堆-タイ-/悠希
1. 崩壊した街支配されない場所
2. 再生の朝
3. お人形さん
4. 溺愛
5. 午後の落下
6. 暗い春
7. ネジマキドリ
8. 勿忘草
9. 火曜日の焼却炉
10. 体温
11. 食
12. 生命
13. 回路
悠希さんによる、セルフカヴァー・アコースティック音源集。
本作は、三部作"シン ギ タイ"の完結編となります。
何においても、驚かされたのはその収録曲でしょう。
全13曲、すべてが人格ラヂオの代表作である「証拠」から。
曲順もそのまま、ジャケットも揃えてあって、14年の時を経て現代に蘇った「証拠」と言っても過言ではありません。
全体的に漂う悲壮感。
１曲１曲と聴き進めていくと、当時の衝撃が時空を超えて襲い掛かってくるよう。
じっとりと纏わりつく暗さと、悠希さんの細く尖ったハイトーンボイスは、どこか不気味で、どこかノスタルジックな空気を運んでくる。
アコースティック編成のシンプルなアレンジは、ある種、もっとも素材を活かした料理法だったのだな、と。
特に注目したいのは「お人形さん」。
オリジナルは、暗い楽曲が多い彼らにとって、ライブで盛り上がるための貴重なキラーチューン。
レトロなフレーズと、軽快なリズムが面白い１曲でした。
ところが、本作に収録された「お人形さん」は、作品中で一番遅いのではないか、と思えるぐらいにスローに仕上げられている。
そうすることで、こうも禍々しく、おどろおどろしく聴こえるものか。
途中からはお馴染みのギターフレーズが加わり、テンポも早まって原曲のイメージに近づくのだけれど、前半部での印象に持っていかれましたよ。
また、「溺愛」にしても、「ネジマキドリ」にしても、SEを効果的に使って、世界観を深めているのが悠希さんらしい。
間に挟まれた「午後の落下」、「暗い春」も繊細なメロディが美しく、「勿忘草」以降の展開は、いくらでも深読みができそう。
もう少し眠くなるかな、という事前予想を見事に覆してくれます。
ラストの「回路」は、いつ聴いても名曲。
この伸びやかなサビ、悠希さんが歌うためだけに存在していますよね。
入手経路は限定的。
だからとって、無視していい作品のわけがありません。
贅肉を削ぎ切ったからこそ感じ取れる悠希さんの進化。
三部作の最後にして最高傑作が、ここに誕生しました。
＜過去の悠希に関するレビュー＞