iranaimono e.p. / DISH | 安眠妨害水族館

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オバンギャと初心者に優しいヴィジュアル系雑食レビューブログ

iranaimono e.p./DISH


1. イラナイモノ
2. 35℃

実質的に新体制では初となるDISHのシングル。
シビィさんの弾き語りCDとして発表されていた「35℃」については、待望のオリジナルバージョンでの音源化となります。

正式メンバーはGt&Vo.渋谷ヒロフミさんのみではありますが、サポートメンバーにBa.熊崎照巳さん、Dr.山田マコトさんを迎えて、スリーピースの轟音サウンドは健在。
心なしかベースの主張は弱まった気がしますが、ギターを掻き鳴らして空間を埋め尽くし、叫ぶように感情をぶつけるスタイルは相変わらずで、従来のファンからすれば、ほっとひと安心といったところでしょうか。

「イラナイモノ」は、吐き捨てるように言葉を投げつけるギターロック。
彼らにしては丁寧に演奏されるな、といった印象なのですが、壊すところは壊して、豪快さ、大胆さも残して、らしさを失わない仕上がりになりました。

ベースとドラムは比較的シンプルで、軽快に疾走。
全体的にストレートに進むからこそ、Cメロでのフックで静けさを感じさせることができるのである。
そこでの"ねぇ、おまえ、誰?"という歌詞のインパクトの大きさも手伝って、頭に残ってしまう1曲ですよね。

カップリングの「35℃」は、どろりどろり、静けさの中の不気味さを示す。
歌詞は、表面的には詩的で美しいのであるが、ひとつひとつの言葉選びを見つめなおすと、グロテスクなシーンが浮かび上がってくるというか。
ゆっくり、淡々と進行しているのがかえって、狂気的なイメージをもたらすから面白いものです。
バンドアレンジになって、その辺りの味わいは、一層深みを増したと言えるでしょう。

DISHとしては、少し大人しめなのかな。
声が掠れるくらい高音を張り上げる部分が少なく、場面によっては落ち着きが感じられる。
もっとも、それはデリケートな感情表現を突き詰めるため、メリハリを強調した結果。
映像が浮かび上がる音楽が出来上がったという意味では、次のステップに突入したと捉えてもいいのかもしれません。

バンドを続けるにあたってチャレンジは続けていくのだという変化の部分を見せつつ、メンバーが変わっても軸は変わらないよ、というメッセージも包含した一枚。
販売経路が限定的なのが、もったいない限りです。

<過去のDISHに関するレビュー>
蝶と独白と残黒
curtaincall e.p
春と訣別と咲乱
LIVINGDEAD.e.p.
Melanchoric e.p.
闇と葬列と切り裂雨