砂糖と塩 / Yeti | 安眠妨害水族館

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砂糖と塩/Yeti
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1. welcome
2. loop
3. kakurenbo
4. postman
5. beautiful
6. suki

Yetiの3rdミニアルバム。
ミニアルバムを連続してリリースしているのは、戦略なのかしら。

Vo&Gt. 涼木聡さんの個性的な歌声が、ここにきて、Yetiの目指すギターロックに馴染みきった。
シンプルなミディアムロック、「welcome」からスタートする本作ですが、出だしから打ち抜かれました。
清涼感のあるサウンドに、可愛らしくもどこか翳りをもたらすボーカル。
一見して、"ヴィジュアル系っぽくない音楽性"も"あえて"な感じがして、掴みとしては十分。
3分に満たないナンバーではありますが、メロディの良さも手伝って、しっかりと聴きごたえがあります。

続く、「loop」も格好良い。
エレクトロ風の同期に、ザクザクとしたギターが絡む。
先ほどは穏やかな表情を見せていた涼木さんの歌声も、今度はシリアスな一面を見せながら進行していきます。
サビになるとポップでダンサブルな雰囲気になりますが、このわざとらしい感じが、Yetiの狙いなのだろう。
思惑通り、ハマってしまいました。

「kakurenbo」は、マイナーコードで淡々と進んでいくギターロック。
これまた、ツボでした。
ギタボがいるバンドだからこそ、ライブ映えしそうというか。
ヴィジュアル系は、ボーカリストが楽器を持たず、表現とステージングに特化して成熟した文化。
それを理解したうえで、そんなバンドたちができないことを上手く突いていこうという意識が見えるのが、彼らの面白いところかもしれません。

「postman」は、切なく、じんわりと沁みるミディアムナンバー。
ぼんやりと、淡い色彩。
単純に、歌メロが良いな。
アクセントと割り切ってしまうにはもったいない楽曲。

カラフルでパンキッシュ。
それでいて、ポップ感のあるのが「beautiful」。
激しいのか、キャッチーなのか、フワフワしたボーカルとロックな演奏のミスマッチが、不思議なYetiワールドを作り出しています。

ラストは「suki」。
最後に、なかなか耳に残る雰囲気モノを持ってきた。
お洒落なのだけれど、なんとも中毒的。
これまでの作品においては、ゆったりとした楽曲で、これといった強みを示すことができていなかった印象があった彼らですが、こんな癖のある楽曲のラインナップが増えていくなら、課題は解消するはず。
そういう意味では、本作に捨て曲はありませんでしたよね。

ロキノン系っぽい。
一般受けしそう。
そんなことを言われそうなタイプの音楽性ではありますが、個人的には、それは適切ではないな、と思ってきた。

"ヴィジュアル系っぽくない"感じを狙いにいった邪道さ。
そんな感じがふさわしい。
あくまでヴィジュアル系バンドとして、素直に格好良いロック、素直な名曲を作りにいくというスタンスは、このシーンで受け入れられる土壌ができたときに急展開を迎えそうなのだ。

前身バンドのインパクトも抜けつつある今が正念場。
V系界隈におけるギタボ旋風を巻き起こしてほしいバンドのひとつです。

<過去のYetiに関するレビュー>
賛成の反対
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