イマココニアイ / Dear Loving | 安眠妨害水族館

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イマココニアイ 【B-TYPE】/Dear Loving
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1.イマココニアイ

2.幸せのカタチ

3.SMILE

4.出会えて良かった

5.初恋

6.Checker flag

7.コンビニ店員の恋物語

8.青春18自転車

9.NI!TE!RU!

10.好きなのに… 好きだから…

11.君という名の花

12. アール


ポップでロックでポジティブなバンド、「ポジポック」を自称するディアラビの、メジャー2ndアルバム。

ラブソングアルバムと銘打たれただけあって、恋愛に限らず、様々な愛を歌ったナンバーが収録されています。

B-TYPEは、ボーナストラックである「アール」を含めた12曲。


関西ソフビ界の生き残りとして知られる、バンド結成から15年の苦労人。

MASCHERAのフォロワーとしてシーンに登場し、一気に人気を獲得しましたが、ポジティブさやコミカルさを前に押し出すスタイルに転身してからは、細く長く、地味なポジションで活動していたといった印象で、「いつの間に、メジャーデビューしていたの?」と驚いた人も少なくないのではないでしょうか。


そういう僕も、ポジポックがコンセプトになってからは、決して熱心に聴いていたわけではないのですが、このアルバムは、久しぶりに個人的クリーンヒットとなった作品。

本作のテーマがテーマだけに、コミカルな軽いノリの曲は控えめになっており、メロディアスな歌モノが中心に構成されているのですが・・・

そうだ、ディアラビに求めていたのは、この切なさだったんだ。


全体的に、ミディアムテンポの楽曲なので、激しい曲、アッパーな曲が好きな人には物足りないのかもしれませんが、しっとり大人っぽく、だけど、青春の甘酸っぱさが感じられる、この淡い雰囲気がたまらない。

例えるならば、wyseのTAKUMAさんの作る、優しく切ないナンバーと通じるものがあるかな。

しっかりと芯のある歌声で歌い上げる曲ばかりでなく、「コンビニ店員の恋物語」のような、ラフで落ち着いた歌い方や、初っ端から意表を突いた「イマココニアイ」のデジタルボイスまで、MASAさんの艶っぽい声は、案外、様々なスタイルに順応できるものですね。


とにかくハマったのが、「好きなのに… 好きだから…」。

わざとらしいくらいにベタな、別れを歌った切ない恋愛モノなのですが、シンセを入れて、完全に泣かせに入るアレンジが、もうズルい。

それなりのテンポを保ちながら、マイナーコードで淡々と歌い上げる楽曲なのですが、Bメロからサビへ移行する印象的な歌メロが、たまらなくツボ。

馴染みやすいメロディに、早口で畳み掛けるフレーズを重ねるあたりは、想い出のフラッシュバックを音楽で表現しているようで、これで胸を締め付けられない人はいないだろうとさえ思えるほど。


楽しくワイワイ的なパーティーチューンは、「NI!TE!RU!」くらいですかね。

これはこれで、言葉遊びが面白く、彼らのお笑い要素も堪能できる。

ネタ曲が入っても、このくらいのバランスであれば、アクセントとしての効果もあって、アルバム全体の雰囲気を損なってはいません。


ピークを終えたと思っていたバンドから、こんな名作が届くと、とても嬉しい気持ちになります。

復活ブームの世の中ではありますけれど、長く活動しているバンドが、地道に頑張っているところにも、日が当たればいいなぁ。

メジャー感があると言えば、そのとおりなのですが、もともとマニアックさを武器にしているバンドではありませんし、むしろ、そのポップセンスが磨かれてきたといったところ。

昔好きだったけど離れてしまっていた人、wyseをはじめとした全盛期のソフビサウンドが好きな人、切ない音楽が好物な人には、ゆっくりと浸りながら聴いてもらいたい一枚。


<過去のDear lovingに関するレビュー>

Loose Vision