本音と建前 / Yeti | 安眠妨害水族館

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本音と建前/Yeti

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1. music
2. arrows
3. if
4. einstein
5. cats
6. every

Yetiの4thミニアルバム。
Gt.沢村英樹さんが加入し、新体制になってからは初の作品となります。

エレクトロの要素も散りばめたギターロックという大枠での路線は継続。
情報量を多く詰め込んだサウンドは、昨今の邦ロックではお約束的なベタさではあるのだけれど、涼木さんの叙情的な歌声が重なる違和感をとっかかりにして、リスナーを引き付けていく手法もいかにも彼ららしく、ここは変わらない部分ですね。
一方で、個々の楽曲を見てみると、新たなチャレンジも相応に取り入れていて、絶妙なバランスを実現していると感心させられる。
タイトルのつけ方や、シングルを出さずにアルバム作品にこだわる姿勢を一貫させる中で、しっかり成長や変化を見せていました。

早口でまくし立てたと思いきや、作曲家たちの名前を連呼してフックにしてしまう「music」は、彼らの王道に見えて、実に新鮮。
インパクト抜群で、ギタリストがチェンジしても変わらない部分と、変化・進化した部分を同時に示すことができたのでは。
続く「arrows」は、彼らとしては珍しい疾走感のあるギターロックで、前身バンドからのファンにも嬉しいメロディアスな展開に仕上がっていますね。

意外性があると言えば、「if」も然り。
スローバラードと呼べる歌モノで、これまで、情報量を詰め込んだサウンドを美徳としていた彼らの音楽性を覆す、引き算的なアレンジとなっています。
ピアノを取り入れることも前提としているようで、ここに来て、自由度も増しているということか。
「einstein」も、バンドサウンド以外の音がたくさん加えてあって、こちらは足し算的ではあるものの、これまでの音楽性に上積みできるオプションを増やそうという意図がはっきり見えているのかと。

ポップでキュートな「cats」を、ジャジーな雰囲気でコーティングしたのも面白い。
あえて音質を悪くすることでアナログ感を出したとのことで、確かにレトロな空気感が出ています。
こういうのを涼木さんが歌うというのが、なんとなく懐かしい気もするな。
愛狂います。時代を思い出す、と言い切ってしまうと誤解を与えそうだが、可愛くも捻くれたセンスは、相変わらず独特である。
ラストの「every」は、エンドロール的な楽曲でしょうか。
初期から温めてきたとのことですが、ここに投入されても、すんなり溶け込んでいるイメージでした。

総括として、メンバーチェンジがあっても、YetiはYetiであった。
そう思うのは、単純に楽曲をVo&Gt. 涼木聡さんがコンポーズしているから、という単純な理由ではなく、あえてヴィジュアル系から離れていくアプローチをすることで、ヴィジュアル系バンドだからこその特異さを表現するスタンス的な部分にあるのでしょう。
彼らの幅の広げ方は、V系シーンにおける次に広がっていくであろう音楽ジャンルを実験的に先行しているといったところで、その点において、彼らは変化してこそ、Yetiらしさを貫くことにも繋がるのです。

新体制での現時点での不安は特段見られず、初期のロキノン系二番煎じ感も抜けてきた。
これから更にコンビネーションの高まりを期待できるのは、まさに伸びしろですよ。
一気にブレイクするタイプの音楽性ではありませんが、じわじわと理解者を増やしていければ、いつか評価される日がくると信じたい。
時代が彼らに追いつくのはいつになるか、待ち遠しくなる一枚。

<過去のYetiに関するレビュー>
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