山陽特殊製鋼の太陽光発電導入によるCO2削減と持続可能性向上への取り組み
山陽特殊製鋼が大阪ガスのPPA(電力購入契約)サービス「D-Solar」を導入し、倉庫に設置された太陽光パネルを通じて本社工場へ電力を供給する取り組みは、環境負荷の軽減と企業の持続可能性を高めるための重要な一歩となっています。このプロジェクトは、スコープ1、スコープ2、スコープ3に対応する形で、企業のCO2排出削減目標達成に寄与するものです。
スコープ1とスコープ2の対応
スコープ1およびスコープ2は、それぞれ企業の直接的な温室効果ガス排出(燃料の燃焼や化学反応による排出)と、購入した電力、熱、蒸気の使用により発生する間接的な温室効果ガス排出を指します。山陽特殊製鋼が実施した今回の太陽光発電プロジェクトは、このスコープ1およびスコープ2に該当するCO2排出量の削減を目的としています。
具体的には、製品倉庫の屋根上に設置された太陽光パネルから得られる電力を、本社工場で自家消費することで、購入電力に依存することなく、再生可能エネルギーの利用を促進しています。太陽光発電によって年間約60万kWhの電力が供給される予定であり、これは本社工場と事務所の年間電力消費量を上回ることが予想されています。この結果、山陽特殊製鋼は年間約266トンのCO2排出量を削減することが可能となり、これはスコープ2における排出削減効果の具体的な例となります。
さらに、このプロジェクトでは、自営線の敷設により、太陽光発電で生成されたクリーンなエネルギーを効率的に工場へ供給することが可能となっています。これにより、化石燃料に依存する電力の利用を減少させ、直接的なCO2排出(スコープ1)をも抑制する効果が期待されます。これらの取り組みは、企業のエネルギー利用の脱炭素化を促進し、2030年度までに2013年度比で50%以上のCO2排出削減を目指す目標の達成に向けた重要な手段となります。
スコープ3の対応
スコープ3は、企業のサプライチェーン全体で発生する間接的な温室効果ガス排出を指します。これは、原材料の調達から製品の製造、輸送、使用、廃棄に至るまで、広範な活動範囲における排出量を含んでいます。山陽特殊製鋼は、2021年度比で25%のスコープ3排出削減を目指していますが、太陽光発電の導入は、この目標達成にも間接的に寄与します。
まず、太陽光発電によるクリーンエネルギーの利用は、企業の全体的な環境負荷を減少させ、サプライチェーン全体における持続可能なエネルギー使用の模範を示すことができます。これにより、山陽特殊製鋼の製品やサービスを利用する顧客やパートナー企業にも、環境意識の向上と持続可能な活動の促進が期待されます。企業が自社内でクリーンエネルギーを積極的に利用することで、その影響はサプライチェーン全体に広がり、結果的にスコープ3の排出削減にも貢献することになります。
また、再生可能エネルギーを活用することで、企業が生産する製品の「カーボンフットプリント」を削減することが可能となります。これにより、製品が市場に出る際の環境負荷が軽減され、エンドユーザーにとってもより環境に配慮した選択肢を提供することができます。このような取り組みは、企業のブランド価値の向上にも繋がり、長期的な視点での競争力強化にも寄与します。
自営線とPPAサービスの意義
今回のプロジェクトで注目すべきは、山陽特殊製鋼が自営線を活用して太陽光発電の電力を供給している点です。自営線とは、企業が所有する電柱や電線を利用して、発電施設と消費施設を直接つなぐためのインフラを指します。これにより、発電した電力を効率的に供給することが可能となり、エネルギーのロスを最小限に抑えることができます。
さらに、PPAサービスの導入によって、山陽特殊製鋼は初期投資を抑えつつ、再生可能エネルギーを活用することが可能となりました。PPA(電力購入契約)とは、発電事業者が企業の敷地内に太陽光発電設備を設置し、その発電した電力を長期間にわたり購入する契約のことを指します。このモデルにより、企業は設備の設置や運用に関するリスクを負うことなく、クリーンエネルギーを利用できるメリットを享受できます。
山陽特殊製鋼にとって、この取り組みは環境面での貢献だけでなく、コスト削減やエネルギーの安定供給という面でも大きなメリットをもたらします。再生可能エネルギーの利用は、電力価格の変動に対するリスクヘッジとなり、長期的な視点でのコスト安定化にも寄与します。
まとめ
山陽特殊製鋼が導入した太陽光発電プロジェクトは、スコープ1、スコープ2、スコープ3の各視点において、企業のCO2排出削減目標の達成に向けた重要な取り組みであることが明らかです。特に、PPAサービスと自営線の活用によって、初期投資を抑えつつクリーンエネルギーの利用を促進するという、現代の企業にとって非常に有効なモデルを実現しています。
このような取り組みは、企業の環境責任を果たすだけでなく、長期的な競争力を強化し、持続可能な社会の実現に向けた貢献を果たすものです。今後も、山陽特殊製鋼のような先進的な取り組みが増えることで、産業全体がよりクリーンで持続可能な方向へと進んでいくことが期待されます。
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倉庫から300mの自営線、屋根上太陽光を本社工場へ供給 https://project.nikkeibp.co.jp/ms/atcl/19/news/00001/04391/?ST=msb&n_cid=nbptec_tectw