Door / Dear Loving | 安眠妨害水族館

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Door/Dear Loving

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1. Dreamer
2. I’m here
3. for dear
4. Door
5. CHANGE!!
6. Fighting Road ~1mmにも満たない、それでいて大きな一歩~
7. 運命のコンシェルジュ
8. 手の甲にキス
9. SOS
10. GOLD RUSH
11. 愛してるを叫ぼう
12. Door (Unplugged Live Ver) (bonus track)

結成23周年を迎えたDear Loving。
本作は、約2年ぶりに届けられた再デビュー後初となるフルアルバムです。

一度、こういうアルバムを作ってほしかった。
「Loose Vision」を聴いてから15年くらい燻らせていた想いが、遂に叶ったという感覚がありました。
ヴィジュアル系のフィールドで活動していた時期は、フルアルバムを1枚もリリースすることはなく、ポップロックシーンに転向。
その後に発表したアルバムも名盤が多いとはいえ、完全にロックサウンドに振り切った作品というのは、ありそうでなかったのですよ。

ここ数年、再びヴィジュアル系のイベントにも出演するようになり、サウンド的にもエッジの効いたロックナンバーが増えていたのだが、いよいよ、ロックモード全開の作品が出来上がった。
もちろん、彼ららしいポジティブさ、ポップさは含みつつ。
もちろん、暑苦しいぐらいのメッセージ性を持たせつつ。
これまでの足跡を否定して路線変更するのではなく、それらをすべて受け入れて、現在のDear Lovingとして昇華させた内容になったな、と感じます。

例えば、「CHANGE!!」のようなファンキーな楽曲や、「SOS」のようなデジタル要素を強めたダンスチューンは、初期の彼らに選択肢としてあった曲調ではなかったはず。
アルバムとしてのバランスを整える意味で、これらはアクセントとして重要な役割を担っているのですが、回り道をした分、そこで切るべきカードを適切に選んでいますよね。

歌モノとして挿入される「Door」にしても、「手の甲にキス」にしても、衝動性だけで突っ走るわけではなく、積み重ねてきたものがあるからこそ活きるナンバー。
本編最後に収録された「愛してるを叫ぼう」はポップすぎるぐらいですが、彼らの音楽性として既に受け入れられているスタイルですし、あくまでこれは、23年の歴史があるからこそ完成されたロック名盤なのでしょう。

メンバーに宛てた歌詞が印象的な「for dear」や、バンドに対する正直な気持ちを綴った「Fighting Road ~1mmにも満たない、それでいて大きな一歩~」など、耳に残る楽曲は多いのだけれど、個人的に推していきたいのは「Dreamer」と「運命のコンシェルジュ」。
トップバッターと折り返しのタイミングで、正統派の疾走ロックを持ってくることで、本作における勢いを表現。
ソフト・ヴィジュアル系の王道と言えるハードなサウンドと切ないメロディは、言葉にできないほどたまりません。

常に過去最高を、という信念のとおり、とてもインパクトのある作品が送り込まれました。
素朴でギャグタッチな楽曲がないのは寂しい気持ちもあるけれど、本作の流れを汲めば、ボーナストラックを「Door」のアンプラグドバージョンにした理由も理解できる。
懐かしさもあり、新鮮さもあり。
しばらく彼らの音楽から離れていたリスナーにも是非聴いてもらいたい1枚です。

<過去のDear lovingに関するレビュー>
Positive Toy Box
その手に未来を
イマココニアイ
恋は二人で~Boys to~
Loose Vision
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