ラストレター / Pierrot | 安眠妨害水族館

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ラストレター/Pierrot

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1. ラストレター
2. Labyrinth~鏡には映らない君が~

1999年にリリースされた、PIERROTのメジャー4thシングル。
次にリリースされるアルバム「FINALE」からは"PIERROT"という表記が採用されていますので、"Pierrot"名義での最後の作品となるのでしょうか。

本作は、15万枚を売り上げたPIERROT最大のヒット作。
ハードカバー装丁にフォトブックレットが付属する、特殊仕様となっており、初回限定盤には、Vo.キリトさんによる書き下ろしの短編小説、「チェリー・トゥリーズ」の冊子が付属されていました。

そして、この「チェリー・トゥリーズ」こそ、「ラストレター」への思い入れを何倍も深めてくれるアイテムであったと言えるだろう。
楽曲としては、美しく切ないミディアムバラード。
桜をモチーフとしていることもあり、望んでいない別れの儚さを想起させています。
タイトでシリアスな演奏と、淡々としていながら、時折感情的な表情を見せるボーカル。
予備知識なく聴いても、紛うことなき名曲ではあるのですが、小説を読むことではっきりするのが、その舞台設定なのだ。

曲中において、それを示唆する言葉は意図的に用いていないようですが、実は戦争をテーマにした楽曲。
靖国神社で特攻隊員が家族や恋人にあてた手紙を見たキリトさんが、そこからイメージを膨らませて制作したのだとか。
「チェリー・トゥリーズ」には、その登場人物の心中が痛々しいぐらいに描写されていて、ストーリーを読み進めるほど、「ラストレター」の世界が、より奥深いものに変わっていく。
それまでもPIERROTは好きで聴いていたのだが、それ以上踏み込んで何かにハマる瞬間、というのをはじめて自覚したのが、このときでした。

カップリングは「Labyrinth~鏡には映らない君が~」。
デモテープに収録されていた楽曲の再録となります。
彼らは、ボーカルチェンジ前にも「Labyrinth」という楽曲も発表しており、関連性を探ってしまうのだけれど、作曲者でクレジットされているGt.アイジさんは当時未加入。
実際のところ、どうなのでしょう。
個人的には、本作に収録されているダークでメロディアスな「Labyrinth」のほうが好みですね。

ジャケットの桜を見るだけで涙腺が緩むくらい、聴き込んだ1枚。
ちなみに、キリトさんは2007年にソロシングルとして、「Cherry trees」を発表。
タイトルから想像できる通り、「チェリー・トゥリーズ」のアナザーストーリーとのこと。
こちらも歌詞は抽象的に留められているのですが、背景にこの設定があると思うと味わい深いです。

<過去のPierrot(PIERROT)に関するレビュー>
DICTATORS CIRCUS FINAL
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DICTATORS CIRCUS-奇術的旋律-

HEAVEN -THE CUSTOMIZED LANDSCAPE-
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