諸事情により、このブログは一旦休止とさせて頂きます。
全部、中途半端になり申し訳ございませぬ。
再開時期は未定ですが、他に書きたいことがありますので、また随時更新していきます。
ちひろ
彼女と出会ったのは7年前。
とある場末の酒場にて。
漁業が盛んな町だった。
彼女はその町一番の歌い手だった。
面識こそなかったが、方々で聞く噂で、この町には素晴らしい歌い手が居るんだなと思っていた。
ただ、良い噂ばかりではなかった。
彼女の過去に纏わる噂をいろいろと耳にもした。
非行。犯罪。離婚暦。流産。リストカット。ハッピーターン。ワーキングホリデー。空中元彌チョップ。
挙げればキリがないほどに。
俺は陰口が嫌いな性質なんで、そういう噂を聞く度に、
「ガキじゃあるめぇし、野暮な詮索はしてんじゃねぇよ!」
と、愛用のキッチンペーパーにチョコチップで綴った。
おっと、そろそろ本題に入ろうか。
その、凍てついた歌い手にあった日のことは、今でもはっきりと覚えている…。
皆が楽しく酒を飲んでいるのに、彼女だけは寂しげな表情をして、遠くの誰かのことを祈っているような、そんなことを感じさせるような仕草を時折見せていた。
「いつものことさ」と、皆彼女の相手をしようとしない。
才能のある奴は孤独が似合うんだと、町の男連中は誰一人として彼女に話しかけようとしない。
今思えば、妬み僻みの部類に入る、そんな感情だったのかもしれない。
それならばと、勇んで俺が話しかけることにした。
「ねぇ、名前なんて言うの?」
「………ちひろ…」
「ちひろか、良い名前だね」
さて、ここからどうやって会話を弾ませようかと頭の中でシミュレーションしていたら、彼女は唐突に僕の胸倉をつかんでこう言った。
「あんた、あたしにあんまり関わらない方が身の為だよ」
その時の彼女の目は、今でも忘れられない。
獣の目。
凍てついた獣の目だった。
それから小一時間経った頃だったろうか、散々飲み倒して泥酔しきっていた俺だったが、妖艶な歌声を耳にして一発で酔いが醒めちまった。
マイクスタンドの前に立った彼女は俺と視線が合うのを避けるかのように、俯きがちに、始まった曲の前奏が終わるのをひたすらに待っていた。
そして彼女は、『月光』という曲を歌い始めた。
「アーアナースチェマーレァ この腐敗した世界に堕とさレスマチェーアァ♪
ヘドンレスペーツィローペシェアリャー こんなもののために生まれたんジェミャレーツァイ ー♪」
え?歌い始めと歌い終わり、なに言ってんの?
もはや、滑舌悪いとかのレベルじゃないだろう。
え?何語?
もしかして、俺だけに聴こえてる?
「ふふ…」
やばい、いろいろと想像してたら、笑い声が漏れてしまった。
笑い声に気付いた彼女は、顔を真っ赤に赤らめて、窓際まで後ずさりして窓の外の月光を思いっきり浴びた。
次の瞬間、月光を浴びた彼女は全身毛むくじゃらの鬼と化していた。
そして、次から次へと口から小さな鬼を生み出し、鬼の束を創っていった。
鬼束の完成だ。
その後、彼女は消息を絶ったが、東京でプロの歌い手になったという噂も聞いた。
今でも、あの何語か分からない歌を歌っているのだろうか。
あの時、つい笑ってしまったことについて謝る気は毛頭ないが、彼女の孤独を少しでも紛らわせたかったのは事実。
良くない噂が憎しみとなり、彼女をあそこまで駆り立てたのだろう。
憎しみからは何も生まれない、そして、このブログを今年もよろしくと心の中で小さく思った。
さよなら大好きな人
ちょうど1ヶ月前の出来事。
元フォークダンスDE成子坂の村田渚さんが、11月11日にくも膜下出血の為亡くなられました。35歳でした。
最初は、ヤフーニュースで知って半信半疑のままでしたが、現在鼻エンジンとして所属している事務所のソニー・ミュージックアーティスツのホームページを見て「あぁ、本当なんだな…」と実感しました。
「1番、好きな芸人は?」と聞かれたら、「フォークダンスDE成子坂です」と答えます。
たとえ、ボキャブラブームの真っ最中でも、今のお笑いブームの真っ最中でも、これからも、「誰、それ?」と言われても。
「俺はお笑い知ってるんだぜ」とかじゃなく、「あぁ、ダウンタウンです」とベタに答えるのが嫌とかじゃなく、ただ単純に好きなんです。
『千鳥』『東京ダイナマイト』『ケンドーコバヤシ』など、今風の答えにするか迷うときもあるんですが、やっぱり「1番、好きな芸人は?」と聞かれたら、「フォークダンスDE成子坂です」と答えてしまいます。
『GAHAHAキング』で2代目チャンピオンになった頃から知っていますし、『ボキャブラ天国』『今田耕司のシブヤ系うらりんご』『ユメディア号こども塾』も観てました。
『自縛』という単独ライブのビデオも何回も観ました。
