病院坂の人攫いの家 / 地獄絵 | 安眠妨害水族館

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病院坂の人攫いの家 [Explicit]/地獄絵

¥1,000
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1. 病院坂の人攫いの家
2. 畸形歯車
3. 月色 -eclipse-
4. 十二月八日月曜日の手紙

地獄絵の短編第一集。
1999年にリリースされたCDは既に廃盤となっていますが、期間限定ながら、配信音源として再販されました。

リミックス&デジタルリマスター処理により、音質ははっきりと。
これまでのリメイク作品のようにボーナストラックの収録や現メンバーでのリテイクなどはありませんが、現代的な音質で入手困難な作品が再販されるということだけでもありがたい。

デューミーな前奏部分を経て、途中から激しいバンドサウンドへ移行するのは、タイトル曲の「病院坂の人攫いの家」。
サビだけ聴けば王道的な90年代V系と言えるのだけれど、トータルで聴いたときの圧倒的なボリューム感は、ただ曲の尺が6分以上あるからだけではないはず。
静と動を使い分けて、どっぷりリスナーを闇の世界に引き込むと、続く「畸形歯車」は、複雑怪奇なリズムで迫ります。
地獄絵を象徴するリズムマシーンを使った打ち込みサウンドが、その軽さや規則性によって、無機質だからこそ際立つ異常性を表現しているよう。
格好良さとおどろおどろしさで、鳥肌が立ちますよ。

ホラーテイストを強めたところで送り込む「月色 -eclipse-」は、一転してのミディアムナンバー。
ギターにはコーラス系のエフェクトがかけられて、激しさよりも雰囲気を出すことに重点を置いて制作されたのかな。
ボーカルラインも比較的わかりやすくて、メロディアスですね。
ここまでの歌モノで勝負する楽曲は、地獄絵としては珍しい気がするな。
最後の「十二月八日月曜日の手紙」は、犯罪者の手記のようなスタンスでの語りが中心。
相変わらず拍子が変則的で、ワンフレーズを繰り返すサビも中毒性を生み出している。
美しい「月色 -eclipse-」とのコントラストで猟奇性が強調されているのも、曲順の妙でしょう。

曲数としてはコンパクトなミニアルバム。
ただし、常軌を逸する濃厚な楽曲たちは、何年も悪夢に起こされているかのような錯覚をリスナーにもたらします。
これは癖になる人があとを絶たないのも頷ける。
全部聴ききった後の精神的な疲れの中、たった4曲しか聴いていないことに驚愕してほしい作品です。

<過去の地獄絵に関するレビュー>
切断ノヲト
プリマ・マテリア
昏睡の針と蜘蛛の糸
異形の快楽あるいは、廬世の夢