そして誰もいなくなった@新木場STUDIO COAST(2017.12.16) | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

無期限での活動休止が発表されているMEJIBRAY。

現段階では最後のツアーとなる「そして誰もいなくなった」のファイナル公演に行ってきました。

急遽発表されたBa.恋一さんのバースデーイベントを残しているものの、集大成的な意味合いはこちらのほうが強いだろうと予測され、始まる前から何かが起こる予感が。

15分ぐらい押してのスタートでしたが、それすら、胸の高鳴りを最高潮に持っていくための演出にすら感じます。

 

振り返ってみて、とにかく驚きが多いライブだったな、と。

そして、それは幕が開く瞬間から始まっていたのです。

 

SEを流して颯爽と登場、というセオリーを無視して、無音で幕が開くと既にスタンバイしているメンバーたち。

この時点で、"いつもと違うぞ"という緊張感が高まり、思わず鳥肌が立ったのですが、「剥落」が演奏されていくうちに、その"違和感"は更に強固なものになっていく。

Vo.綴さん、Ba.恋一さんが、ずっと影のようにぼんやりとしていて、表情やメイクがよく見えないのですよ。

白を基調とした衣装に身を包んだGt.MiAさんや、上半身裸でプレイするDr.メトさんとの対比で、黒を纏った二人が相対的に見えにくいのかと思っていたのだが、「Agitato GRIMOIRE」で照明が切り替わったところで、はっきりした。

なんと、二人とも黒塗りなのだ。

 

この日、MCは一切なく、活動休止について語られることはなし。

そのため、黒塗りの意図は最後までわからないのだけれど、ただ奇をてらっただけには思えず、きっと何らかのメッセージが含まれていたのでしょう。

短髪で黒塗り。

とてもヴィジュアル系のフロントマンとは思えない綴さんの出で立ちが、僕には、真の意味でヴィジュアル系らしい反骨精神に映りました。

ヴィジュアル偏差値の高い彼らだから、きっとオーディエンスが期待する大団円を演出することもできたに違いない。

しかしながらMEJIBRAYが選んだのは、賛否両論があったとしても、傷跡に深く刺さって抜けないぐらいの衝撃を与えることだった。

これが、実に彼ららしかったな。

 

セットリストについては、世界観をたっぷり作る楽曲を中心に、激しい楽曲、ダンサブルな楽曲も織り込んで。

多くの人がMEJIBRAYを知るきっかけとなったであろう「サバト」や「カルマ-瓦礫のマンティコーラース-」といった初期の代表曲はほとんど演奏されず、あくまでツアーの中で表現してきたことを貫く姿勢。

あれもこれも聴きたかったというのが本音ではあるけれど、これも、彼らの抵抗なのかもしれません。

その中で、MiAさんが初期に使用していたフライングVで演奏をしていたのがグッときましたね。

常にギターを4、5本スタンバイさせていて、楽曲に合わせて理論的に持ち替えていた彼が、感情を優先させた。

そんな風に感じられて、必ずしも、過去を葬り去りたいわけではないのだな、と。

 

上手にだけお立ち台が用意され、その上がMiAさんの定位置となっていたのですが、曲によってはしゃがみ込んだり、座りながらギターを紡いだり、というスタイルのため、見栄えとしては案外バランスが良い。

綴さんは相変わらずカリスマ性があって、たとえ顔が黒く塗りつぶされていても、華があるMiAさんに負けず劣らず目を奪う。

規則性があるのか、感情任せなのか、予測できないのだけれど無駄がないステージングは天性のものですね。

恋一さんも、コーラスなどで随所随所に存在感を発揮していたし、メトさんのドラムも、"お人形"という設定を無に帰す覚悟で、感情が込められたドラムを叩いていました。

バラバラに見えて、これが彼らの温度感。

アンコールもなく、たった1時間ちょっとのステージでしたが、兎にも角にも印象に残ったシーンが多く、これ以上ないぐらいに密度が濃かったと言えるはず。

 

特に語らずにはいられないのが、衝撃のラストシーン。

遠くで見ていたので、表情まではわからなかったのですが、ラストの「BI"name"JIKA」の終盤、マイクを放り出して綴さんが崩れ落ちる。

それを見て、すぐに恋一さんがベースを置いて駆け寄ると、いくつか言葉を交わしセンターへ。

幕が閉まるまで、彼は中指を立て続け、MEJIBRAYとしてライブを完結させるためにその場を離れませんでした。

その間、MiAさんとメトさんは淡々と演奏を続け、アウトロを完遂。

この一連の流れが、妙にドラマティックで、どんな演出よりも脳裏に焼き付いて。

映画で言えば、これはバッドエンドなのかもしれない。

誰も笑顔ではなかったし、ファンを安心させる気休めの一言すらない。

だけど、バンドキッズとして優等生だった彼らが、形は不格好化もしれないけれど、表現したいものを妥協せずに提示しきるアーティストになったのだ、と感じさせた場面でもあったのだ。

ベースの演奏を続けるよりも、綴さんの代わりに中指を立てることがMEJIBRAYとして優先すべきと判断した恋一さんも、そこで取り乱さずライブを締めくくろうと尽力したMiAさん、メトさんも、感情が溢れて歌えなくなった綴さんの想いを間違いなく背負っていましたもの。

 

おそらく、このライブはV系の歴史の中で、語り継がれることになるのでしょう。

メンバーの次の活動に期待、なんて軽々しく口にすることはできないレベルのトラウマを残し、大きなインパクトを与え、最後は笑顔で、というハッピーエンド的なライブに中指を立てたMEJIBRAY。

後に控えるバースデーイベントがどうなるか、というのも気になりますが、僕にとってはこの日が活動休止前のラストとなるわけで、伝説に立ち会えて良かったな、というのが素直な感想です。

お疲れさまでした。

もちろん、いつかハッピーエンドのMEJIBRAYを届けてほしい、という希望も持ちながら。

 

1. 剥落

2. Agitato GRIMOIRE

3. VICTIM(ism)

4. 月食

5. DECADANCE - Counting Goats … if I can't be yours -

6. 醜詠

7. -XV-

8. hatred × tangle red × hunger red

9. ナナキ

10. DIE KUSSE

11. 原罪の林檎

12. 嘘と愚考-それもまた人間らしいって神様は笑ってるの-

13. 枷と知能 -それってとても人間らしいって神様は笑ってるの-

14. BI"name"JIKA