CELLULOID / PIERROT | 安眠妨害水族館

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CELLULOID/Pierrot
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1. セルロイド
2. Adolf
3. 脳内モルヒネ
4. Twelve
5. 鬼と桜
6. HUMAN GATE

 

メンバーチェンジを経てリリースしたアルバム「パンドラの匣」で頭角を現したPIERROTが、1997年にリリースしたミニアルバム。

2001年にはユニバーサルミュージックから再発盤も発表されています。

 

無機質なサウンドと、コンセプチュアルな歌詞により、独特な世界観を構築。

キャッチーなフレーズの中に不協和音を織り交ぜるセンスがズバ抜けているというか、気持ち悪さと心地良さが同居しているのが、PIERROTの音楽性の肝と言えるでしょう。

また、Vo.キリトさんの煽動的な発言やパフォーマンスにも注目が集まり、もはや宗教とも言えるカリスマ性を放っていたのも特徴のひとつ。

音楽に留まらず、企画面でも常に新しい要素を取り入れ、何度もV系シーンにおけるムーブメントを生み出しました。


さて、この「CELLULOID」は、どの曲も個性が強く、ミニアルバムながら、ボリューム感は抜群。

タイトル曲の「セルロイド」がもっとも地味なのでは、というほどに粒ぞろいで、例えば「Adolf」のフリはヴィジュアル系のスタンダードとして共通言語になっていますし、後にメジャーでシングル化される「脳内モルヒネ」などは、マニアックな音遣いなのに、ポップ感満載。
インディーズとメジャーの共通項として、デビュー後の快進撃を支える解となり得る楽曲だったのではないかと。

 

もうひとつ触れておきたいのは、最後に放たれた名曲、「HUMAN GATE」。

それまでは、攻撃的、排他的な歌詞であったり、ネガティブな感情に共感を求める傾向が強かったV系シーン。

こんなにも正面から救いの手を差し伸べたバンドはいなかったはず。

生々しい描写があるからこそ、最後の言葉に救われる。

「HUMAN GATE」に人生観を変えられたリスナーも、少なくないのでは。

 

伝説になるのも納得というクオリティ。

これを抜きにシーンを語ることはできない、と断言できるほど、後のシーンに影響を与えた1枚でした。

ちなみに、メジャーデビューアルバムが「FINALE」、ラストシングルが「HELLO」とは、これいかに。

ここまでを狙っていたのでは、と邪推してしまうほど、彼ららしいシナリオだったと思わざるを得ないのです。