光 / Yeti | 安眠妨害水族館

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光/Yeti

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1. xi-sai-
2. uso
3. high light
4. limiter
5. doc
6. tear drop

FILM STARSに所属し、正式に"脱ヴィジュアル系"を宣言したYeti。
本作は、その1発目となるミニアルバムです。

通算では5枚目。
"賞味期限が長い音楽"を提唱し、シングル曲とカップリング曲で扱いが変わってしまうことを嫌い、それぞれの楽曲が同格となるようにミニアルバムでドロップするスタイルは継続されています。
タイトルのつけ方やアートワーク等には変化が見られ、心機一転という意識はあるのだろうが、だからとって別物と捉える必要もないのでしょう。

そういう意味では、音楽性についても特段変貌を遂げているということはなく。
もともと、ヴィジュアル系ど真ん中のサウンドではなく、意図的に邦ロックのスタンダードに寄せていたところはあったので、あるべき姿に落ち着いたと考えても問題はなさそう。
もっとも、ロックバンドにとってギャップは武器でもあるので、その飛び道具的な武器がなくなり、正々堂々と音楽のみで勝負することになるわけですが、その自信がついたからこその決断だろうし、気にしても仕方ないですね。

アルバムタイトルを象徴する、彼らの描く"光"のイメージを集約した「xi-sai-」で、鮮やかにスタート。
軽快なリズムで進行しながら、サビでは一気に広がりを見せてインパクトを残します。
続いて届けられるのは、疾走感のある「uso」。
キャッチーなメロディで勢いをつけると、水彩画のような浮遊感と、ノリが良いライブ感を同時に兼ね備えた「high light」でリスナーを引き込んでいく。
前半は、改めてこれがYetiのサウンドだ、というものを再確認するようなアプローチですな。
これまでとは異なるリスナー層も増えてくるのだろうし、ストレートな流れは気持ちが良いものである。

さて、ここから変化をつけてくるのが後半戦。
スリリングでダーティーな雰囲気を持った「limiter」で与える重々しさは、涼木さんの中性的なハイトーンボイスを活かした白さがあってこそアクセントとして映えるのだろう。
その印象を十分に強めたところで、こうしたハズしを入れてくるのも上手いなぁ。
一転して、じんわり温かいバラード「doc」も、とにかくズルい。
ギャップに続くギャップで、優しくも切ないストーリーも相まって涙腺が緩むってものですよ。

締めくくりは、アップテンポの歌モノ、「tear drop」。
彼らとしては王道のポップチューンで、たくさんの"白"を集めて、カラフルに仕立てたといった雰囲気。
様々な色の光を集約させれば、白になるのだ。
その点で、実に彼ららしいな、と。

全体的に、アレンジはシンプルになったかな。
同期のサウンドはたくさん散りばめられているのだけれど、使い方が洗練されたと言いますか、ポイントポイントで効果的に取り込んでいるイメージ。
バンドサウンドでしっかり支え、メロディを活かした印象で、ライブ感が増した。
個人の好みとしては前作「本音と建前」のほうがど真ん中なのだけれど、バンドとしてのレベルは上がった気がします。

色々と思うところはあるでしょうが、安定して良質の音楽を届けてくれるのであれば、形にこだわる必要はないはず。
これからも聴いていきたい、と素直に思わせてくれる作品でした。

<過去のYetiに関するレビュー>
本音と建前
砂糖と塩
賛成の反対
家庭の事情