1999年3月末、NOVAの体験レッスンおよびレベルチェックを受けた。当時のNOVAは生徒のレベルを9段階に分けていた。レベル1~レベル7、さらにレベル7は7A、7B、7Cに分かれていた。レベル1が一番上でレベル7Cが一番下である。
体験レッスンの講師はローラ(Laura)というカナダ人女性だった。30代前半のスラっとした長身の美人だった。彼女は私の前で脚を組んで椅子に座り、いくつか私に英語で質問した。名前、仕事や趣味についてである。しどろもどろになりながら何とか質問に答えた。
次に、Can you describe me? と言ったので、You are sitting on the chair. You are crossing your legs. などと答えた。発音はボロボロだったろう。そのときふと「脚を組んで座る」という日本語から「付帯状況の分詞構文」という言葉が脳裏をかすめた。
You are sitting on the chair with your legs crossed. という表現である。
レベルチェックもローラだった。結果はレベル7C、最下位のレベルになった。
当日には契約を交わしNOVAに入学した。通学が1999年4月から始まり、以来土・日はほぼNOVA漬けとなった。7Cの頃は中学生と一緒に授業を受けることもあった。ある意味情けない気持ちにもなったが、それが当時の自分の英会話の実力だった。
4月中にレベル7B、5月に7A、6月頭にはレベル6に上がった。テキストの内容は難しいものではなかったが、それでも「言いたいことがなかなか英語にならない」状況が続いていた。
NOVAに通ううちに、所謂「NOVA友」と呼ばれる数人の仲間ができた。英語のレベルや年齢、性別に関係なく、VOICEなどで気が合うものが集まるようになり、3か月に一度くらい飲み会を催すようになった。20代後半から30代前半の男女が中心で、40代になったばかりの私と同じくらいの歳の女性もいた。
なおVOICEとは、NOVAのレッスンの一つで、レベルに関係なく参加できるフリートークの場を指し、普通は講師が何らかのテーマを生徒に与え、生徒はそれに対して英語で自由に意見を述べるという形式のレッスンだった。
若いNOVA友たちと交流する中、仕事のストレスは殆ど感じなくなっていった。中国人の女性カウンセラーに感謝した。英会話漬けの夏が過ぎて9月に入ったころレベル5に上がった。
レベル5に上がったくらいに結構仲良くなった講師がいた。私より5歳くらい年下のジェームス(James)というイギリス人男性でクイーンズ・イングリッシュ(Queen’s English)を話した。レッスンやVOICEの内容も専門的で特にボキャブラリーを重視した。「ボキャブラリーがあれば何でも話せる」と思えるようになった。
因みに、ジェームスは暫くしてNOVAを辞めて日本人の女性と結婚した。その後、市内で英会話スクールを開いた。それから10年ほどが経って、私が翻訳者・コーディネーターとなってから、イギリス英語が指定された英訳についてネイティブ・チェックを彼に委託するなど長い付き合いとなった。
当時、NOVAのテキストのCDの他、毎日車の中でよく聴いていたのが「英会話とっさのひとこと辞典」(巽一郎、巽スカイ・ヘザー/DHC)で、ちょっと洒落た表現が満載されていた。