少女地獄 / シェルミィ | 安眠妨害水族館

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少女地獄/シェルミィ

 

1. 少女地獄

2. 絢奪り

3. 可奈縛り

4. ハルカ、

5. 美雪

6. 白百合呼吸困難

 

心の闇を浮き彫りにするシェルミィの2ndミニアルバム。

"私たちはみんな手を繋ぎながら死んでいく"をテーマにしたコンセプト作品となっています。

 

表題曲である「少女地獄」にて自殺を選ぶ5人の少女、絢、可奈、ハルカ、美雪、百合。

その後の5曲は、タイトルにそれぞれの少女の名前が言葉遊び的に当てはめられていて、5人の背景を深掘りする楽曲となっている。

収録された楽曲の方向性はバラバラなのですが、オムニバス形式のストーリーを踏まえれば、そのほうがしっくりくる気もしますね。

 

「少女地獄」は、淡々と事実を客観的に語っているようでもあり、誰かの独白のようでもあり。

途中まではストレートに進行していくのだけれど、サビで突如として三拍子にテンポチェンジするのが面白い。

シェルミィらしくダウナーな倦怠感を纏っており、これをメインに据えてくるのが、彼ららしいなと。

 

続く「絢奪り」は、レトロなシンセと激しく攻めるギターのリフが特徴的。

さらっと聴く限り、盛り上がるノリ重視のナンバーなのだけれど、こちらもテンポチェンジが織り込まれていたり、意表を突く展開が多くて、実はマニアックに仕上がっています。

「可奈縛り」は、重苦しい雰囲気のあるミディアムナンバー。

終盤に進むにつれて開けていき、畳みかけるように感情が高ぶっていくのがカタルシスを生み出していました。

 

歌謡曲テイストを強めて、背伸びした夜の街を表現する「ハルカ、」や、真っ白な情景が浮かぶ切ないメロディアスチューン「美雪」も、シングルとして切れそうなクオリティ。

彼らから、「美雪」のような繊細でロマンティックな楽曲が飛び出すとは思わなかったのだけれど、きちんと裏がありそうで、ついつい深読みしたくなりますな。

ラストはダンサブルな「白百合呼吸困難」で、1曲としてタイプが被る楽曲がないまま終幕。

あえてチープな音にしたと思われる同期に、ヘヴィーなテーマに反して軽すぎるノリが、良い味を出しています。

 

さて、本作の肝は、なんといってもストーリーの繋がり。

前作「ストロードール」から世界観は地続きということで、"百合"の復讐劇がテーマとなっているようだが、結局、百合も自殺してしまう。

そもそも自殺の理由も様々であり、乾いた独白に冷めた雰囲気はあるものの、直接的に復讐に繋がるワーディングは出てきません。

この不整合な設定を解消するのが、オフィシャルで公開されている「少女地獄」のMV。

これは是非、試聴用としてではなく、一度CDで聴いてみてから、答え合わせのような感覚で見てほしいです。

モチーフがあからさまなので疑わなかったけれど、確かに一言もそうだとは語られてなかったのだな…

 

個々の楽曲の良さも然ることながら、コンセプトが効いている。

アルバムとして聴く意味がある全6曲。

飽和しつつあるメンヘラ系バンドの中で、彼らがぐんぐん頭角を現している理由が、これを聴けばはっきりするのではないかと。

 

<過去のシェルミィに関するレビュー>

ぼくらの残酷激情

平成メンヘラセオリー