自選曲集-23/中村椋
1. 下木未上君の転落事故について
2. 影女
3. 放課後パリサイド
4. 頭脳室
5. 雨女
6. 詩
7. 真冬の朝の現
8. 赤子塚
9. 鈴蘭
10. 夜はまほろば
ヴィジュアル系シンガーソングライター・中村椋による第十三曲集。
育休により、ライブ活動休止中の彼。
遂にヴィジュアル系にもダイバーシティの波が、と一部で話題になりましたが、その間に制作された暫定的なベストアルバムです。
オフィシャル通販での取り扱いとなりますが、本作については、ストリーミング/ダウンロードにも対応。
各種、サブスクリプションサービスでも聴くことができ、ベスト盤らしく、最近興味を持ったリスナーが手を伸ばしやすい仕様となっていますね。
過去の楽曲をまとめただけだろう、と思っていると痛い目に合うのが本作。
選曲は、なんとも大胆と言え、比較的最近の作品から代表曲的な楽曲をセレクトして、ライブの予習にぴったりな前半と、初期の楽曲を再提示する後半で、明確に分断しているのですよ。
椋さんは、発表してきた楽曲を発表順にナンバリングしているのですが、前半はすべて200番台以降、後半はすべて二桁番台。
中間をカットして、音楽性の変遷を、グラデーションではなく突然変異的に見せているのが面白いなと。
なお、後半の5曲はすべてリアレンジのうえ再録しており、音質やスキル面で差異が出ることは排除。
ルーツとなった楽曲たちの衝撃を、純粋に音楽性の面だけで与えていて、とてもワクワクさせられます。
MUCCからの影響が強く出ている「赤子塚」は、あえてそのニュアンスを伸ばしたアレンジにしているし、「詩」などは、メロディの鋭さにMIRAGEの要素を感じさせる。
正統派のヴィジュアル系の流れを、現在の椋さんが料理することで、とても可能性が広がって見えました。
王道からは外すような「鈴蘭」や、サブカル色を強めた「夜はまほろば」みたいな楽曲も当時から存在していたのか、という発見もあり、中村椋新規にはマストアイテムと言えるのでは。
CDで購入して、歌詞カードに目を通すと、おまけの音源がダウンロードできる仕掛けもあり。
これを聴くに、相当な古参ファンであっても、リアレンジで過去の楽曲がどう成長したのか、確認する価値はあるのでしょう。
テクノ寄りかと思いきや、生々しいギターロックも登場して、結局のところ、誰もが聴くべき1枚となるのです。
<過去の中村椋に関するレビュー>