アンチテーゼ / Yeti | 安眠妨害水族館

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アンチテーゼ/Yeti

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1. ナスカ
2. 哲学(アンチテーゼver.)
3. ハロウ(アンチテーゼver.)
4. Scissors
5. 森林に生息する
6. Birthday
7. Life
8. Unbalance(アンチテーゼver.)
9. 「151A」
10. ○○と僕
11. Tomorrow land

5枚のミニアルバムを発表してきたYetiが、遂にフルアルバムをドロップ。
先行シングル3曲のアルバムバージョンを含む、全11曲を収録しています。

メンバーが固まり、呼吸も合ってきたタイミング。
送り込まれたアルバムは、歯車が噛み合っているのがはっきりとわかる、自信に満ち溢れた楽曲たちで溢れていました。

ひとつひとつが個性的で、毛色が違う。
"自由な音楽"は伊達ではなく、意表をついて雰囲気モノの「ナスカ」からスタートし、情報量の多いアッパーチューンに、アコースティック調のナンバー、Yetiなりの攻撃性を見せる楽曲があれば、しっとり聴かせるミディアムバラードまで用意。
バラエティに富んでいるのに散漫ではない、バンドとしての軸を示す構成となっていますね。

本作の聴きどころは、"アンチテーゼ"というテーマそのもの。
1曲目の「ナスカ」は、スタートよりもラストに据えたほうが映えそうだし、最後の「Tomorrow land」は、アウトロが次の曲に繋がっていそうな余韻を残すため、終わった感じを与えない。
歌詞は多くないのに、もっともメッセージソングとして機能している「森林に生息する」にしても、「Birthday」のすぐあとに、それを打ち消しかねない「Life」を並べてしまう曲順にしても、"アンチテーゼ"が様々なところで顔を出すのだ。

それは、歌詞の内容、世界観やギミックだけでなく、サウンド面でもしかり。
デジタル処理が当たり前の音楽シーンにおいて、生々しいサウンドメークにこだわっており、例えば「Life」では声が掠れている部分もあるのだけれど、そのライブ感を良しとしてOKテイクにしてしまっている。
「Scissors」では、スラップ奏法をベースではなくギターで行っており、役割を逆転させるアプローチも面白い。
他にもあれこれ数えたらキリがないくらい、天邪鬼が潜んでいるのですよ。

アルバム全体の流れとしては、先行シングルがキラーチューンとなっており、序盤は「哲学」、「ハロウ」の繋ぎが、終盤では「Unbalance」がポイントごとでの盛り上げ役を担っています。
「Unbalance」から「151A」へバトンが渡って、高揚感を煽っていく場面なんかは、ロック好きにはたまらないのでは。

繊細でテクニカルなプレイを好むGt.沢村英樹さんのスタイルも、今のYetiには合っている。
この人が入って、フルアルバムを制作するマインドに切り替わったというのがよくわかる存在感を発揮。
選んだテーマが音楽性がピタリとハマっていたこともあって、最初から最後までぐいぐい引き込まれました。
集大成というよりも、整理して明確化した"挨拶代わり"の再構築。
彼らに触れる入門書としても、安心しておススメできる1枚です。

<過去のYetiに関するレビュー>

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賛成の反対
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