lightless. / emmurée | 安眠妨害水族館

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lightless./emmurée

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1. lightless -僕の夢-

2. lightless -鈍い、闇。-

3. 八月の雨

4. brand new world

5. Red.

6. tonight -星降る月夜に-

7. circus

8. 消滅、崩壊、自我、支離滅裂。

9. 無色透明

10. 朧げに、猶予う。

 

結成から19周年を迎えたemmureeによる5thフルアルバム。

彼らの原点に立ち返ることを意識して制作された作品です。

 

所謂"白系"にカテゴライズされるサウンドを主体としながら、真逆である"暗黒"と称されることが多いemmuree。

そんな彼らが、明確な目的を持ってダークな世界観に取り組むのですから、そりゃ期待しないほうがおかしいって話ですよ。

タイトルまで、「lightless.」と"光がない"のだもの。

 

実際、変拍子などを用いた複雑な曲構成にしていたり、退廃的に絶望をぶちまけたり、メジャーカルチャーの流行とは異なる時間軸で紡がれたサウンドたち。

序盤から送り込まれる2曲の異なる「lightless」から、実に濃厚でコクのあるナンバーが続いていきます。

短い夏の儚さに包まれた「八月の雨」にしても、荒々しくロックテイストに仕上げた「brand new world」にしても、アプローチは違えどemmureeらしさの塊であり、音楽性は異なれどバンドの方向性としてブレがありません。

 

それは、安易な激しさやキャッチーさに走らず、世界観の範囲内で幅を広げてきた成果。

枝葉の部分を切り落としても、幹が大きく太く育っていたということ。

emmureeの原点回帰は、ただ初期のスタイルに戻るということを意味しているのではなく、現時点でコアとなる部分を再提示する意味合いもありそうですね。

純粋な音楽性のパターンとしては、むしろバラエティ性に富んでいると言えるのでは。

 

また、初期と大きな違いとなって表れたのは、"救い"でしょう。

とにかく暗く、救いようがない楽曲ばかりだった初期に対して、光がない中にも、明かりを灯そうとする力強さが、この「lightless.」には感じられる。

その意味では、前作「窓の外は、カァニバル。」からの地続きでもあるのだよな。

「tonight -星降る月夜に-」の切ない読後感は、とても象徴的だと思いました。

 

終盤は、「circus」、「消滅、崩壊、自我、支離滅裂。」と、カオティックでハードな楽曲を畳み込むと、"夢から醒めるまで"をテーマにした本作の肝、夢が終わる瞬間である「無色透明」、およびその余韻として描かれた「朧げに、猶予う。」でスケールの大きさを見せつけて幕を閉じます。

10曲という曲数も絶妙で、満足度は高いけれど、もう少し浸っていたい気持ちになるボリューム。

それを想定していたように、リピートして聴くと味わいが増すドラマティックさがあるので、本当にしたたかです。

 

19周年を迎え、とんでもないものが出来上がってしまった。

emmuree初心者から、コアなリスナー、出戻り組まで、全方位におススメできる1枚。

 

<過去のemmureeに関するレビュー>

lightless ~鈍い、闇。~

Red.

窓の外は、カァニバル。

EMMURE´E
【acute sense】
真っ赤な林檎
灯陰
灰色