memento / 天野攸紀 | 安眠妨害水族館

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memento/天野攸紀


1. memento

HOLLOWGRAM、DIMMDIVISION.、StrangerSaid.等の活動も並行して行っている天野攸紀。
本作は、ソロとしての2ndシングルとなる作品です。

2014年3月にライブ会場限定で販売され、その後、通販での取扱も開始。
ソロとしての活動は、アコースティックな弾き語り形式を原則としており、この「memento」についても、それに倣っていますね。

作詞、作曲、ボーカル、ギター…
更にはアートワークに至るまで、楽曲に関わるすべてを一人でこなしてしまう天野さん。
バンドを組んでも、そのカリスマが消されることはないほどの個性派プレイヤーではありますが、"彼だけしか存在しない"サウンドというのは、貴重と言える。
暗い部屋で、どっぷりと聴き込みたくなる楽曲に仕上がっているかと。

繊細なフレーズを紡ぎ続けるイントロに、囁くような天野さんのボーカルが重なる。
メランコリックな表情と、少しの気怠さを含みつつ、この大人びた歌声は、疲れた体に染み渡るように響いていきます。
サビの直前になって、不意に声を張り上げるところでは、鳥肌が立ちましたよ。

メロディ運びには、初期ラルクっぽさがあるかな。
Bメロの澱みなく流れていく感じや、サビ終わりでのスケールアウトしていく歌い尻など、意識しているところもあるのかもしれません。

一方で、アコースティックで演奏されることを前提にコンポーズされていることもあってか、幻想的なベールに包むのではなく、生身の人間からのメッセージとして描かれているところに、本作の聴きどころがあるのでしょう。
序盤は細やかに演奏されていたギターが、感情のスイッチが入るとともに、熱を込めやすいコード弾きになっていったりと、演出を考えてのアレンジにもなっている。
静から動へ、動から静へと切り替わるギャップも、聴いていて面白いですな。

CD-Rでの制作となっていることからもわかる通り、作りは簡素。
ただし、アートワークにこだわっていないわけでもなく、むしろ、シンプルなデザインの中で格好良いと思わせるセンスは、なかなかのものです。

1曲で1,000円、通販であれば送料もかかるということを勘案すれば、あまり手を出しやすい作品ではないのですが、聴いてしまえば手放せないシングル。
ライブを見て打ち抜かれたリスナーであれば、きっと手にして損はないはず。
今のところは、コアなファンだけ聴いていればいいのかもしれませんが、曲も増えてきたし、そろそろ楽曲をまとめるなどして、アルバムも出してほしいなぁ。
ソロ名義での活動に、そこまで時間と手間を割けるのかは未知数ながら、この内容の楽曲が届けられてしまうと、それも期待してしまいます。

<過去の天野攸紀に関するレビュー>
真昼の月
saw.