失楽園/シェルミィ
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失楽園
1,620円
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1. ヒューマンゲート
2. 苺状自己顕示欲
3. 「ぐさり。」
4. アダルトクイーンの狡猾
5. 片付けられない女
6. ハピネス
シェルミィの4thミニアルバム。
2018年にリリースしたミニアルバム三部作の最終章となる1枚です。
1年間で3枚のミニアルバムを送り込むハイペースな活動を続けている彼ら。
第一弾の「少女地獄」ではメンバーの"死"までを描き、第二弾の「うずまき」では、"妖怪"に変化するという展開を見せていたのですが、第三弾となる本作では、"転生"がテーマとなっているようで。
まさに、新機軸となっていきそうなサウンドも見えてきました。
リードトラックの「ヒューマンゲート」は、三部作の集大成的なイメージ。
「少女地獄」で確立したシェルミィの王道感を示しつつ、「うずまき」でチャレンジした和風なアレンジも踏襲。
そのうえで、今やるべきことを整理してテーマ性を強めたといったところでしょうか。
どこか懐かしいメロディがしっくりくる、従来の音楽性が好きな層には間違いなく刺さるであろう1曲です。
ただし、門をくぐれば生まれ変わった後の世界。
バラエティに富んだラインナップを揃えており、その中には従来には見られなかったアプローチも多分に存在していました。
インパクトがあるフレーズと、メンヘラ心理に寄り添った歌詞が実に彼ららしい「苺状自己顕示欲」をジャブ的に送り込むと、同期を多用した現代的なサウンドがシリアスに迫る「ぐさり。」へ。
モダンなサウンドと、猟奇的な歌詞とのギャップで驚かせると、思いっきりEDM風のアレンジを取り入れた「アダルトクイーンの狡猾」や、ライブ感に振り切ったような「片付けられない女」、極めつけはストレートなロックチューン「ハピネス」と、手を変え品を変え、マンネリを感じるどころか、常に最新という意識を強く与える楽曲が続きます。
「少女地獄」も近い感触はありましたが、本当に彼らは魅せ方が上手い。
"飽きさせない"と"統一感がない"は紙一重。
ここまで色々なパターンの楽曲があると、かえってバランスをとるのが難しくなってしまうのだけれど、コンセプトを一本入れることによって、バラバラなことに必然性を与えてしまうのだ。
もちろん、変な偏りが出ないように、という十分な考慮があるからこそ、この絶妙なバランスを維持できるのは言うまでもなく。
ただ歌詞に共感する、曲の良さに惹かれる、というだけでなく、考察する面白さを提供できているのは強みですよね。
これにて、一連の流れはひと段落。
とはいえ、ストーリーとしては大きな意味では繋がっていくようで、今後の展開にも期待できそう。
今から聴いても遅くはない、2018年、もっとも成長を見せたバンドのひとつです。
<過去のシェルミィに関するレビュー>