標本/heidi.
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標本 [TYPE-B]
3,300円
Amazon |
1. 一瞥
2. HALATION
3. Ghost
4. 虚
5. ユートピア
6. 水槽
7. 磔
8. Parasite
9. がらんどう
10. エターナル
11. 燭
12. Milky way
会場限定シングル「HALATION」を含む、heidi.の9thアルバム。
TYPE-AにはDVDが付属、TYPE-Bにはボーナストラックとして「Milky way」が追加収録されています。
前作「ケセラセラ」にて、原点となるノスタルジックなメロディへの回帰を果たしつつ、現代的なサウンドへのブラッシュアップを実現。
EDMとレトロ歌謡との融合について、heidi.としての解を見つけたといったところです。
本作は、そこで身に着けた感覚をベースに、意図的ではなく、自然体でアルバムを構築したというイメージ。
本質的には「ケセラセラ」の思想を踏襲しているのですが、レトロの解釈を拡大しながら、更に思い切ったアプローチも見られますね。
リードトラックとなる「一瞥」から、序盤は勢いのある楽曲を立て続けに。
この「一瞥」は、イントロでのダンサブルなシンセのサウンドが特徴的。
デジタルへの移行を端的に示している一方で、生々しく泥臭いheidi.らしさも兼ね備えていて、本作の醍醐味を体現していると言えるでしょう。
疾走感のあるシングル曲「HALATION」を噛ませて、「Ghost」は、そこにスピード感も加えた形。
コーラスとの掛け合いをメインとしたライブ感のあるサビと、情報量多めのデジタルサウンドとのギャップが、案外ハマっていて、今のheidi.の王道とは、もしかしたらこんなスタイルなのかもしれない。
そんな風に認識までアップデートしてしまうパワーがありました。
また、「水槽」、「磔」の、ひたすらアナログでどんよりと重苦しく進行するパートもあって、何かひとつの方法論に縛られていないのが、自然体だと感じる所以。
戻ったり、進んだり、を繰り返しながら、トータル的に前を向いていれば良し。
このスタンスが心地良いな、と思えるのですよ。
言ってしまえば、初期の彼らの音楽性をなぞって"らしい"曲を作ったとして、マンネリ感が生じてしまうのも事実。
ここ数年、軸を少しずつ横にスライドしていった成果が、ようやく実を結んだといったところでしょう。
アルバムとしてもっとも盛り上がるタイミングで持ってこられる「がらんどう」、「エターナル」も、今の彼らの全力投球感がありました。
サウンドとしては、確実に新しいものに進化しているのだけれど、時折耳に入ってくる、ノスタルジックなリフの数々。
クロージングに向けて、良い仕事をしています。
なお、ボーナストラックである「Milky way」は、パンキッシュなファストチューン。
キャッチーさ、ポップさも兼ね備えつつ、スピードで言えば本作中最速。
これはこれで、ライブ映えしそうですな。
確かに形は変わってきているけれど、だからこそ、途中で離脱してしまったリスナーにも聴いてほしい1枚。
こういう形の変化であれば、進化と呼んでもいいのでは。
⇒ この作品を聴いた人はこんな作品もおススメ!
THE END OF THE WORLD / MUCC
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THE END OF THE WORLD
2,850円
Amazon |
詳細なレビューは<こちら>
レトロとダンスロックを高いレベルで融合させた第一人者としては、やはりMUCCを挙げざるを得ません。
やりたい放題、自然体でやりつつも、それが共通認識の上に成立しているサウンド。
自由奔放で規則性がないのに、オリジナリティに溢れているのですよね。
聴く作品によって印象が異なる彼らですが、近時の音楽性を踏まえるうえでは、「THE END OF THE WORLD」あたりがちょうどよいかと。
音楽性の振れ幅が大きいMUCCと、マイナーチェンジを積み重ねてきたheidi.。
方法論の異なるふたつのバンドに、親和性を見出せるというのも面白いものです。
<過去のheidi.に関するレビュー>
ヒューマン
アルファ
シックスセンス
閃光メロウ
パノラマ
慟哭