神ヲ喰ラフ者/ARcaDia
1. 神ヲ喰ラフ者
2. MOON xxxx (2021新録)
2020年に再始動となった広島バンド、ARcaDiaのデモCD-R。
新体制となっての新曲「神ヲ喰ラフ者」と、解散前の体制での楽曲「MOON xxxx」を収録。
当時と現在を、同じ条件で聴き比べることができる作品となっており、変わらない部分と成長した部分が可視化されたといったところでしょうか。
「MOON xxxx」は、1999年に制作されたデモ音源に収録されていた楽曲を、現メンバーで新録したもの。
復活後にRemaster CD-Rとして再リリースされていましたが、晴れて、現在進行形の楽曲になりましたね。
作曲者の正幻さんが再始動後のメンバーとして名を連ねていない中でも、楽曲が生き続けて進化を続けており、復活を遂げたARcaDiaというバンドの矜持を感じさせるのでは。
さて、表題曲となる「神ヲ喰ラフ者」は、バンドサウンドを基調とした疾走チューンに仕上がっています。
神秘的なイントロを経て、サビからスタートする導入の段階でインパクトは抜群。
最初から最後までスピーディーに展開される一方で、メロディアスなナンバーという印象を与えており、勢いのままに流れてしまうことなく、記憶にこびりつくのですよ。
新たな代表曲、という評判もこれなら納得。
衝動性を剥き出しにしたテンションの高さは、バンドサウンドの醍醐味を凝縮していますし、カオティックなシャウトパートも挿入のタイミングが絶妙で、構成上のメリハリとなっていました。
カップリングの「MOON xxxx」は、正攻法の新緑といったところ。
アレンジの方向性やスピード感など、当時のメンバーへのリスペクトを残しつつ、ガチャガチャ音がぶつかっていた部分を整理して、全体的にすっきりと。
当時のくぐもった音質だからこその不気味さ、気持ち悪さというのも味ではありましたが、本来のメロディ性や展開の妙に耳を傾けられるようになったのは、聴き比べの観点からも大きかったのではないかと。
20年以上の時を経て、楽曲の新たな魅力に気付くというのも、そうそう体験できない感覚でしょう。
本作も扱い上はデモ音源ということで、進化の余地はまだ残しているということなのかもしれません。
ただし、荒々しい息遣いまでがパッケージされているような本作が持つパッションは、丁寧に作り込むことで更新できるものでもなく、今これを聴かない理由にはならないはず。
やりたい音楽がはっきりしているな、と唸らされる1枚です。
<過去のARcaDiaに関するレビュー>