桶田さんのボケに惹かれ、村田さんのツッコミに酔いしれていた僕は、あまりテレビ露出の少ない2人がテレビに出るだけで一喜一憂したものです。
完全に虜でした。
ただ、ボキャブラ以降はあまり日の目の見ない芸人になっていってしまいました。
才能ある人達が売れないことを心底嘆きました。
ボキャブラ芸人として少し時代を築き、その後『爆笑オンエアバトル』に出演したときは、落ちぶれたんじゃない!ここからがスタートだ!と思い見守っていましたが、その後解散に至ります。
桶田さんが音楽をやりたかったそうで。
解散して村田さんはピンに。
他の芸人さんからラブコールが多数あったみたいですが、すべて断ったそうです。
「次に相方になる人が桶田と比べられたら、かわいそうや」という理由で。
村田さんは桶田さんの才能に惚れていたんだなと思うと、感慨深いものがありました。
村田さんはフリーになり、事務所を転々とし、2005年の5月に元坂道コロンブスの松丘さんと『鼻エンジン』を結成します。
昨年のM-1グランプリに出場し、準決勝まで駒を進めました。
惜しくも決勝に届かなかった2人の漫才を敗者復活戦で観ましたが、とても面白かったと同時に、やっぱりフォークダンスDE成子坂は超えられない存在なんだなということに気が付きました。
ある人の言葉を借りるなら、コンビ別れした者同士なのでどうしてもユニット感が出てしまっているんです。
コンビではなく、ユニット。
面白いユニットなんです。
でも、才気溢れる村田さんが観れて、その日はとても嬉しかったんです。
今年のM-1も3回戦まで駒を進めていたんですが、残念でなりません。
決勝は無理だったかもしれないけど、もう1度村田さんが戦場で才を披露しているところが観たかった。
本当に残念です。
もし、フォークダンスDE成子坂が解散せずに活動を続けていたら…。
解散しても直ぐに桶田さんと再結成していたら…。
結論の出ないif論を繰り返してしまいます。
ただ悔しいんです。
『GAHAHAキング』の1代目チャンピオンの爆笑問題は売れました。
『GAHAHAキング』の3代目チャンピオンのますだおかだは売れました。
『今田耕司のシブヤ系うらりんご』の他のレギュラーのナインティナインは売れました。
『今田耕司のシブヤ系うらりんご』の他のレギュラーの極楽とんぼは売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのオセロは売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのロンドンブーツ1号2号は売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのよゐこは売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのくりぃむしちゅーは売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのキャイ~ンは売れました。
『ボキャブラ天国』の他のレギュラーのネプチューンは売れました。
ただ悔しいんです。
それだけです。
本当に心からご冥福をお祈りいたします。
そういえば桶田さんが裏方としてお笑いに復帰されているみたいで。
裏方でも嬉しかったです。
フォークのコントがまた観たくなった度:☆☆☆☆☆
キックオフ
「はい、今日の練習はここまで!皆、大会が近いから体調整えておくんだよ!」
あき竹城さん率いるフットサルチーム『バンブーキャッスルズ』に僕は所属している。
メンバーは7人と少なめだが、「僕らは7人の侍なんだ!」と和気藹々とした雰囲気の中で楽しく過ごさせてもらっている。
いや、「いる」ではなく、正確には「いた」の方か。
週に2回は全員で練習に励んでいるが、当のあき竹城さんは最近では
「私は、趣味のホーロー看板収集してる方が気楽でいいよ。もうフットサルは飽きたし、体が持たない。次の大会を最後の試合にしようと思うんだよ。やっぱり、寄る年波には勝てないよ」
と力なく答える。
そんな情熱を無くしたあき竹城さんに、メンバーの1人である武田鉄矢さんの檄が飛ぶ。
「あ、また弱気が顔を出していませんか?あ、そんなんじゃ、次の大会は初戦敗退ですよ!あ、ホーロー看板が何なんですかぁっ!!」
「何だって?!今、ホーロー看板のこと馬鹿にしただろ?てめぇの教え子の杉田かおるは……」
「あ、おい!あ、今、3Bの生徒の悪口を言おうとしましたね?あ、私のことは良いですよ。あ、でも、3Bの生徒のことは悪く言わないでください!」
「うるせぇよ!このやろう」
ここ最近は、いつもこんな感じだ。
売り言葉に買い言葉。
結成当初は、皆、仲良かったのに、いつからこの『バンブーキャッスルズ』の運命の歯車は狂い出したのだろうか?
