夜/それは全てに等しく訪れる闇 / 夜-yoru- | 安眠妨害水族館

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夜/それは全てに等しく訪れる闇 / 夜-yoru-


1. 思案化水葬 shian ka suisou
2. tightlope.
3. coming down
4. birds
5. 隣人は死に場所を探している。
6. night flight. -After that in my room-

ex-amber grisのVo.手鞠さんが、和登名義で活動を再開。
1年間限定でのソロプロジェクトとして、夜-yoru-を始動させました。

本作は、限定500枚で発表された、紙ジャケット仕様の1stEP。
ライブ会場で販売された後、通信販売も開始されましたが、間もなく完売となっています。
サポートメンバーは、Gt.高麗 匠(ex-dummyxD)、Ba.Ivy(ラッコ)、Dr.大熊けいと(ex-るう"ぃえ)というラインナップ。
Moran時代には在籍期間が重なっていない匠さんとIvyさんが、ここで共演というのも面白いものですね。

ミディアムテンポの大人びた楽曲が中心。
鍵盤の音色も効果的に使われていて、プロジェクト名にふさわしく、アダルトな雰囲気を醸し出す。
ボーカリストのソロということで、メロディ重視の傾向はあるのですが、必ずしも歌いやすいナンバーばかりではありません。
ボーカルラインを追うだけでも難しそうなのに、そこに感情を込めて叙情的に歌い上げる和登さんのスキルの高さ。
素直に美しさに浸るも良し、クオリティを維持しながらチャレンジを続けるテクニック面に注目しても良し。
なかなかどうして奥深い作品である。

1曲目の「思案化水葬 shian ka suisou」に、とにかくハマってしまった。
こんなにも、痒い所に手が届く楽曲が今までにあっただろうか、と言わんばかりの美メロ。
特にサビの流れが秀逸で、1回目の8小説と、2回目の8小説でメロディラインが取り換えられるのだが、そのどちらもがグッとくる。
盛り上がりを演出する1回目と、ファルセットを加えて印象的に色付けする2回目。
ただでさえドラマティックな楽曲なのだが、更に聴き手を引きずり込んでしまうきっかけになっており、トップバッターでこれがきた時点で名盤確定でしょう。

全体的にゆったりした中に織り込まれる「隣人は死に場所を探している。」の疾走感も効いています。
もちろん、他の楽曲もただ大人しいだけではなく、要所要所で楽器隊が主張し、ガシガシと攻めに転じる場面はあるのだけれど、それを楽曲全体で表現したイメージ。
キャッチーさも持ち合わせているので、最初はこの曲に掴まれて、そこからどっぷりと、というリスナーも多かったのでは。

初の音源にして、集大成のようでもあり、実験作のようでもあり。
インパクトが大きいわけではありませんが、じっくり聴き込めるポテンシャルの高い1枚。
何度も聴いているうちに、一生モノのCDになっていきそう。

期間限定の活動の中で、次回作があるのかどうかは読めませんが、ライブをこなして蓄積したものを、ここに上乗せして還元してほしい気持ちは当然出てきます。
もっとも、終わりが決まっているということは、その次のプランも見据えているのかもしれないわけで。
ここはひとつ、焦れずに期待していこうと思いますよ。