lightless./emmurée
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lightless.
3,240円
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1. lightless -僕の夢-
2. lightless -鈍い、闇。-
3. 八月の雨
4. brand new world
5. Red.
6. tonight -星降る月夜に-
7. circus
8. 消滅、崩壊、自我、支離滅裂。
9. 無色透明
10. 朧げに、猶予う。
結成から19周年を迎えたemmureeによる5thフルアルバム。
彼らの原点に立ち返ることを意識して制作された作品です。
所謂"白系"にカテゴライズされるサウンドを主体としながら、真逆である"暗黒"と称されることが多いemmuree。
そんな彼らが、明確な目的を持ってダークな世界観に取り組むのですから、そりゃ期待しないほうがおかしいって話ですよ。
タイトルまで、「lightless.」と"光がない"のだもの。
実際、変拍子などを用いた複雑な曲構成にしていたり、退廃的に絶望をぶちまけたり、メジャーカルチャーの流行とは異なる時間軸で紡がれたサウンドたち。
序盤から送り込まれる2曲の異なる「lightless」から、実に濃厚でコクのあるナンバーが続いていきます。
短い夏の儚さに包まれた「八月の雨」にしても、荒々しくロックテイストに仕上げた「brand new world」にしても、アプローチは違えどemmureeらしさの塊であり、音楽性は異なれどバンドの方向性としてブレがありません。
それは、安易な激しさやキャッチーさに走らず、世界観の範囲内で幅を広げてきた成果。
枝葉の部分を切り落としても、幹が大きく太く育っていたということ。
emmureeの原点回帰は、ただ初期のスタイルに戻るということを意味しているのではなく、現時点でコアとなる部分を再提示する意味合いもありそうですね。
純粋な音楽性のパターンとしては、むしろバラエティ性に富んでいると言えるのでは。
また、初期と大きな違いとなって表れたのは、"救い"でしょう。
とにかく暗く、救いようがない楽曲ばかりだった初期に対して、光がない中にも、明かりを灯そうとする力強さが、この「lightless.」には感じられる。
その意味では、前作「窓の外は、カァニバル。」からの地続きでもあるのだよな。
「tonight -星降る月夜に-」の切ない読後感は、とても象徴的だと思いました。
終盤は、「circus」、「消滅、崩壊、自我、支離滅裂。」と、カオティックでハードな楽曲を畳み込むと、"夢から醒めるまで"をテーマにした本作の肝、夢が終わる瞬間である「無色透明」、およびその余韻として描かれた「朧げに、猶予う。」でスケールの大きさを見せつけて幕を閉じます。
10曲という曲数も絶妙で、満足度は高いけれど、もう少し浸っていたい気持ちになるボリューム。
それを想定していたように、リピートして聴くと味わいが増すドラマティックさがあるので、本当にしたたかです。
19周年を迎え、とんでもないものが出来上がってしまった。
emmuree初心者から、コアなリスナー、出戻り組まで、全方位におススメできる1枚。
<過去のemmureeに関するレビュー>