鬼のような犬/k@mikaze
1. 咲いた花
2. チェリーと兵隊
現在ではsukekiyoのベーシストとして活動中のYUCHIさんが在籍していたk@mikaze。
2001年にリリースされた1stデモテープです。
orivia、SKULL、kannivalismのメンバーによる新バンドとして注目を集めた彼ら。
1st Press、限定2,000本が即日完売。
「鬼のような犬2」として、ジャケット等が差し替えられた2nd Pressも発表されるなど、瞬間風速的に人気を集めました。
本作に収録されたのは、「咲いた花」と「チェリーと兵隊」の2曲。
同時期に発売したオムニバスに「犬」という楽曲を提供していますが、「鬼のような犬」というタイトルの本作には未収録という。
「咲いた花」は、後期oriviaを彷彿とさせるポップロック。
アメリカンロックやパンクをなぞりつつ、アップテンポのキャッチーなロックサウンドを展開していきます。
k@mikazeは、まだV系シーンにミクスチャーが定着する前の早い段階で、ヒップホップ由来の縦ノリを持ち込んだバンドとして知られていますが、この楽曲については、むしろストレートさが際立っていると言えるでしょう。
時代的背景を踏まえると、この頃はヴィジュアル系からヒップホップにJ-POPシーンが塗り替えられてしまった時期。
V系リスナーには、ヒップホップアレルギーが強く残っていたわけで、彼らの音楽性も賛否両論だったのですが、1曲目にこれを持ってきたことで、クッションになっていたのかと思われます。
実際、全体の中では少し浮いている気さえするこの「咲いた花」が、代表曲になっていたのですよね。
もう1曲の「チェリーと兵隊」は、k@mikazeの本質を落とし込んで。
ミディアムテンポで重たいフレーズを繰り出し、掛け合いなどでノリの良さをアピール。
サビでは、ある程度キャッチーに開けるのですが、その後の極端化を考えると、十分にミクスチャー志向が潜んでいることは窺い知れる。
メロディの良さもあって、「咲いた花」とのバランスを勘案、カップリングとして求められるタイプの楽曲でした。
作品としては、その後にリリースされるシングルのほうが割り切ってミクスチャー路線に突き進んだことにより、キレがある印象。
個性、インパクトの面では、本作はやや弱いと言わざるを得ないでしょうか。
ただし、ある種、シーンに気を使ったような楽曲構成が新鮮である、とも捉えられなくもないし、これがなかったら次も聴こうとは思わなかったリスナーもいたかもしれない。
その意味では、本作の制作も無駄ではなかったはず。
当時よりも、今の方が活躍できる土壌がありそう、なんて考えてしまいます。
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音楽性としては、もはや別物。
k@mikazeの時代には、どうもぎこちなかったV系シーンにおけるミクスチャーが、15年程度でここまで進化するものかと。
お洒落とも言えるほどに洗練されており、ヴィジュアル系とは必ずしも音楽ジャンルではないのだな、と改めて感じずにはいられません。
もちろん、これはk@mikazeを否定したいのではなく、彼らが先陣を切って風穴を開けようとしたことが重要であるわけで。
少しずつV系リスナーの耳を柔軟にしていった先に今があるということなのですよね。
<過去のk@mikazeに関するレビュー>