ぼくらの残酷激情/シェルミィ
1. 哀しい日はいつも雨
2. ストロードール
3. 悪い大人
4. ファッションマイスリー
5. 透明人間
6. 脆弱性クロンダイク
7. 心理的瑕疵少女
8. 君の首を絞めるうた-再録編-
9. 遭難
10. 平成メンヘラセオリー-再録編-
11. 大嫌いな貴方の為に
"僕らの人生をお詰めします"をテーマに制作されたシェルミィの1stフルアルバム。
タイトルは、"ボクラノグランギニョル"と読むとのこと。
バンギャルの心の闇を歌うという、最近増えてきたスタイル。
彼らもその中のひとつと数えられるのでしょうが、シェルミィの場合、表面的にフォーマット化されたV系シーンのお約束でそうしているわけではなく、きちんと鋭い視点を持っていくところで差異化が出来ています。
歌詞に散りばめたインパクトあるワードだけで勝負するのではなく、しっかりと内面を抉る痛みも伴っている。
激しかったり、ノリが良かったり、必ずしもダウナーなサウンドばかりではないのだけれど、全体的に影を纏っているのですよね。
まず、リードトラックとなる「哀しい日はいつも雨」で衝撃を受けた。
ピアノの音色が美しく響く、淡々としたミディアムナンバーで、これが1stアルバムのトップバッターかよ、と。
ガツガツと勢いよく突っ込むのが名盤のセオリーだと考えていただけに、良い意味で裏切られました。
ただ予想の斜め上というだけでなく、リードトラックとなるのも納得の名曲なのだもの。
スタートから、アルバム全体に影を落とすアンニュイな雰囲気がたまりません。
もちろん、「ストロードール」や「ファッションマイスリー」など、攻撃的なサウンドで盛り上げるナンバーも多く、純粋なV系ロック作品としても楽しめる。
「透明人間」や「心理的瑕疵少女」といった、キャッチーとマニアックな混在するカオティックな楽曲も、アルバムのバラエティを広げるだけでなく、世界観を深める意味でも機能しています。
1stシングルに収録された「平成メンヘラセオリー」、「君の首を絞めるうた」は新解釈で再録され、反骨精神溢れる「大嫌いな貴方の為に」まで、聴き逃していい部分なんてひとつもない全11曲。
これは、とんでもないものを作り上げてしまいましたよ。
この大化けは、Vo.豹さんの表現力なくてはあり得なかった。
さらっと聴いた感じ、抑揚をつけて感情たっぷりに歌い上げるタイプではないのだけれど、どこか虚無感を含んだ歌声は、大勢の中にいて覚える孤独感というものを、的確に表現していると言える。
力が抜けているだけではなく、その奥に見返してやろうというギラギラしたものが透けて見えるのがポイント。
もしかしたら表現ではなく天然モノなのかもしれないが、シャウトを交えるような激しい楽曲でも、このデリケートが歌い方が自然にできるのであれば、それこそ才能ということでしょう。
なお、1st Press盤は即時完売してしまったとのことで、後に2nd Press盤もリリース。
埋もれてしまう名作も多い中、結成1年という若いバンドに結果が出るのは嬉しい限りですな。
収録曲は同一なのは、少しでも曲順などをいじりたくないからなのだとか。
この辺りのこだわりも含め、公開されているMVだけで満足せず、是非ともアルバムを通して聴いてみてほしい1枚です。
<過去のシェルミィに関するレビュー>