VITIUM / sukekiyo | 安眠妨害水族館

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VITIUM(初回生産限定盤)/sukekiyo

¥3,240
Amazon.co.jp

DISC 1
1. leather field
2. dunes
3. dot
4. foster mother
5. 雨上がりの優詩
6. maniera
7. 白露
8. celeste
9. focus

DISC2
1. 雨上がりの優詩 (Collaboration with Toshl)
2. focus (Collaboration with 三上博史)
3. elisabeth addict (Remixed by Renholder)
4. latour (Collaboration with Wes Borland)

DIR EN GREYのVo.京さんによるソロプロジェクトを母体として結成されたsukekiyoの1stミニアルバム。
前作「IMMORTALIS」から1年も経たない中で、サイドプロジェクトでは終わらせないという意思表示的なリリースとなりました。

ミニアルバムの定義を疑いたくなる、9曲入り。
初回生産限定盤には、これにボーナスディスクも付くのだから、実質的にはフルアルバムと言えるのでしょう。
なお、通販限定で発売された限定盤では、ライブトラックが追加収録されていたり、Blu-rayが付属されたり、更に豪華な仕様となっています。

「IMMORTALIS」では、まだ、"京のソロプロジェクト"という意識を覆せてはいなかったと思う。
それは、繊細なメロディにしても、圧倒的な表現力にしても、前に出ているのは京さんの強みそのものであったからだろう。
もちろん、DIR EN GREYの京さんがやっているから価値観を受け入れやすい部分があったのも事実で、ステップ感としては妥当なものであったと評価できるのだけれど、本作は、そこから一歩、sukekiyoとは何ぞや、という領域に踏み出した印象でした。

ヘヴィでタイトな「leather field」、それを踏まえて、マニアックに展開される「dunes」という序盤の構成が象徴的なのだけれど、雑な言い方をすれば、"バンド感"が強まった。
雰囲気作りに徹していた楽器隊が、アーティストとして主張するようになり、ときには京さんを喰ってしまおうとするのかというくらいに前に出る。
前作で、ぼんやりと"何か凄いもの"として浮かび上がっていた音楽が、より実態的に迫ってくるのです。

もっとも、そこはsukekiyoなので、世界観よりもライブのノリを重視するようなことにはなっておらず、それが意味するのは、"sukekiyoとして表現すべきもの"の意識共有が進んだということ。
この作品を持って、sukekiyoは、ソロプロジェクトでも、サイドプロジェクトでもない、独立したオリジナリティを持ったバンドとなった、と言える気がしますね。

また、彼らにおいて重要なファクターは、和の感覚。
ベタベタな歌謡曲メロディを持ってきているわけではないのだけれど、紡がれるメロディからは、四季のある国、日本ならではの情緒を感じるのだ。
「雨上がりの優詩」、「focus」の2曲は、特にその移り変わる色彩を鮮やかに映し出しており、様々にアプローチを変える京さんの歌声とともに、すっと体に入り込む。
決してわかりやすい、シンプルさのある楽曲ではないのだけれど、難解さが軽減しているのは、細胞レベルで染み付いている感覚の共有によるものなのかもしれません。

ボーナスディスクでは、X JAPANのToshiさんや、俳優の三上博史さんらとのコラボレーションを実現。
ゲストボーカルが歌う、というのも聴きどころなのは言うまでもないのですが、Toshiさんとのコラボでは低音パートを、三上博史さんとのコラボでは高音パートを担当する京さんの柔軟さも、実は聴き逃してはいけないポイントですな。

所謂売れ線ではないし、アンビエントを取り入れた音楽性は十分に高尚ではあるのだけれど、そこまで上級者限定の音楽になっていないのも、センスがなせる業。
「IMMORTALIS」よりも引き締まって、より具体的に展開される世界観は、J-POPシーンでシングルに出来そうな楽曲はなくとも、リスナーの心にしっかりと刺さること請け合いです。

<過去のsukekiyoに関するレビュー>
IMMORTALIS