- 四次元図鑑/S
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1. 殺虫罪
2. ジェット気流
3. 裏ギリス
4. 百足2
5. ×××,L
6. 「ピンポン!」ダッシュ!!
7. 花瓶
8. 1+1=3
9. 鮮燃蝶(Vヴァージョン)
10. 珊瑚礁
Soleilレーベルの2枚看板だったS。
全員が特攻服というインパクト抜群の出で立ちと、勢いのあるライブに定評があったバンドです。
当時、飛ぶ鳥落とす勢いだった彼ら。
本作は、待望のフルアルバムと話題になりましたが、結局、最初で最後のアルバムとなってしまいました。
活動自体は、そこそこ長くやっていた印象ですが、リリースが少なかったのですかね。
初期のSは、「虫」をテーマにした楽曲にこだわっていて、本作では、その名残が見えます。
1曲目に「殺虫罪」というタイトルの曲を持ってくるものだから、てっきり、虫シリーズとは決別するのかな、と思ったのですが、そうでもなかった様子。
もともとは、暴れ曲、飛び曲を中心に、とにかく激しいリズムに、発狂シャウトを重ねるという、当時のコテコテ界隈のフォーマットに乗っかっていた彼ら。
ボーカルがメンバーチェンジしたくらいから、メロディアスな楽曲にも方向性を見出し始め、音楽性の幅が広がり始めた集大成が、この「四次元図鑑」と言えるでしょう。
この転換がハマって、だいぶ聴きやすく、とっつきやすくなりましたね。
LUNA SEAを彷彿とさせるコード弾きと、アルペジオを重ねる手法や、流れるようなメロディセンスなど、王道ながら、陳腐にならない絶妙な路線を突いてくる。
バラードを歌うには、まだまだ歌唱力が足りないとは感じますが、人気先行バンドというレッテルを貼られがちだった時期に、このアルバムをリリースできたのは大きかったと思われます。
鼻声で歌っているような、ハスキーなボーカルは、好き嫌いを分けるでしょうか。
ところどころ、高音が苦しそうな部分が見られ、シャウトで誤魔化しているのは残念。
90年代~00年代前半のインディーズV系シーンにおいては、このくらいのレベルで成り立っていたのも事実ではありますけれど。
王道の疾走系、激しい演奏・・・
こういうベタな楽曲に、おふざけ的な歌詞を乗せた『「ピンポン!」ダッシュ!!』が、彼らにとってのターニングポイントだったのかもしれません。
これが強烈だったのは間違いないのですが、味をしめてしまったのか、迷走してしまった感あり。
たまにある分には面白いのかもしれませんが、"あえて、ダサいことをやってみる俺ら"感が強まると、本作以前のファンが離れてしまうというシビアな結果に。
終盤は、随分と細々とした活動に留まってしまったのだよなぁ。
本作に限って言えば、2000年当時の王道好きにはおススメできる作品かと。
個人的には、名盤のひとつと捉えている一枚。
今思えば、彼らの人気の衰退が、V系シーンにおけるヤンキー文化の終焉だったのかもしれません。