今となっては、もう誰もこの喧嘩を止めようとしない。
自分自身が情けなく思う。
「あ、もうこのバカちんがっ!あ、もう2度と練習にはこねぇよ」
ついに武田さんの怒りが頂点に達し、僕らの歯車は完全に狂った。
僕が引き止めようとすると、あき竹城さんは
「そんな馬鹿、ほっときゃ良いんだよ。規定の人数は足りてる。そいつが居なくても大会には出れるさ」
と、表情を一切変えずに言い放った。
武田さんは、いつもこのチームが練習に使用している体育館のドアをケンカキックで蹴破り、僕らの城を後にした。
本当に情けない。
無力の自分が、本当に情けない。
涙ぐみ、震えている僕を背にして、メンバーの反町隆史さんがこう言った。
「ふん、仕方ない。今、この事態に憤りを感じてるのはお前と俺だけだ。さぁ、武田さんを追うぞ」
僕は涙で濡れた顔をそのままに、急ぎ、ぐしゃぐしゃの顔のまま反町さんの車に乗り込んだ。
「まだ、そう遠くには行ってないはずだ」
反町さんは小さく呟き、静かに車のエンジンをかけた。
しばらく車を走らせたが、武田さんは一向に見つからない。
僕は不安に駆り立てられて、また顔をぐしゃぐしゃにしてしまった。
「泣くな!もうじき見つかるよ。だから、泣くな!」
反町さんは僕をなだめながら、少し間を空けて煙草に火を付けた。
「何を悠長に煙草を吸ってるんですか!そうこうしてる間に武田さんは……」
「静かにしろ!前を見ろ」
僕は続けようとしたが、素直に前を向いた。
そこには僕らの城へ帰ろうとしている武田さんの姿があった。
僕は車を降りようとしたが、反町さんは「歩いて帰らせた方が武田さんの為になる」と言って、そっとカーステレオをつけた。
途中、『POISON~言いたい事も言えないこんな世の中は~』が流れて気まずい雰囲気になりかけたが、反町さんがFIREという缶コーヒーを奢ってくれたので、車中は和やかな空気になった。
しかも、照れくさそうに「挽きたてか!」とCMでの台詞まで言ってくれた。
少しして、ずっと気になっていたことがあったので、そのことを切り出した。
「奥さん、大変ですね?」
「まぁな、子育てに女優業。確かに大変だわな」
「いやいや、そうじゃなくて名字が」
「名字?」
「だって、反町菜々子ですよ?こんな名前、自殺モンですよ」
「俺の本名は野口隆史だ!だから、野口菜々子だ!正しくは野口奈奈子だ!!」
「それはそれで…」と言いかけたが、言うのはやめて、帰り道は『Forever』を黙って聴くことにした。
体育館も近付いてきたとき、反町さんは偶然歩道を歩いていた夏目ナナさんに見とれて運転していた。
僕も思わず見とれた。
「わー、夏目ナナだ。生夏目ナナだ。夏目ナマだー!」
そして、また偶然にも歩道を浅野温子さんが歩いていた。
「すげー!立て続けに芸能人2人も見たよ!しかも、浅野温子だぜ?マジですげー!」
とテンションが一気に上がったとき、悲劇は起きた。
突然、武田鉄矢さんが車道に飛び出してきた。
ドガシャーーーーーーーーンッッ!!!!!
けたたましい音を立てて、車は急停止した。
「な…、何で?!何で、武田さんが……?やばいですよ、反町さん!武田さんを轢いちゃいましたよ!!」
「……ひきたてか!」
うまいこと言ってんじゃねーよ!
