ドラマトゥルギー/梟
1. 「バケモノの私には」
2. 愚か
3. ガラスの靴
4. 泥棒のマーチ
5. 転がるROCKにコケは生えねぇ
6. 「未定」
結成からおよそ１年で、早くも３枚目となる梟のミニアルバム。
「ドラマトゥルギー」というタイトルには、劇作術や演出論という意味がありますが、現代では転じて、人間が自分の役割を認識し、それを演じることでコミュニケーションを成立させているという社会的概念にもなっており、本作のテーマを踏まえると、後者の意味合いが強いのでしょうか。
それぞれ、異なる境遇にある６人が、それぞれの世界で、それぞれの物語を演じているという全６曲。
これを、ハロウィンシーズンにぶつけてくるのが、なんとも戦略的ですね。
リードトラックである「バケモノの私には」で、演じるという意味を少し誤解させて作品に誘導。
アルバムに忍ばせたメッセージを伝えるための導線にしていました。
ギターレスのピアノロックという編成が馴染んできた感もあり、バンド感のある楽曲もしっくりくるようになってきたな、と。
メロディアスな要素はピアノで、ロック色の強さはベースで。
先入観による違和感が大きくなりすぎないように工夫を入れつつ、あくまで、ギターの穴を埋めるのではなく、武器を洗練させて尖らせたという印象。
音が混じらず、ダイレクトに繊細なフレーズやグルーヴィーなベースを堪能できるのは、まだまだ新鮮なのですよ。
季節感のあるゴシックメルヘンな雰囲気を彼らの世界観に落とし込んだ「バケモノの私には」、ヘヴィーでダウナーな「愚か」、独特なリズム感が大人びたダンスチューンとも言える「ガラスの靴」、ジャジーに攻める「泥棒のマーチ」ときて、がっつり疾走ロックに挑戦した「転がるROCKにコケは生えねぇ」、しっとりとピアノを響かせる「未定」と、終盤は動と静のギャップで魅せる。
どの楽曲にも癖があり、独立性が高い一方で、そんなにバラバラという印象は受けず、異なる個性の楽曲を、梟というパブリックイメージの元に集めたコンセプト作品、といった心持ち。
ここにきて、彼らがやりたい音楽と、リスナーが聴きたい音楽がすり合ってきた感覚です。
３作中、もっともとっつきやすいのでは。
常に最高傑作を更新しているという意味でも、底知れなさを感じさせる１枚です。