窓の外は、カァニバル。 / emmuree | 安眠妨害水族館

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窓の外は、カァニバル。/emmuree

¥3,000
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1. 混沌≒秩序
2. カタルマド
3. ノスタルジックに、風の吹くままに。
4. Picturesque World
5. 時計草
6. 太陽のメロディー
7. 瞬きの裏の瞬間の思想
8. recollection
9. 窓の外は、カァニバル。
10. smile

Dr.TELLさんが正式加入。
新体制としては初のフルレンスとなる、emmureeの4thアルバムです。

メンバーチェンジによる活動休止期間を経て、いよいよemmureeが再始動。
オリジナルアルバムとしては3年ぶりとなる本作は、Vo.想さんの描く幽閉された箱庭のような世界観を、より具体的に示すアルバムに仕上がっているのではないかと。

"扉は閉じたまま、全ての窓を開放した────"

このキャッチコピーは、実に的を射た表現だと思います。
emmureeらしい閉鎖的な空気感は残っているのだけれど、そこは決して光の届かない場所ではない。
開け放たれた窓からは心地よい風が入り込み、空の向こうを夢想する。
そんな情景を想像できることが、本作の一番の特徴なのではなかろうか。

素直に"明るい曲が増えた"というわけではないのだが、暗さ一辺倒であった初期の彼らと比較すれば、一目瞭然。
「瞬きの裏の瞬間の思想」など、90年代のダークバンドさながらに激しく歌唱する場面はあるものの、全体的には歌詞のひとつひとつに感情を乗せて救い上げるよう。
暗いだけではなく、そこに光が差し込んでくるのですよ。

そして、「窓の外は、カァニバル。」なのである。
幽閉された部屋と、窓の外の賑やかさのコントラストを、モノトーンをイメージさせる骨太なバンドサウンドと、表情豊かな歌声によって演出。
歌詞に力を入れているのは当然として、肉付けするための工夫の織り込み方が、さすがベテランと唸らせますね。
淡々と進行していくと見せかけて、いつの間にか戻れないところまで連れて行ってしまう、7分半という時間設定も絶妙すぎる。

「カタルマド」、「ノスタルジックに、風の吹くままに。」、「時計草」…
改めて見ると、印象的なタイトルの楽曲が多いですな。
構成も絶妙で、「混沌≒秩序」というカオティックなナンバーからスタートしたにも関わらず、最後の「smile」に辿り着く頃には、すっかり安心感を手に入れている。
ロックバンドたるもの、そんなものは要らないだろという意見もあるかもしれないが、心機一転のフルアルバムで、ここまでフラットに歌を意識したアルバムをドロップできるアーティストは、そうはいないでしょうよ。

大きなインパクトを与えるわけではありませんが、彼ららしく精神世界にどっぷり潜り込んでいく1枚。
"内なる激しさ"とは、このような楽曲たちにこそ与えたい言葉です。

<過去のemmureeに関するレビュー>
EMMURE´E
【acute sense】
真っ赤な林檎
灯陰
灰色