ハウル / Yeti | 安眠妨害水族館

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ハウル/Yeti

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1. 吠える

2. 阿吽

3. 無重力

4. ガブリエル

5. Contrast

6. ストレイト

 

2017年にリリースされた、Yetiにとって6枚目となるミニアルバム。

内面に向けられていた"叫び"を、外に向けることを意識して選曲された6曲を収録しています。

 

そのコンセプトを体現するのが、1曲目の「吠える」。

さぞかしアグレッシブに攻めているのかと思いきや、実に繊細でアーティスティック。

荒野で猛々しく叫ぶというイメージではなく、荘厳な森の中、遠くで遠吠えが聴こえてくるような印象を受けました。

古語を用いた歌詞にしても、丁寧に約束事を守る演奏のコンビネーションにしても、どこか神秘的に響く。

外に向けて一気にエネルギーが放出されていくようなラストスパートも含め、新たな一歩にふさわしい楽曲に仕上がっていますね。

 

続く「阿吽」や、「無重力」も、Yetiとしては斬新なアプローチ。

「阿吽」は、ディストーションをかけて歪ませたサウンドにより、ヘヴィーさが前に出てきた。

言葉の響きも絶妙で、タイトルのリフレインが効いています。

「無重力」は、スペーシーな雰囲気を、シューゲイザー的な手法で再現。

意図的にスケールアウトするフレーズが、宇宙空間の不気味さを表しているようで、面白いなと。

 

全体的に重く暗く、といった雰囲気がある前半は、ある種の激しさで「ハウル」を表現していたのだと思いますが、それをメッセージ性に置き換えていくのが後半の流れ。

「ガブリエル」は、エモーショナルなバラードで、ライブで生演奏されたときの熱量が手に取るようにわかります。

そこから繋がる「Contrast」は、お得意のお洒落でポップなギターロック。

王道的なナンバーで安心感をもたらす一方、やはりベクトルが外に向かっているので、新鮮味も生み出していました。

イントロなど、ところどころ既視感があるのは、従来からの違い、成長を強調するために意図的に被せていたりして。

 

そして、ラストの「ストレイト」の開放感といったら。

軽快なリズムと、耳馴染みの良いメロディ。

加えて、背中を押すような歌詞。

前半戦の構成で、まさかこんなにも文字通りストレートな楽曲が待っているとは、誰も想像できなかったでしょうよ。

涼木さんの癖のある歌声が、こういうナンバーでは透明感として際立つという発見もあり、まさに名曲。

Yetiの進化を見せつけて締めくくります。

 

アルバムを通して、ストーリーを感じさせる構成となっており、ミニアルバムというコンパクトな媒体ではあるが、彼らの様々な側面を見ることができる。

前半と後半でガラっと雰囲気が変わるので、強引さを感じないこともありませんが、それによりインパクトを強めているのも確か。

引っかかりのある佳曲が詰まっていて、個々の楽曲にパンチがあるのも特徴なのかと。

フルアルバムをリリースして"出し尽くした"後に、こんな作品を持ってこれる引き出しの多さには感心の一言。

自由度の高い彼らの音楽、ジャンルで括るのがナンセンスに思えてくる1枚です。

 

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