Panopticon/kehre.
1. 春の奈落
2. 風葬のドーム
3. Panopticon
年内予定のアルバムからの先行配信となるkehre.のデジタルシングル。
ライブ感がある、というとおそらく誤解を招くでしょう。
一般的にライブ感がある音楽で想像するのは、盛り上がることを前提としたアッパーチューンであるだろうから。
その意味では、どの楽曲もミディアムテンポで難解さがあり、ライブでの盛り上がりは二の次であろう本作はライブ感がないことになってしまうのだけれど、イヤホンで外界の音を遮断して聴いたときに浮かんだのは、ライブの映像だったのですよ。
吐息まで聞こえてきそうな生々しいヴォーカリゼーションに、その難解さ故に漂うヒリつくような緊張感。
聞き手としてもハラハラしてしまうのだけれど、その心配をよそに完璧な演奏を見せつけることでステージとオーディエンスの間に、神聖な壁が出来上がるあの感覚が、疑似体験できました。
変拍子を多用して、春の心のざわめきを不穏さとして表現した「春の奈落」、先行してカセットテープが販売された歌モノ「風葬のドーム」、表題曲となる「Panopticon」は、不規則が連なることで1曲の壮大な楽曲を構成。
どういう頭の使い方をしたら、このようなアウトプットに至るのだろう、というアート性すら感じます。
先行シングルとして、ここまでキャッチー性を排除できる胆力も然ることながら、だからこそkehre.の音楽を聴きたくなるのだよな、という選民思想を煽るバランスが絶妙。
中毒性はひたすらに高い3曲ですね。
廣川政樹さんによるアートワークも印象的。
これを土台に出来上がるアルバムは、どんなものになるのだろう。
深く深く潜っていくのか、あるいはここから浮かび上がっていくのか、いずれにしても名盤の予感を漂わせる作品です。
<過去のkehre.に関するレビュー>