その後、奇跡的にも軽傷で済んだ武田さんから、「浅野温子さんを見かけたから、ドラマみたいについ反射的に車道へ飛び出しちゃった」と聞いたときは、合点がいった。
やっぱり、ドラマみたいにはいかねーや。
「はい、皆休憩するよー!休憩の後はパス練習ね」
僕らの命運を握るはずだった大会は初戦敗退、『バンブーキャッスルズ』は解散…。
僕は今、浅野温子さん率いるフットサルチーム『もっとあぶ刑事トレンディーズ』で青春を謳歌しています。
「はい、休憩終了ー!皆、次の大会はゆう子のチームには絶対負けられないからね!よし、パス練習いくよー!!」
今月のゲーム王国4~おい!他のもやれよ~
他のゲームのクリアもままならないまま、片っ端からゲームに手をつけています。
なーんでしょうか。
リニューアルしたのに、このグダグダ感。
おまけに他のブログもスタートする始末。
なぜ、分ける必要がある?
なぜ、大風呂敷を広げた?
なぜ、醤油差しにファンタを入れた?
なぜ、カバおくんにだけジャムパンをあげたんだ?アンパンマン!
…まぁ、答えは追々分かると思うんだ。
というか、普通の日記も書いてみたくなっちまったんだ。
汚れちまった悲しみに。
という訳で、そちらの普通の日記書いてるブログの方もよろしくです。
メッセージボードの方にURLが載っています。
こっちのブログの本当の目的はね、死者を蘇らせることなんですよ。
そう、大切な人を現世に呼び戻す為に…。
水35ℓ
炭素20kg
アンモニア4ℓ
石灰1.5kg
リン800g
塩分250g
硝石100g
イオウ80g
フッ素7.5g
鉄5g
ケイ素3g
その他少量の15の元素を用意して、2006年の大晦日、このブログの全ての記事の頭文字を並び替えて作った呪文を大地に錬成陣として記す。
それで、大切な人が蘇る。
たとえ、それが人体錬成という最大の禁忌だとしても!
咎人になろうが!
この……、私の………、肉体が………
……あ、今月のゲーム王国です。
今回はファイナルファンタジー5も順調に進んでいるので、そちらは後々報告できると思います。
ただ、グダグダになってますが、如何せん目標クリアゲーム本数が100本なので、ハイペースでいかないかんのですよ。
今回はゲームキューブの『マリオカート ダブルダッシュ!!』です。
すでにクリアしています。
次回は、その死闘の模様をほぼダイジェストみたいな感じでお送りします。
レッツ!バスロマン。
ダメだ…、今日はおもしろフレーズが一つも思い浮かばない…。
酒と真意
その日、僕は魚民にいた。
席には沢村一樹さんと女の子が2人、そしてびしょ濡れの僕。
楽しいはずの合コンが、まさかこんな結末を迎えるなんて…。
「あー、悪いな。起こしちまったか?」
友からの電話で目が覚めた土曜の午後。
「なに?どうしたの?」
「いやぁ、今日の夜2対2のコンパに行く約束してたじゃん?」
「うん、久しぶりのコンパだから気合入れてファッションセンターしまむらでおしゃれな服買ったし、モテトーク術は杉作J太郎さんから叩き込まれたし、おしゃれな病院で予防接種も打ってきたよ。前日におしゃれ風邪ひいたら敵わないっしょ?」
「あー、つっこむところ多々あるから、流れ作業的に言うね。しまむらじゃダメだろ!J太郎は童貞キャラでエアセックスなんかしてるから女性受け悪くてダメだろ!おしゃれに気を遣うの分かるけど風邪にまでおしゃれ付けたらダメだろ!」
「後半、全部ダメだろ!で、まとめんなよ」
「はいはい、わかりました。でさぁ、俺急用が入って行けなくなったんだわ」
「え?なんで」
「ごめん、本当に急ぎの用事でさ、悠長に電話してる暇もないんだわ。けど、代役立てといたから。あ、今日来る女の子さ、スッチーだから。じゃあな」
ツーツー…。
勝手に用件だけ言われて、電話を切られた。
お客様コールセンターに電話してきて、用件話されてる途中に問題が解決しちゃったみたいな感じ、若しくはソフトなレイプ。
ていうか、代役って誰だよ。
俺が人見知りと知ってての発言か?
気さくな人だったらいいけど、内向的な人だったら…。
いや、そんなことはない。
コンパなのに内気なやつが来るもんか。
でも、打ち解けるのに時間がかかるよな。
コンパの席でいきなり全員が全員初対面だったら、やりようがないよな。
僕は友人に「その代役の人と今から会えないか?」というメールを送った。
すぐ返信があって、「了解」とのことだったので、代役の人とコンパ会場近くのカフェで待ち合わせることにした。
待っている間、いろいろな不安に駆られた。
気難しい人だったら、どうしよう?
イケメンで、僕そっちのけで女の子を独占されたらどうしよう?
冗談が通じない人だったら、どうしよう?
