meltbeat/sleepyhead
meltbeat
1,944円
Amazon |
1. phase 2
2. meltbeat
3. heartbreaker
4. akubi_girl
ex-SuGの武瑠さんによる"3D音楽プロジェクト"、sleepyhead。
本作は、"melt=溶ける"をテーマに制作された2nd EPです。
音楽だけでなく、映像やファッションなど、媒体にこだわらずに自らの表現方法を模索する彼。
ジャンルレスの最先端の立ち位置をとっているため、音楽性としては主流とは程遠い路線に到達していますが、ある種、今のシーンでもっともヴィジュアル系の原点的な活動形態をとっているのは、このsleepyheadなのではないでしょうか。
ダンスビートと切ないメロディとの融合を、改めてこのプロジェクトの本流に置くという意図もあるようで。
1st EPとなった「NIGHTMARE SWAP」では、他者の発想を取り込むコラボレーションに重きを置いていたこともあり、そこからの続きというよりも、デビュー盤となった「DRIPPING」からのブラシュアップの側面が強いですね。
どこが強化されたかと言えば、トラックメーク。
歌が入っていなくても格好良いものとなるよう練られていて、甘いボーカルの裏にあるトラックに耳を傾けていると、チャラく聴こえていた部分が実は毒々しさも帯びていたり、深みを増した感があるのですよ。
ボーカリストとして10年以上活動してきたバンドマンのソロ活動であるにも関わらず、進化の基準がそこにあるというのが興味深いです。
本作の意味合いを端的に伝える「phase 2」を噛ませて、リードトラックとなる「meltbeat」から、メロディの良さはそのままに、トラックが進化したというのがよくわかる。
特にギターで参加したDURANさんが良い味を出していて、強い主張はないのだけれど、EDMの中で硬派なギターが生き残る道を教えてくれるよう。
ギタリストとのコラボレーションがあるからバンド色を強めに、とならないのが、既存概念にとらわれないsleepyhead。
「NIGHTMARE SWAP」での経験が礎となって、企画重視ではなく、参加メンバーが同じゴールに向かっていく"秘密結社"としてのスタンスが活きていました。
「heartbreaker」は、ダークさをまぶして音と歌との垣根をなくし、それぞれを溶け合わせるアプローチ。
もう一方の「akubi_girl」はメロディを最大限に立たせたR&B風のトラックメークとなっており、世界観で"溶ける"を表現しています。
いずれにしてもバンド感は皆無といっていいぐらいで、シーンの中では極めて異質。
ただし、最先端を求め続けた結果、ユーロビート全盛期のJ-POPを、オルタナロックやR&Bとクロスオーバーさせた音楽性に行き着いたため、耳馴染みは良いという絶妙なバランス感覚を発揮していました。
ここで前衛的で難解なサウンドに傾向しないあたりが、伝わることを重要視する武瑠さんらしいな、と。
率直な感想として、ここまでの活動が企画性に富んだ派手なものだっただけに、やや地味な印象はあります。
とはいえ、あくまで表現者としては企画で得たものを正しくフィードバックする場もあるべきであり、それにあたるのがこのEPであると解釈すれば納得。
目新しさよりも自己成長を選んだsleepyheadの、現時点での成果とも言える1枚です。
<過去のsleepyheadに関するレビュー>