隔世の眠りと三角館の猟奇歌/地獄絵
1. 縫合ノヲト
2. 昏睡の針と蜘蛛の糸
3. M=0.65G or G=0G
4. 花風月
5. BURLESQUE
6. 隔世の糸
地獄絵の短編第五集。
第三集、第四集はデモテープのデジタルリマスタリング盤だったことを踏まえれば、実に15年以上ぶりの新作短編集となってくるのでしょうか。
レコーディングは2014年に行っていたようですが、約2年の熟成期間を経て、ようやく日の目を見たといったところ。
ドロリとした不気味な空気にゴシックなサウンドが纏わりつく彼ららしい音楽性は相変わらずで、ルーツとなる音楽をすべて飲み込んで、和風ホラーの世界観に引き摺り込む。
長い年月が経っても、地獄絵は地獄絵であることを証明しています。
1曲目のSEから物凄い。
メロディがあるわけでも、凝ったフレーズが重ねられているわけでもないのだけれど、たった2分弱でリスナーの心を支配する禍々しさ。
電子音や台詞の使い方も上手で、こういう雰囲気作りの導入SEにもセンスって出るのだな、と痛感しました。
歌入りの楽曲は、「昏睡の針と蜘蛛の糸」から。
過去の楽曲の再録ですが、より濃密にパワーアップ。
現代の録音環境により音質が向上した、という側面も当然ながらあるのでしょうが、機械的なリズムマシーンと怨念のようなベースの響き。
それにレアさんの表現力が重なって、あの頃よりも実態的な怖さを感じるナンバーになっているのです。
どのような意味があるのかは解読できませんが、「M=0.65G or G=0G」は、激しく進行しながら印象的なメロディもある、地獄絵にありそうでなかった楽曲。
新境地というほど斬新ではないのかもしれませんが、ファルセットを使用してのサビのメロディには、まだまだ引き出しを隠しているな、というポテンシャルを感じたのでは。
退廃的なダークチューンに、和風ホラーで味付けしていく「花風月」は、もはや十八番。
全編的に艶やかなボーカルを聴かせていたと思えば、途中で荒々しく変貌していく狂気的な演出が面白いです。
続く「BURLESQUE」にはどこか軽快さがあって、難解な楽曲が多い彼らにとって、比較的聴きやすい。
といっても、テンポチェンジはコロコロ入るし、マニアックはマニアック。
終盤の人名の羅列には、ゾクゾクとしたリスナーも多そうですね。
最後は、SEに語りを乗せる「隔世の糸」で終了。
6トラックで20分弱と、ミニアルバムとしての尺は短めですが、胃もたれしそうなほど濃厚でした。
1度聴いたら、しばらく他の音楽は聴かなくていいや、と思ってしまうほどですよ。
ただし、実はCDをリピートして聴くと、何気に繋がりが良かったり。
古い屋敷に閉じ込められて、永遠にループしているような錯覚を覚え、徐々に理性を失っていくかのよう。
ディープな暗黒に身を任せようと思ったときに、じっくり聴きたい1枚です。
<過去の地獄絵に関するレビュー>