貸してたCDが指紋ベタベタで帰ってきたら、どうしよう?
和田代表だったら、どうしよう?
「ひょっとして君かな?」
長身でスマートな男性に声を掛けられた。
振り返ると、そこには細身の黒のスーツを小粋に着こなしている沢村一樹さんが立っていた。
「あ、沢村さんでしたか!あー、良かった」
「なによ。本当に俺で良かったの?」
「いやね、正直、気難しい人が来たらどうしようかと思ってたんで、良かったですよ」
沢村さんとは面識がある。
以前、ねるとんパーティに2人で潜入して、女性に発する第1声が「貯金額は?」だったんで、主催者に怒られて出入り禁止になったという苦い思い出がある。
「いや、俺もどんなやつかなぁと思っててさ、お前で良かったよ」
お互いの素性が分かってホッとしていたら、合コン開始の時刻まで5分と迫っていたので、さっそく合コン会場である魚民へと急いだ。
ドアを開けたら、そこには美女が2人座っていた。
僕が緊張しているのを察してか、沢村さんが先陣を切ってくれた。
「ごめんね、遅れて。何か頼もうか?」
「じゃあ、皆ビールでいいよね?」
「うん、じゃあ生4つで!」
飲み物が来るまでの間、自己紹介をした。
そして、ビールがテーブルへと運ばれてきた。
「乾杯!ぷはーっ、やっぱり生は最高だね。ゴムは嫌だ!」
「もう、沢村さんたら、テレビで観るより変態ですね」
「それ、けなしてる?ごめん、俺にとっては最高のビールのアテだよ」
序盤からかなり飛ばしている沢村さんは、僕の瞳には神のように映った。
そこからは本当に神の領域。
女性陣からの矢継ぎ早の質問攻めに対しても、果敢に攻めの答えで返していった。
「沢村さんて、休日は何して過ごしてるの?」
「粘土で女体像作ってる」
「沢村さんて、趣味は何?」
「粘土で女体像作ること」
「沢村さんて、宝物は何?」
「粘土で作った女体像」
全て同じ答えだ。
下ネタOKのコンパなら敵なし。
まさに神。
かなりの酒が入っていたせいか、話題は何故かニート問題へ。
僕をよそに真面目に下ネタ抜きで話す3人。
何でも、女性陣の弟が全員ニートで、本当に深刻そうに話している雰囲気。
沢村さんの「ニートはくずだ!まぁ、フランス書院文庫で官能小説書けるくらいの才能があったら認めてやるよ」発言により、険悪なムードに。
楽しいはずのコンパがあらぬ方向に向かっていたので、僕はうまいこと言ってこの場を盛り直そうとした。
「でも、スッチーって空飛んでるから、ある意味フリーターより地に足が付いてない職業ですよね?」
女性陣はくすくすと笑ってくれた。
よし、空気が変わった。
と思ったのも束の間、沢村さんは鬼の形相で僕に日本酒をぶっかけた。
びしょ濡れの僕に向かって、沢村さんが激高した。
「芸能人の方が地に足付いてねぇよ!常に綱渡りなんだよ!バラエティに出たのも金の為だよ!キャラ偽ってんだよ!本当は下ネタなんか嫌いなんだよ!休日の過ごし方だぁっ?!家でガンプラ作ってるよ!ばかやろう!!」
沢村さんの頬に一筋の涙が伝う。
僕も女性陣も言葉を失った。
女性陣は完全に引いている…。
沢村さんはまだ泣いている。
誰も言葉を発せぬまま、ただ時間だけが過ぎていく。
店員も只ならぬ空気に慄いたのか、「空いた皿をお下げしてもよろしいでしょうか?」という短い言葉を7回も噛んだ。
よし、沢村さんを家へ帰してあげよう。
僕の今課せられている使命は彼女を作ることじゃなく、傷ついた沢村さんを家に帰してあげることだ。
「ごめん、今日はこんなことになってしまって…。この埋め合わせはいつかまた必ず!本当ごめんね。これに懲りずまた合コンしようね。申し訳ないけど、お先に。それじゃ、またね」
僕は女性陣に平謝りして、沢村さんをおぶって魚民を後にした。
沢村さんをおぶったまま、帰り道を急いだ。
「沢村さん、すみません。僕があんなこと言ったから」
「…………」
「また飲みに行きましょう」
「…………」
「家に帰ってザクでも作りましょう」
「……グフだ」
知るかよ!
その後、無性にイラッときた僕は眠りに落ちた沢村さんを中央分離帯に降ろし、和民で飲みなおした。
ザクを作りながら。
