-R- / Lastier | 安眠妨害水族館

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-R-/Lastier

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1. prisoner
2. #180screaming
3. the pirits of the age
4. BLOOD
5. Venus
6. an innnocent mind

Break Out出身の新潟バンド、Lastier。
本作は、2000年にリリースされたミニアルバムです。

メジャーを経験した彼らがインディーズに戻って制作に取り組んだのが、この「-R-」。
結果的に、Lastierとしての最後の作品となってしまいました。
プロモーションがあまり行われなかったからか、全盛期の彼らを知っているファンの中でも、知名度はそこまで高くないのですかね。

メジャーの制約がなくなったからか、音楽性の自由度が高まった印象。
正統派のビートロックだけではなく、デジタルサウンドを組み込んだり、ムーディーなシンセを取り入れたり、バリエーションが豊富になりました。
Vo.石山竜市さんの歌い癖に名残があるも、LUNA SEAのフォロワー感は薄れ、オリジナリティが増したと言えるでしょう。

インストである「prisoner」から、「#180screaming」への繋ぎは、デジタル色を強めて。
ザクザクしたギターの音もしっかり主張しているのですが、近未来的なサンプリング音や、エフェクトをかけた竜市さんの歌声により、サイバーな雰囲気が前に出ています。
ソフトヴィジュアル系王道の疾走ナンバーにひとつ癖を加えて、個性的にアレンジしたといったところ。

「the pirits of the age」は、異国情緒が漂うミディアムテンポの楽曲で、ポップでありながら、マニアックな空気感も両立。
La'cryma Christiあたりを彷彿とさせるアプローチですな。
不気味なシンセがダークさを煽る「BLOOD」は、じわりじわりと迫りくるようなスリリングさ。
テンポが速くないからこそ焦らされる、なんともサビが待ち遠しくなる構成である。

キラーチューンは「Venus」。
これが完璧すぎました。
鮮やかなギターフレーズと、リズム体が刻むビートの小気味良さ。
Aメロ、Bメロと、軽快ながらも徐々に盛り上がるように進行し、サビで一気に切なさ炸裂。
シンセストリングスの効果的な挿入も相まって、この1曲のためだけに本作を購入しても後悔しないと思えるほどですよ。
ラストは、大人びた「an innnocent mind」でしっとりクローズ。
ピアノと打ち込み音が印象的に使われていて、従来のLastierでは考えられなかったサウンドメイクなのかと。

ここに来て、いくつか実験を試みた彼ら。
最初に聴いたときは、"これがLastierか?"と抵抗があったのも事実なのですが、先入観なく聴き直してみると、素直に格好良いじゃないですか。
メジャーで得た経験やスキルを、インディーズだからこその自由な発想で表現。
それにより、見違えるように洗練されました。

メジャー終期のシングルがアルバム未収録になってしまったけれど、本作に入れていたら少し浮いてしまっていたかなぁ。
アルバムとしての密度が濃いのは、この6曲に絞ったため。
ピークを終えた時期の作品だからと言って、スルーしているのはもったいない一枚です。

<過去のLastierに関するレビュー>
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