昆虫採集 / S | 安眠妨害水族館

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昆虫採集/S

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1. 蛾
2. 鮮燃蝶
3. 夜光虫
4. xxx.S

Sの初のCD作品となった1stミニアルバム。
1999年にリリースされました。

特攻服の暴れバンド。
当時のシーンを覚えているリスナーにとっては、そういうイメージが強いだろう彼らですが、実はメロディアスな楽曲も多かったりする。
シャウト中心のハードなバンドから、メロディアス性を押し出そうとする意図が強まりだした転換期にあるのが、この頃からだったように思います。

「蛾」、「鮮燃蝶」、「夜光虫」…
初期の彼らには、虫にちなんだタイトルを付けるのがお約束がありまして、それを世間に知らしめたのが、この「昆虫採集」。
まさに、これしかない!というタイトルでしたね。

ダークな楽曲を中心に、メロディアスに展開していく本作。
激しさに特化した楽曲はありません。
デモテープで見せていた方向性や、ド派手な見た目から、激しく攻めるツタツタ発狂系バンドを想像していた人も多かったのですが、その予想を裏切った形。
試聴がなく、雑誌やジャケットで買うCDを吟味していた時代、そのギャップによる"思っていたのと違う"感が、セールスが評価に繋がらなかった要因のひとつとしてあったのかもしれないなぁ。

キメを多く使って、疾走感の中にアクセントを入れる「鮮燃蝶」や、"S"、"M"、"L"と存在する"xxx"シリーズの第一弾、「xxx.S」といった、勢いを持って突っ走るメロディアスチューンは、とても王道的で、聴きやすい。
こちら路線の楽曲が好きな人にすんなりと届いていたら、火が付くのが更に早まっていたことでしょう。

一方で、「蛾」、「夜光虫」といったミディアムテンポの楽曲は、厳しさが目立つのも事実かと。
Vo.DAIさんの鼻にかかった癖のある声と、喉で歌っているような苦しそうな歌唱。
これを受け入れられるかどうかでも、大きく評価は変わってきそう。
構成そのものは、なかなか工夫してあるだけに、加入後初音源という垢抜けない時期だったのが悔やまれます。

4曲入りと、ミニアルバムとしてはボリュームが少なめ。
現代であれば、シングルの通常盤サイズといったところなので、定価は割高感がありますな。
ただし、さすがに16年前のCD。
中古であれば、比較的安価で手に入るはず。
彼らの場合、導入として聴くなら、唯一のフルアルバムであり最高傑作の「四次元図鑑」が鉄板ではありますが、そこに辿り着くまでの試行錯誤のスタートである本作も、余裕があれば押さえておきたいところです。

<過去のSに関するレビュー>
四次元図鑑
遊雪