I'm here / ILLUMINA | 安眠妨害水族館

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I'm here/ILLUMINA

I’m here I’m here
2,800円
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1. 遠い夜明け~art of sky~
2. Time Limit
3. 誰か…
4. 忘れないで
5. 8月
6. Q.T.
7. CRASH
8. voiceless
9. I'm here
10. 夢なら醒めないで
11. Shine
 
1999年にリリースされたILLUMINAのメジャー1stアルバム。
シングル「忘れないで」、「Time Limit」、「遠い夜明け~art of sky~」を含む、全11曲を収録しています。
 
メジャー進出により、ポップさが前に出始めた時期の作品。
そう書いてしまうと、インディーズ時代の良さが削がれ、丸くなった印象を受けるかもしれません。
いやいや、実はそうじゃない。
本来の強みに聴きやすさが足されて、バランスを意識し直したのが、この「I'm here」なのですよ。
 
序盤の4曲に、シングルから3曲を押し込んだこともあり、まずインパクトを与えるのはメロディの良さ。
特に、代表曲である「忘れないで」は、全編がサビとも思えるぐらいにキャッチーさで、シーンとの親和性を認識できます。
歌メロのセンスは、いくつか登場する歌謡曲的なナンバーでも機能。
掴みはバッチリ、といったところでしょう。
 
一方で、掘れば掘るほどマニアックな部分も顔を出すのが、彼らの魅力。
「8月」のようなドリーミングな楽曲や、ダークテイストを強めた「voiceless」など、V系バンドとしての矜持を持っていそうな楽曲たちが姿を現しはじめると、当初のイメージがロック寄りに変わっていく。
中には、幻想的な白系バンドをも彷彿とさせるアプローチも登場して、案外、やりたい放題やっているな、と。
このイメージの移り変わりも含めて、狙っているのだとすると恐ろしいバンドでしたね。
 
終盤は、表題曲であるキラーチューン「I'm here」や、アクセントとしてアコースティック調で披露された「夢なら醒めないで」、ラストで広がりを持たせるドラマティックな「Shine」と、締めくくりを鮮やかにする構成に。
大局的には、バラエティ豊かな名盤。
細部に目を配ると、凝ったアレンジで作り込まれており、玄人でも楽しめる。
メジャーのお約束を逆手にとった、なかなか面白い作品に仕上がったのでは。
 
Vo.Naoさんは、もともとギタリストだったという経緯があるのだけれど、歌唱力は十分に安定しています。
あまりV系ライクではない、ハスキーな歌声。
もう一歩、表現にまで踏み込んでほしかった気はしないでもないですが、それもひとつのILLUMINAの個性でした。
 
ところで、シングル「逢いたくて」が収録されなかったのはどうしてだろう。
彼らには、アルバム未収録のシングルがいくつかあるので、限定復活時にベスト盤でも出してくれたら良かったのに、なんて思ってしまいます。