪ね
 てビリーには本当に才能があるかを確認するという下り。すでに自分の夢はあきらめた不器用な
 中年の二人が、若い世代の未来に掛ける切なる思いが交錯します。他にもこの二人には見せ場が
 たくさんあって、泣かせてくれます。

 群舞のダイナミズムも面白く、炭坑夫と警察の拮抗など荒々しいシーンかと思えば、チュチュを
 着たバレエ教室の女の子たちの群舞もそこにかぶさって来たりと、一筋縄ではいかない展開です。
 物語の筋は映画と同じなのですが、それをミュージカルとして新たな作品に仕立てるプロの仕事
 を見た!という喜びも感じました。最初に言ったとおり、ここまで来ると別物なのです。

 舞台セットの仕掛けも興味深いものでしたが、言葉での説明が難しいのでこれは実物を見る方は
 楽しみにとっておいてください。

 幕後の私とホヤ子さんは号泣で、後ろの席のマダムが「あら、涙?素晴らしかったわね。私、
 怒りから生まれるダンスというのは、初めて見ましたわ」と穏やかに言ってくださったのは
 印象的でした。

 あ・・・、また泣けてきました。
 (kate)