lost feathers/kehre.
1. lost feathers
2. the heart pulses on silent film
3. falling to nostalgia
4. 雨裂の狂い蝉
5. 真夏の焦燥
lost flowers/kehre.
1. underground
2. luna moth
3. abyss
4. holy
5. lost flowers
2枚同時にリリースされたkehre.のミニアルバム。
それぞれ5曲ずつ、計10曲が収録されています。
Vo.kara’とGt.倫奈により、2003年に前身となるbroken englishを結成。
2004年にkehre.と名称を改めて、ゆるやかな活動を継続していましたが、ここにきてアルバム作品が2枚も届けられるとは。
Ba.hase ryuji、Dr.lucky-yのフルメンバーが揃った現体制として初のCD。
結成当初は打ち込みを主体としたユニットだったのが嘘のように、テクニカルな演奏が、バンドである意義を主張するかのごとく化学反応を生み出していました。
「lost feathers」は、幻想的であり、退廃的。
あるいは、白と黒。
色味としては相反するようで、実は隣り合わせなのだなと思わせるほどに共存しているのですよ。
激しさを帯びたダークチューンかと思えば、光が浮かぶ場面もあり、それが極端なメリハリではなく、グラデーションとして描かれている感覚。
1曲目の表題曲から複雑性が高くて、一筋縄ではいかないものの、それでも十分に耳から体にじんわりと沁み込む心地良さに、心が浄化されていきます。
「the heart pulses on silent film」や「falling to nostalgia」などは、過去の楽曲のリテイクになるのかな。
時系列の異なる2曲が並ぶことで、音楽性の変遷などもうかがえるのですが、一方で、kehre.としての変わらない軸も見えてくるから面白いものです。
後半に進むにつれて、歌心が高まっていく流れもたまらない。
ラストに据えられた「真夏の焦燥」は、濃厚な世界観と美しいメロディが、7分弱という尺の長さを感じさせないほどに感情を揺さぶってくる集大成的なナンバー。
音に身を任せて、どっぷりと浸るほかありません。
もう1枚の「lost flowers」は、表題曲が最後に置かれているので、2枚続けてフルアルバムとして聴いてみるのもすわりが良さそう。
こちらは、不協和音を取り込んで、ざわざわと掻き立てる「luna moth」をアクセントに、kehre.を象徴とする楽曲をじっくり聴かせる印象です。
「luna moth」以外の4曲は、いずれも6分超。
更に、そのうちの2曲は7分超という大ボリュームで、現代のトレンドから逆行しているとも言える空気感を大事にした楽曲構成は、むしろゆるぎない音楽への確信、および異質な個性として際立っているのでは。
リードトラックとしてMVも制作されている「underground」から、もうノックアウトですよね。
玄人好みのマニアックなフレーズを巧みに繰り出しつつ、全体観としては耳馴染みが良いと思える仕上がりに。
「abyss」や「holy」とともに、リテイクされた楽曲になるのですが、いずれも経験が還元されていることがはっきりと理解できる展開。
飽きさせることなくテクニックな表現力で魅せてくれました。
そして、kara’さんの存在感を最大限に引き立てる「lost flowers」でクロージング。
これだけの濃度で作り込まれた作品なのに、聴き終わってしまうと名残惜しい気持ちになるから不思議なものです。
深く沈み込みたいときは2枚まとめて。
気軽に心地良さを求めたいときは1枚ずつ。
世界観が圧倒的だからこそ、ともすれば聴くのに覚悟がいることを踏まえれば、2枚に分けたのは、気分によって聴き方を変えることができる効果もあったりして。