INFINITUM / sukekiyo | 安眠妨害水族館

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INFINITUM/sukekiyo

INFINITUM INFINITUM
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1. 偶像モラトリアム

2. 猥雑

3. 沙羅螺

4. kisses

5. dorothy

6. アナタヨリウエ

7. 君は剥き出し

8. 本能お断り

9. こうも違うモノなのか、要するに

10. 濡羽色

11. ただ、まだ、私。

12. 憂染

13. 漂白フレーバー

 

sukekiyoのフルレンスとしては3作目となる音源集。

限定販売された音源映像集に続く形で、一般流通盤としてリリースされました。

 

ここ最近は、総合的な作品集という形態にこだわってきた彼らでしたが、過去作品も含めて、一般流通盤の販売を開始。

手頃な価格で、あるいは近くのCDショップで作品を手に取れるようになったのは、間口を広げる意味では重要でしょう。

DIR EN GREYのVo.京さんによるソロプロジェクトという先行的なイメージが薄れ、sukekiyoとしてのブランド力がしっかり根付いたからこその判断かと思われ、流通を意識したから難解さが失われたという懸念はなさそう。

間口を広げると言いつつ、展開される音楽性はマニアックそのものというのが、実に彼ららしいです。

 

J-POPのセオリーに囚われない、アーティスティックな楽曲構成は相変わらず。

変態的な「ADORATIO」の流れを踏襲している一方で、「IMMORTALIS」で見せた浮遊感への回帰もあって、全体的にはそれらを引き連れつつ一歩前に進んだという印象ですね。

難解なものがくる、変態性の高いものがくる、とわかっていても、大きな衝撃を受けてしまうアイディアの数々。

たとえば、ゴス、インダストリアル色が強い「偶像モラトリアム」でのスタートの時点で、まさかピコピコ歌謡曲「dorothy」が飛び出すだなんて想像もできないじゃない。

 

ひとつひとつは、現代的なEDMだったり、キャッチーな歌謡メロディだったり、必ずしも複雑ではなかったり。

だけど、これとこれを組み合わせるのか、という誰も思いついていなかったアンサンブルを奏でることによって、気持ちの悪い異質なサウンドを実現。

ハードさを際立たせた「こうも違うモノなのか、要するに」と、繊細でメロディアスなミディアムバラード「濡羽色」を並べてギャップを強調する配置や、歌モノ的な「ただ、まだ、私。」、「憂染」で美しく終わらせることだってできたのに、最後に不気味な「漂白フレーバー」で後味をわざと汚すクロージングなども含めて、俯瞰的にやりたいことを落とし込んでいるのですよね。

このセンスこそがsukekiyoの強みであり、その出し抜き方を前作以上に振り切ってやった結果が、「INFINITUM」の魅力に繋がっていると思うのですよ。

 

なんというか、この音楽性で、聴きやすいと思わせてしまうのが物凄い。

演奏隊による規則的な不規則のバランス感覚が絶妙で、たくさんの化学反応を生み出している。

また、そこに絡みつく狂気を纏った京さんの歌声は、それらに命を吹き込んでいる。

打ち込みが果たす役割が増えた感はあるものの、バンドである意義は、むしろ深まったと言えました。
 
こうなってくると、限定盤に付属しているコラボレーションCDも聴きたくなってくる。
さち (黒色すみれ)、NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)、BAKI (GASTUNK)、森重樹一 (ZIGGY)、 EXILE SHOKICHIといった錚々たる面々が参加。
このやきもきも、CDのみの流通盤が出たからこそなのですが、次回作は限定盤で、と思っている時点で、間口を広げる流通盤を出した意味はあったのかな、と。

 

<過去のsukekiyoに関するレビュー>

ADORATIO

耳ゾゾ

VITIUM
IMMORTALIS