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翌日、つまり
発表会本番前日の朝、
目が覚めると
39度近くあった熱は
薬のおかげで36度台まで
下がっていました。
(ありがたい・・)
身体は鉛のように重く、
節々が痛みます。
(けれど、今日だけは、
今日と明日だけは、
何があっても乗り越えて
みせる。)
もしかしたら、
リモートで会場と
つながることが
出来るかもしれない。
劇場は、私の職場。
不安になっている生徒たちに
私の弱っている姿を
見せてはいけない。
出来るだけ、
いつもの私に見えるように。
出来るだけ、
元気な私に見えるように。
・・多分隠しきれないとは
思うけど。
でもそれは私から彼女たちへ
精一杯の愛情から
くるものだった。
(さあ、私にとっての
舞台のはじまりだ)
意を決してベッドから
ヨロヨロと立ち上がり、
洗面所に向かう。
鏡をのぞくと、ひどい顔だ。
顔を洗い、歯を磨き、
髪を整える。
部屋に戻って、服を着替える。
発表会Tシャツを着て、
もし私が劇場入り出来ていたら
着ていったであろう
いつもの定番服で、
仕事スイッチを入れる。
次に鏡の前に立つ。
フラつく足元を
気にしながら、
まるで舞台メイクのように
濃いメイクをほどこす。
弱いまなざしに気づかれないように
強くアイラインを引く。
悪い顔色に気づかれないように
濃いチークを入れて
真っ赤な口紅を引く
眉毛は強く太く、
鼻筋にシェーディングも入れて
ノーズシャドーとハイライトも
入れる。
時々、ベッドに座り込みながら
何とかメイクが終わった頃、
アシスタントからかかってきた
電話に出て、質問に答え続ける。
8時45分。
会場が開いた。
次々に各セクションから
報告が届く。
『受付セッティング完了しました。
ホール担当の方のアドバイスで
当初の予定から
このように変更しています。
確認をお願いします。』
送られてきた写真が
よくわからないので
動画を撮るか
テレビ電話で
つないでもらうよう依頼。
次に、
『ケータリング設置完了しました。
写真送りますので、
確認をお願いします。」
との報告を受ける。
こちらはOK,と。
ふと気になって、楽屋前の写真を
送ってもらう。
楽屋名札(その楽屋を使う人の
名前を書いた紙。楽屋毎に貼る)
が、ドアに貼ってあったので、
ドアではなく壁に貼るように
指示をする。
生徒たちは知らない。
楽屋というのは特別な場所。
歌舞伎俳優や舞台俳優が
楽屋に暖簾をかけるという話を
聞いたことがある人もいると思うが
使う人にとっては玄関に等しい。
玄関で表札をドアにつけている人は
あまりいない。
表札は壁の上の方に貼るもの。
楽屋名札も同じ。
ささいなことだが、気になる・・
とぼやいていたら、
後て見たら壁に貼りかえて
くれていました。
ありがとう。
ひっきりなしに
各セクションとやりとりを
しているうちに、
楽屋とホールの両方と
リモートがつながりそうだと
連絡をうける。
(よし!)
その前に、一足先に
受付とテレビ電話がつながった。
気が遠くなるほど長く、
そしてとても大切な一日の
始まりだった。
つづく

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