戯-ギ- / 悠希 | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

戯-ギ-/悠希


1. ミルク
2. 哀愁色のカーテン
3. 飼育箱
4. 窮鼠猫を噛む
5. 水彩画
6. 変身
7. 悪意
8. ぶらんこ
9. 深い森の中のサナギ
10. 流星
11. 神経衰弱
12. サクラ

悠希によるアコースティック音源第二弾。
ミニアルバムだった第一弾に対し、第二弾はフルレンスとなりました。

完全受注生産となった本作。
特典によって金額が異なる前金制となっており、アルバムリリースに向けたクラウドファンディングと捉えたほうがしっくりくるかもしれません。
CDのみの梅コースが4,980円なのは割高感があるけど、最高値となる10万円の極コースは、セットリスト指定、録画可能のプライベートライブが付いてくるのだから、むしろこれはお得なのではないかと。

前作「浸」は人格ラヂオの初期の楽曲を中心に構成されていましたが、本作は、ボリュームが増えたこともあってかオールタイム感があるラインナップになった感がありますね。
ソロ活動後の会場限定シングルである「流星」や、慎一郎さんとのユニット・カス名義で発表された「哀愁色のカーテン」も収録。
その「哀愁色のカーテン」には、ゲストボーカルとして慎一郎さんが参加し、事実上のカスの再結成が実現しているのも聴きどころでしょう。

まず、本作で光っているのは、編曲である。
弾き語りではあるのだけれど、ex-KYOKUTOU GIRL FRIENDのケッチさんとのツインギターとなっているため、何気に綿密なアレンジが施されているのです。
2人揃えば実現可能。
ただし、ただコードを掻き鳴らして歌い上げるだけではなく、インストとして聴いても沁みるように配慮されていると言いますか、ギタリストとしてのこだわりも出ているよなぁ、と。

自ら池袋駅周辺で録音したという雑踏のサンプリング音とともにスタートする「ミルク」は、優しい歌声が映えるように空間の使い方まで意識されているし、「変身」や「深い森の中のサナギ」のように、収録曲が発表された段階では"バンドサウンドでないとしっくりこないのではないか"と思われた楽曲にしても、おいしいところは丁寧に表現しつつ、アコースティックギターならではの繊細さ、美しさを活かして聴き浸れるものになっている。
ピアニストとコラボレーションして、少しアプローチを変えてきた「サクラ」も、オリジナルよりもメロディの良さが際立っているのでは。
純粋にピアノと歌だけに絞ったことで、楽曲の持つ美しくも儚げな印象とマッチしています。

アコースティック音源を爆音で聴く、というのも変な気がするのだが、音質の良いスタジオかどこかで、大音量で聴き浸りたい1枚。
情報がないと購入できない作品になってしまったのがもったいないくらい、クオリティが高い作品に仕上がっていました。
音質だけでなくデザイン面にもこだわったとのことで、帯の注意書きにすら彼らしいアイディアが隠されているなど、手に取ってじっくり確かめておきたいギミックも盛りだくさんですな。

ただし、ひとつ。
"作詞作曲編曲:悠希"のクレジットになっていますが、「哀愁色のカーテン」の作詞は慎一郎さんのはず。
これ、"お前のものは俺のもの"的なジャイアニズムだったりするのかしら。

<過去の悠希に関するレビュー>
浸 -右-
流星
相違
バンギャル心と秋の空