時ノ葬列 / La’Mule | 安眠妨害水族館

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時ノ葬列/La’Mule

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1. 溺れた奇形
2. 月ト影
3. 情景ノ都
4. fantasy

1998年にリリースされたLa’Muleの1stミニアルバム。
何度か再プレスされており、複数の仕様が存在します。

血塗れのイメージが強い彼らですが、この頃は黒を基調とした衣装。
メンバーについても、ギター隊がブレイク期と異なっており、「Curse」以降のメインコンポーザーは不在。
まだ音楽性が定まる以前ということになるのでしょう。

とはいえ、既に彼らの勢いは決定づけられていた、と断言できるのが本作でした。
まだ個性化には至っていないし、演奏も未熟。
当時ゴロゴロしていたダーク系バンドのど真ん中といったところで、決してもの珍しさはなかったのだけれど、それでも惹かれてしまう楽曲センスを持っていた。
ドロドロとした世界観なのだが、キャッチーさも意識して。
お約束を畳み掛ける一方で、妙に引っかかるマニアックさも取り入れて。
今でこそ分析が進んで王道フォーマットとなっているスタイルを、自然体で精度高くやってのけてしまったのですよ。

「溺れた奇形」は、ドロリと澱んだ陰鬱なAメロ、Bメロから、クリアなサビへの展開で高揚感抜群。
メロディそのものはありがちなのだが、この明暗の使い分けが絶妙で、トップバッターとしてインパクトを高めています。
続く「月ト影」は、更にリズムが性急になり、激しいサウンドが好きなリスナーをノックアウト。
このツタツタドラムに、キャッチーな歌謡メロを重ねられたら、もうひとたまりもありません。

CD化も果たすCTのリードトラックであった「情景ノ都」は、実にシングル的な構成。
メロディアスで切ないサビがノスタルジックな感覚を創出すると、最後はカオティックな「fantasy」へ。
典型的な暴れ曲なのだが、ピリピリと緊張感が張り詰める導入から、ズタズタに切り裂くような演奏パートに切り替わる際のギャップが強烈。
激しい演奏の合間にメルヘンなフレーズが入るあたりも、狂っている演出として効いていますね。

4曲というボリュームはミニアルバムとして物足りないのだが、捨て曲はなし。
CDでは飛ばしてしまいそうな煽り曲まで、何故だかしっかり聴いてしまうのだから不思議なものだ。
曲の良さで勝負できるのであれば、むしろベタさは武器となる。
もちろん、メンバーチェンジ後のLa’Muleも良いのだけれど、ダークに特化しつつ、ピンポイントでツボを狙っていたこの頃の音楽性が、後のブレイクの礎になっていたことを忘れてはいけません。

<過去のLa’Muleに関するレビュー>
CLIMAX
ナイフ
結界~ガラス神経ト自我境界~
Curse
inspire