⚪️ ウクライナ情勢、クリミア併合問題は終わったのか?

日本では、オバマ大統領の訪日ニュースがテレビを席巻したが、米国内ではそれ以上にウクライナ東部情勢が大きく取り上げられ、報道されていたようだ。ただ、露が併合したクリミアはどこかに行ってしまったかのように報道されない。これが現実だ!

先のジュネーブでの米、露、EU、ウクライナの4者協議共同声明でもクリミアは言及されなかった。これが軍事力を背景とした外交の結末の一例だ。実際、米もEUも、軍を派遣し、自国の若者の地を流してまでもクリミアを守ろうとか、力を背景とした現状変更は認めないとまでは行かなかった。国連も露が安保理常任理事国の一員であるが故に、効力ある制裁はできなかった。集団安全保障の限界を露呈した形だ。

一方、肝心のウクライナ軍、その弱体化は目を覆うようだ。前大統領が軍の精強化を怠り、訓練も、装備更新も、部品の調達も不十分なため、ウクライナ暫定政府国防相によれば、公称、約13万の陸海空ウクライナ軍のうち、東部に投入できる勢力は約6000人に留まる由。ミグやスホーイの戦闘機も、訓練や部品不足のため、飛行出来る機数は一桁台との情報もある。陸軍も装甲車20両で武装勢力排除に向かったところ6両が奪取されたとか、ロシア国境沿いでウクライナ軍の塹壕構築の映像を見ると手掘りしている様もあるようだ。

よって、ウクライナ国境沿で展開している露軍とウクライナ軍とでは、勝負にならないとの見方が一般的だ。それ故に、米国やEUは、更なる経済制裁や軍を東ヨーロッパやバルト三国に増派や再展開をする等して、露を牽制する動きを強める必要がある。露軍機のウクライナへの領空侵犯に欧米が敏感に反応したり、オバマ大統領が日本や韓国訪問の中で言及している通りだ。

露にとってウクライナ東部への軍事介入は大きな代償を伴う。一般に軍事介入の際は、勝つ自信があったとしてもその後の戦後処理、エンドステートを考えなければならない。露にとって、欧米からの経済制裁以上に、ウクライナ東部の統治への負担は相当なものになる。現在、露のクリミア併合に伴うクリミア支援の負担大は相当なものだ。極東・シベリア開発担当者もクリミア共和国支援に没頭しており、極東・シベリア開発の遅れは必至との情報もある。更にクリミアの水や電気はウクライナ側から来ているという厳しい現実もある。

ウクライナ軍による東部親露派勢力への制圧の動きが、こうした露軍や欧米の動きの中で継続され、予断を許さない状況である事には当面変わりはないし、強いプーチン大統領への露国内の支持も強いことから、注視をしなければならないのは当然だ。

ただ、クリミア併合問題を忘れては絶対にならない!現場追認や過去のものにしてはいけない。中国は、これらの動きを見ているはずだ。中国が、ダマンスキー島を自国領としたように、力のバランスが崩れた時に、クリミアを教訓として、尖閣諸島に手を出す可能性は否定できない。

日本は、力による現状変更は認めらないとの国際規範をもっと強調すると同時に、尖閣諸島を守り切る自国の防衛力を維持強化と日米同盟の強化に汗をかかなければ、守るべきものを守れなくなる。強い国民意思とソフトパワー・ハードパワーで、守り向かないと!