大村線に眠る/悠希
大村線に眠る 1,620円 Amazon |
1. 大村線に眠る
2. 三面鏡
悠希さんによる4thシングル。
会場限定でのリリースだった3rdシングル「残念ながら生きている」も、同時に一般発売となっています。
大村線とは、長崎にあるローカル路線。
実際の遺品整理において見えてきた人物像からストーリーを膨らませて制作したコンセプト作とのこと。
アルバムへと繋がる楽曲のようですね。
表題曲は、物悲しげなミディアムナンバー。
悠希さんの細く伸びやかな歌声が、切なさを駆り立てます。
全体像としては暗く鬱々としているのだけれど、それを切り裂く感情的なギター。
人格ラヂオの名盤、「証拠」のセルフカヴァー作となった「堆-タイ-」に続く作品として地続きの音楽性となっており、こういう新曲を待っていた!というファンも少なくなかったのでは。
サウンドはシンプルだけど、気が利いている。
隙間を埋めすぎないことで、遠くまで続く景色を想像できると言いますか、想いを馳せるだけの奥行きがあるのですよ。
ほんのり、電車が通るような環境音が重ねられているのもポイント。
電車に揺られているような心地よさと、際立つドラマ性。
底の深さに、何回でも聴けてしまいます。
カップリングの「三面鏡」は、レトロな歌謡曲ベースの楽曲。
表題曲との比較でノリが良く聴こえますが、悠希さんらしい暗さも帯びており、ちょうどよい塩梅。
痒いところに手が届く曲調で、これがあることでシングルとしてのバランスが良くなるな、と。
具体的な設定は語られないけれども想像力を刺激する歌詞は、色々な物語を思い浮かべさせる。
こちらもまた、噛めば噛むほど味わいを増すのだよな。
最近はマイペースな活動が続いている彼ですが、だからこそリリースされた楽曲が当たり続きだと嬉しい限り。
"事実は小説より奇なり"とのコピーが添えられていますが、そう言ってのけるだけはある、考察したくなる魅力にあふれていました。
価格に対して、ボリュームがやや少なめなのが惜しまれますが、それ以上の充実度が得られるであろう1枚。
<過去の悠希に関するレビュー>