BIRTH / ElDorado | 安眠妨害水族館

安眠妨害水族館

オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

BIRTH/ElDorado

¥2,571
Amazon.co.jp

1. DAYDREAM
2. 天使の落日
3. チェインギャング
4. Round Trip
5. 黙示録

2002年にリリースされた、ElDoradoの2ndミニアルバム。
限定10,000枚の生産でしたが、プレス数に時代を感じますね。

メンバーチェンジにより、当初のコテコテ路線から、白系のメロディアス路線に方向転換。
これが当たった形で、王道的なダークチューンも、透明感のある歌モノもこなせるバンドとして人気がピークに達していた時期だったかと思います。

トップバッターの「DAYDREAM」から、キラキラした疾走感あるメロディアスチューン。
V系バブル期にメジャーデビューしたソフトヴィジュアル系バンドがやっていてもおかしくないような展開で、Vo.結城さんのハスキーな歌声も、クリアトーンでのギターソロも、しっかり音楽性にハマっていますな。
この辺りは、「AULA」を作った経験が活きたといったところ。
ラストのサビで、銀テープが飛び出しそうな演出があるなど、高揚感も抜群です。

代表曲として語られることは少ないが、実は隠れファンが多いと思われるのが「天使の落日」。
歪んだギターによるギラついたフレーズと、キラキラしたシンセが対照的な色彩を描き、タイトなバンドサウンドでシリアスに迫るサビへと進行していきます。
ミディアムテンポで、6分半。
決して短い楽曲ではないのですが、間奏の中だけで、ダークで重々しい心理状況から、光が見える心境へとフェーズが変わったのだな、と理解できるドラマ性により、飽きずに最後まで聴くことができるのである。
シングルにはならなくても、こういう楽曲が彼らの人気を下支えしていましたよね。

「Round Trip」は、本作中、唯一Gt.憂さんが作曲を担当。
白系の要素を更に強めて、透明感、浮遊感の中に翳りを持たせる、雰囲気モノに仕上がりました。
メインコンポーザーであるBa.瞬介さんには見られないタイプの楽曲で、メロディのインパクトよりも、世界観で勝負するナンバー。
サビで明るくなるので好みは分かれそうですが、初期ラルクが好きであれば、こういうナンバーはたまらないでしょう。

「チェインギャング」と「黙示録」は、1stミニアルバム「EGOISM」からのリテイク。
メンバーが変わったことによるアレンジの違いを楽しむことができるのはもちろん、アルバム全体の中でも機能しており、白系に振れた新曲たちを、ダークなコテコテチューンで黒く塗り潰し、バランスを整える役割を果たしているのかと。
低音の圧力が増していますし、「チェインギャング」は「EGOISM」の初回盤には収録されていなかったこともあり、嬉しい再録となったリスナーもいたのでは。

欲を言えば、ダークに振り切った新曲も聴きたかったかな。
新曲3曲は、どれも完成度が高く、捨て曲ではないのですが、バランサーとなるハードな曲、ダウナーな曲を、既存曲に頼ってしまったところで、作品としての評価が伸びなかった部分もあったのではないだろうか。

もっとも、ある程度フラットに聴けるようになった現在、改めて耳にしてみると、なかなかどうしてまとまりが良く、再評価されるべき作品であると感じましたよ。
ElDorado名義でのアルバム作品は総じて安定感があって、一番を選ぶのが難しいと思われるが、この両極端な「BIRTH」は、新曲が刺さったら「AULA」、再録曲にハマれば「EGOISM」と、次に聴いてみるべき音源を判断する指針になったりしそう。
ある日突然、思い出したように聴きたくなる1枚です。

<過去のElDorado(EllDorado)に関するレビュー>
FLYING DRAGON
AULA
EGOISM
如月